第6話 アルハンブラの思い出 スペイン グラナダ

 『アルハンブラの思い出』をyoutubeなどで聞いてもらいたい。哀愁ただよう繊細な旋律は、アルハンブラ宮殿の幾何学模様の浮き彫りのよう。美しく設計され、美しく建造された水多き宮殿。洗練された細かい装飾は言語で表現することはできない。赤、青、黄で塗装されていたことは、わずかに残っている塗料でわかる。往時を想起する。音をたてるかのような鮮やかな装飾が、回廊の柱と柱の間に描くアーチとともに、池の水面に反転して映る。


 あるいは二姉妹の間を見上げると、圧倒するような色彩の鍾乳石飾りが大きな傘のように見る者を覆い、着色された塗料が肉薄するような壁の装飾とアーチ状の門口。傘にある窓や門口から入る淡い光が二姉妹の間の表情を無限に変える。

 往時を想像するだけで鳥肌が立った。往時を想像しなくてもすばらしいのだ。


 目を転じて門口を見れば、まばゆいばかりの光が入ってくる。まるで光への扉。抜けると光の世界がそこにあるのではないかと錯覚すらする。

 宮殿の南西部・軍事要塞のアルカサバは堅牢にして、難攻。アルハンブラ宮殿自体が岩山の上にあり、その上に防壁が高くそびえ立つ。攻める者の戦意を失わせること必至。

 アルカサバからグラナダの街と、アルバイシンの白い町並みやサクラモンテの丘が見える。これも美しい。

 アルハンブラは外観も美しい。サン・ニコラス展望台から見たアルハンブラ宮殿はときに壮大に、雨天には粛然と、落日時には赤く燃えて、夜のとばりの下ではライトアップされて月のような偉容を示す。森に浮かぶように。遙か後方には雪をかぶった山脈が見える。


 グラナダは居心地の良い街だった。ホテル近くの広場のブースでパンを買い、スーパーでチーズとハムとワインを買う。野菜不足はビタミン剤で補うにしても、朝食はサンドイッチとワイン(コラコラ!)。泥酔するわけではない。寒いので体を温めるためだ(異論は認める)。


 昼は5ユーロで、オーブンで焼いた鳥一羽(幅15センチ弱、高さ10センチ強、前後15センチくらい)とポテトを食す。当然ワイン。


 夜は好きなものをチョイスするセルフサービス式の食堂で、ワインを楽しむ。

 飲んでばかりだ・・・

 ところでスペインは犬の糞がよく落ちている。注意が必要です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る