第15話-4遅刻常習犯

お前は走った。

俺も走った。お前の後を走った。

電気の点いた窓たちが見えてきた。日の落ちた闇の中でも白く浮かび上がる建物が見えてきた。母さんが落下した、父さんが、父さんの後輩が閉じ込められた場所。命が始まって終わった、「病院」という場所だった。


お前は病院の入り口のドアを通り抜けた。それを追って、扉が閉まりきらないうちに俺も体を滑り込ませた。後ろからガラスにぶつかる音が聞こえた。

真っ暗な外を切り取った窓が横に並ぶ。動かない景色は絵画みたいだ。それも一枚、二枚と流れていった。

蛍光灯の光に浮かび上がる白い廊下を、俺たちはただ走った。

人の声が聞こえた。ぽつりぽつりと雨の滴のように消えていった。


階段を上がった。お前は一段飛ばしで飛び越えていく。俺は一段二段と駆け上がっていく。


後ろからあいつの叫び声がした。聞こえない振りをして前に、上に進み続けた。




知っている道だった。

たった一回だけ通ったことのある屋上への道。

その先に何があるのか俺にはわかった。

俺は走った。




ただただ、間に合って欲しいと思った。今度こそ間に合って欲しいと。

先をいく親友に手が届いて欲しいと思った。

何度も待たせて、何度も遅刻した。だから今度こそはと、強く思った。

いつもお前は俺のことを待っていてくれたから。




お前は夜空に続く扉を開いた。一面の星空は綺麗だったかもしれない。


俺は夜空に続く扉をくぐった。暗い空に溶けてしまいそうなお前の背中を探した。




「×××!!!」


俺はお前の名前を呼んだ。


お前は


振り返らなかった。




フェンスを乗り越えてお前は消えていく。

後ろからあいつの叫び声がする。


俺は




俺は







俺は













走った。

手を伸ばした。

その手は、

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