第15話-1遅刻常習犯

俺は遅刻常習犯。

いつだって遅れる、遅刻野郎。


何度も何度も遅れを取った。気づくのが遅かった。遅くて、遅すぎて、間に合わなかった。

大切な人たちの死に目。もっと早くに辿り着くべきだった事実。知らなきゃいけなかった真実。


痛くて痛くて苦しくて、生きるのを諦めそうになった。殴られた時。蹴られた時。刺された時。怒鳴られた時。暴言を吐かれた時。

でも、その瞬間の痛みはほとんどなかった。

俺の体質が俺を生かした。全部が遅れてやってくる。痛みも遅れてやってくる。独りじゃ耐えられない痛みは、いつも遅れてやってきた。

痛かった。痛くて痛くて終わりが来るのを望んだ。今すぐ終わって欲しいと望んだ。

でも、いつだってその痛みは独りじゃない時にやってきたんだ。助産師さんといる時。先生と話す時。親友と遊ぶ時。友人たちと学校にいる時。

独りじゃ耐えられなかった。でも、その痛みはみんながいたから乗り越えられた。耐えて、生きようと思えた。

みんなが支えてくれた。みんなが理解してくれた。みんなが、俺を、俺と、一緒にいてくれた。

痛みは消えた。痛みは消えるんだ。いつかは、どんな痛みも消えてくれる。消してくれる人たちが、俺の周りにはいた。

守ってくれた存在が、俺にはいた。




そんなことを後から思い出す。




俺は遅刻常習犯。

いつだって遅れる遅刻野郎。

でもさ、そんな遅刻癖も許してしまう人たちが周りにいるもんだから、きっと明日も遅刻する。ダメだな、こりゃ。一生かかっても治んないわ。


でも、どんなに遅れても絶対追い付いてみせるよ。

俺は最後まで諦めない。

最後の最期まで、絶対諦めない。




もうちょっとだけ、待っててくれな。

友人A。

俺の、たった一人の親友。

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