皇帝と皇太子

  朝、目覚めると大きなシャンデリアに可愛いメイド。夢では無いようだ。


「おはようございます。お嬢様。昨日はぐっすり眠れましたか?」


この人は私専属のレナ。私よりちょっと年齢が高くてお姉さんがいる感覚だ。ちなみに紅茶を入れてくれた人もレナ。


「おはよう、レナ。レナが淹れてくれた紅茶のおかげでぐっすり眠れたよ!」

そういうとレナは嬉しそうに微笑んでくれた。



  ご飯を食べている時、お父さんが

「今日、皇帝のところに行くぞ。」

「あら、お呼ばれされたのですか?もっと早く言ってくだされば良かったのに。」

「昨日の夜、いきなり伝書鳩が来て、今日来るよう言われたのだ。ハルカ、ハルネも来るようにだそうだ。」



  えっ?いきなり?ハルネもそう思ったのか口をパクパクさせていた。


 ドレスを選び髪をスタイリングした。ちなみに私はマッシュショート。前世ではそうだったからね。ハルネはボブくらいなので華やかなハーフアップにしていた。


「お呼びいただき光栄です。皇帝陛下。」


 お父さんがそう挨拶をする。お母さんが片足を後ろにさげ、ドレスの足を掴んでお辞儀をする。私もハルネもそれに合わせた。



「ここに呼んだ理由だが、近々Odd王国が我々Even王国に戦争を仕掛けてくると聞いた。そこでハルカとハルネを戦争に連れていきたい。」



「我が娘を戦争にですか。それはそれは光栄だ。皇帝陛下のお役に立てるなら是非とも連れていってください。」


 まてまてまて。私たちの意見はなしなの?私たちが死んだら悲しくないの?跡継ぎは兄さんがいるとはいえそれはないでしょ。


 ちらっとハルネを見ると少し曇ったような表情をしていた。


  そりゃそうだよね。戦争に駆り出されるんだもん。


  一人で皇宮を散歩して良い許可が出たので気分転換に廊下を歩く。角を曲がろうとした時に誰かとぶつかった。

「ごめんなさ……」

そういい見上げるとレオがいた。


  前世でレオは出席番号が一緒なことがきっかけで仲良くなった。そして私の好きな人だ。


「レオッ!?どうしてここに?」

「わかんない。1週間くらい前にここにいたんだ。なんか、皇太子とかいう役割についてる。」



  皇太子か。もうこの歳だったら婚約者とかいてもおかしくないのかな。私にも縁談が何件か来てるし。そう思うと少しモヤモヤした。


「レオは婚約者とかいないの?」


いつの間にか口に出てた


「いないよ。そのうち探すらしいけどね」


 少し寂しげな顔だった。どういうことを考えていたのかは、全く読めなかった。



 帰り際、皇帝陛下から髪飾りを貰った。海のように澄んだサファイアにフリルを付けたような髪飾り。


  これは瞬間移動が出来るようになる代物らしい。ただし範囲は限られているが。これは役に立つのか。



  Odd王国が我が国に攻め込んできた。という知らせを聞いた。そのため私たちは公爵家を、後にすることになった。


出る時にお母さんから


「絶対に帰ってくるんだよ。帰ってこなかったら許さないからね」

と泣きながら言われた。


  そして、戦場。私たちは班わけされることになった。私は戦闘班だが、緊急治療班という役割も担うことになった。


戦場にはレオがいた。皇太子ってこの場にいていいものなの?レオが話しかけてきた。


「ハルカじゃん。どうしたの?」

「いや、皇太子がここにいていいのかなーって思って。」

「あぁ、俺第2王子だから。」



  なるほど、私たちと同じように、跡継ぎは心配ないと。



「死なないようにな笑」

「はいはい。あなたもね。」


  そんな会話をしてから数時間後、戦争が始まった。


  私はマナトから習った氷のつぶを銃弾にも勝る速さで敵に撃つ。敵の数人に当たり、悶絶していた。氷属性と雷属性便利だな。


 敵に囲まれたら雷をおとせばいい。ただ、結構体力を消耗するので控えたい。


  基本的には近距離戦だから武術が役に立つ。しかし、剣に雷を纏わせることで斬れば相手を麻痺させることが出来る。なんて便利なんだ。


  そんなことを思いつつ、戦っていたら。一気に囲まれた。体力的にきつい。皇帝陛下から貰った。髪飾りのことを思い出し、拠点に瞬間移動した。



  拠点兵に事情を説明し、もう一度戻った方がいいか聞いた。

「お前、治癒魔法は使えるか?」

「はい、少し。」

「お前、拠点で兵を治療しろ。」


  そう命令が出たので患者のいる小屋に言った。あまりにも酷い有様で吐き気が催した。


  そして、1番見たくないものを見た。レオが怪我をしていたのだ。肩が深く斬られている。包帯が巻いてあるものの、血がドクドクと溢れ出して止まらない。今あるありったけの体力をレオにつぎ込み、傷を塞ごうとした。


  よし、何とかして塞いだ。しかし、血液が不足しており酷い貧血状態だった。輸血できるような器具もない。とりあえず、鉄分とか確保できるもの食べさせるべきかな。そう思い、ホウレンソウなどを使って料理を作った。


  3日後、レオの体調は回復したため、また 地にでた。他の患者もだいぶ良くなったようで、初日ダメダメだった戦況は他の元患者、レオの再参戦により相手国は混乱。


おかげで一ヶ月後に大勝利を収めたのだ。


  そして、帰国後、公爵家に二人で帰ってきた。ハルネは生きていたのだ。


帰ってきた途端、皇帝陛下に呼ばれた。理由はお褒めの言葉をくださると言ってくれたため。そして、この戦争の理由を聞くため。


「ハルネ、ハルカ。よくやった。そしてハルカ。息子や他の患者を助けてくれてありがとう。おぬしが来ていなかったらどうなっていたことか。」


  私は少し照れくさいことを隠しながら言った。


「お褒めいただきありがとうございます。」


「さて、この戦争の理由だが……」

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