第14話-3手紙

友人A。お前が言ってたみたいに、一年前事故に遭ったんだってな。場所は俺と待ち合わせした場所。

それからのこと、俺は知らない。お前がどこに行ったのか、どうしていたのか。

でもそれはお前の「とっておきの話」で語ってくれたよな。

みんな! ちゃんと聞いてくれてただろ?!

ほらな。俺とお前の話は繋がってるんだよ。




お前はその日、なんでか待ち合わせの場所へ行った。俺は遅刻した。

代わりにそこへ行ったのは、


俺の「父さん」と呼んでいたヤツ。


そいつはきっと、お前の背後に立って笑ったんだろうよ。

それで、車が前を通り過ぎる瞬間


『どんっ』


お前の背中を突き飛ばしたんだ。




見せてみろ、背中。ほらほら。

ほらな。赤黒い手形がついてらぁ。

これが証拠だ。車事故なのにこんなとこ手形なんてつくはずねえだろ。しかも消えない。

これは怪異が関係してましゅねぇ~。


俺の母さんも、父さんも同じ怪異に同じように突き飛ばされた。桜ヶ原で起こっていた、俺の周りの人たちが行方不明になって、ある日急に発見された。その被害者たちもみーんなおんなじだ。

みんなあいつに突き飛ばされて、突き落とされて、いなくなった。背中についた手形の痕。俺の背中にもべたべたついてる、死の手形!


見てみろ、これ! 全部あいつの手形だ。俺のも! こいつのも!!


車に牽かれたか、跳ねられた友人Aのその後の話はもう聞いたよな? みんな。

待ち合わせた日になって俺がそこへ行った時のことも知ってるよな?

残された手紙、というかもはやメモ書きはあいつの手で書かれた物。


「どうせお前は遅刻したんだろ」


そうだよ。お前から逃げるために遅刻した。俺はあいつに会いたくないから時間をずらしたんだ。

俺の待ち人はそこには来ない! あいつが! あいつが奪ったんだ!

自分の両親にさえ連絡できない状態なんじゃ、友人Aは生きてても死んでてもここへは来られない。

俺はそう思ったんだ。


そう思いながら、俺は約束した日にそこへ行ったんだ。

誰もいないはずの待ち合わせ場所。







おい、なんでお前いるんだよ?

なんかさっきもこんなこと言ったな。なんで友人A、お前がそこにいるんだよ。生きてたのは嬉しいけど。約束守ってくれたのも嬉しいけど。







ああ、でも会わずに行っちまったんだよな。







俺は追いかけた。

無事なら無事って言って欲しかった。時間を守った俺を誉めて欲しかった。久しぶりって笑って欲しかった。

俺は、顔も見ないで去っていく親友を追った。


そして、そんな俺たちの後ろから聞こえた足音にも気づいていた。

あいつだった。




最後の鬼ごっこアソビが始まった。

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