第4話 地中海のバルコニー スペイン タラゴーナ

 地中海のバルコニーがあるのは、バルセロナからバスで南西に1時間ほど走ったところにあるタラゴーナ。紀元前3世紀、ローマ人によってつくられた町である。かなりの大都市だったようだから、神殿や円形闘技場、劇場、水道橋の他にも、公衆浴場もあったに違いない。

 地中海のバルコニーとはよく言ったものだった。弾ける白い波。力強い太陽が海面で跳ね、はるか水平線からひろがる群青の絨毯に、ダイヤモンドが散りばめられているようだった。

 天気が良かったのが幸いした。この景色だけで充分なのだ。だが、これに円形闘技場がつくのである。海岸沿いに円形闘技場がある。円形闘技場のアーチ状の入り口ごしに白い波が見えるのだ。それほど近い。

 地中海と円形闘技場のその配置は、「これは、すごい」とつぶやくこと必至の光景である。

 タラゴーナにはスペインで2番目の規模の水道橋がある。水道橋――水を運ぶための橋。ローマ人は谷や平地に橋をつくって、水を渡した。タラゴーナの水道橋は高さ26メートル、長さ217メートル。この上を歩ける。水道橋マニアともいえる私は、この水道橋を歩いた。えも言えぬ感動。

「おおー、水道橋の上を歩いているよー」

 横から見た水道橋は、あまり重い物の通過には耐えられないように思われた。私はそれを忘れて、喜んで歩いていた。何も問題なく、大丈夫だった。

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