第3話 我が荷物は荷造上の芸術!

 東南アジアを旅行したとき、私は40リットルに満たないリュック1つで80日間、旅行した。当時から荷物は少ないと、他の旅行者から言われていた。

 ヨーロッパ旅行も似たようなものだった。冬の旅行だったが、荷物は少なくなったほど。コートや裏起毛の服は着るので、リュックに入れるわけではなかった。東南アジアと同じリュックと、町歩きのための小さな鞄を持っていっただけだった。もっとも、この町歩きの鞄は、ガイドブックを持ち歩くためのものだったが、ガイドブックはコートのポケットに収まったので、実際、持ち歩かなかったことも多々あったのだが。


 私の荷物は明らかに小さく、少ない。他の旅行者の何年旅するのかと疑うような荷物と比べて、はるかに小さい。

 セビリアの宿で日本人に会った。バルでビールを飲み、私は持っていたワインを提供して、ささやかな酒盛りをすることになった。

 彼はバルセロナからセビリアへ空路で来ていた男性だった。バレンシア、グラナダ、コルドバなどスペインの観光地は以前の旅行で回っているらしく、セビリアからポルトガルに入り、ポルトガル重視の観光をする、と言っていた。


「荷物、それだけですか?」

 彼は私の荷物を指して、驚いたように言った。

 私はニンマリと笑い、お出かけ用のかばんもあるけどね、と返答。これに対する彼の返答は私を楽しくさせた。


「うわぁ、これはガウディ並のオドロキですよ! 自分は頑張ってひとつの荷物にしたんですが、こんなものじゃないですからね。それでも上出来だと思っていたのに……。これはすごいっすよ」


 ガウディ建築に比された我が荷物。荷物が芸術品だとするなら、私は芸術家である。海外旅行荷造の芸術家がつくる、海外旅行荷造上の芸術!



 しかし、いろんなものを持っている旅行者にあった。西洋人ではラジカセ(むろん、変圧器も)を持っていたし、ワイン(720ml)2本をフランスからミャンマーまで運んでいた夫婦もいたし、日本人ではガイドブックの類を8冊持っている人に会ったし、ガイドブック5冊に『白い巨塔』を5冊くらい持っている人もいた。ドミトリー(大部屋複数人宿泊)用のシーツを持っている人もいた。

 世は広い。これ以上のツワモノがいることは間違いない。こんなの持ってた人いる! というのがあれば教えてもらいたいものだ。

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