第88話 デレ

魔王様、助けて!

俺は今、かなりのピンチを迎えていた。


目の前には冥王配下の部下達が俺の周りを取り囲み、右腕には冥王本人が抱きついている。


最悪なタイミングで元の身体に戻ってしまい、しかも冥王と俺を結び鎖の色が赤になった事でまさかの婚姻を結んでしまった。


その後は冥王の配下が押し寄せてきたが盟主である冥王がデレてしまった事で俺を排除する訳にはいかず、ただ殺気を込めて睨むことになった。


「あの、そろそろ離してもらえないでしょうか?」


デレデレの冥王に頼んでみる。


「私の事、嫌いになった?」


少し涙目になりながら尋ねてくる。


何この可愛い生物は!

しかも押し付けられている胸が大きくて気持ちが良い!


あっ、配下の殺気が強くなる。


いかんいかん、胸に気を取られてしまった。


「すいません、俺の事を待っている人がいるので元の所に戻してもらえませんか?」


俺の言葉を聞いて冥王の顔から表情が消える。


「待ってる人って?ご両親?兄弟?冒険者仲間?借金取り?」


冥王の追及が怖いが、覚悟を決める。


「お、奥さんです。」


俺が言葉を発すると部屋の中が真っ暗になるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る