第10話 トレドの美しき町並み スペイン トレド

 トレド。この街には驚いた。美しい。歩いていて飽きない。いや、きっと飽きるのだろうが、飽きるまで滞在したかった。

 三方をタホ川に囲まれ、丘の上の美しい町並み。中世のたたずまいを残している街。

 堂々とした、王のようなアルカサル(要塞)。

 気品漂う女王のようなカテドラル(大聖堂)。

 街を囲む何層もある城壁。タホ川にかかる橋と、橋を守る小砦。ほとんど岩が向きだしのタホ川両岸。細い道。階段が多い。犬の糞に注意が必要。エルグレコが後半生を過ごした街。毅然としたビサグラ新門。


 マドリッドから日帰りもできる。バスで1時間。それでも数日は滞在したい街である。私は1日しか居られなかったが。

 夕食時、私は郷土料理が食べられる店を探していた。

 バルかレストランかわからぬ店の前のでメニューがおいてあった。なにげなく見てみる。

 すると店員の女性が話しかけてくる。チャーミングな、金色と亜麻色の中間くらいの髪をしたスペイン人である。

 私が外国人であることは知れている。彼女は英語で話しかけてきた。意味は分からなかったが、私は尋ね返した。

「Do you have any local dishes?」

 彼女は英語が得意ではないらしく、意味が分からなかったらしい。countryとかmealとかdishとか言っていたら通じた。

 彼女が紹介してくれた料理を注文した。鶏肉のトマトソース煮だろうか。なかなか美味だった。

 繁盛している店らしく、周りでは多くの客がいた。老人会だろうか。狭い店なのに、10人ほどでテーブルを囲んでいる人たちもいる。

 私はビールとワインを楽しみつつ、忙しそうに働く英語を話すキュートな店員を、時折眺めながら食事をとった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る