第13話-4今話
頭がぼんやりとする。目が霞む。
目の前が霧や霞で遮られている。
たんたんたん。
廊下を走る音がする。
トントントン。
部屋をノックする音がする。
音がする。何処からか音がする。
何処から? 何処から。何処からか。
頭がぼんやりとする。
目は開いていて、閉じている。
まるで夢の中。
起きているのに眠っている。
眠っているのに起きている。
まぁるで夢の中。
起きながら夢を見ている。夢の中で起きている。
夢の中で夢を見ている。覚えているのに思い出せない夢を見続けている。
頭がぼんやりとする。
体は現実の中。心は未だ夢の中。
心は現実の中。体は未だ夢の中。
あいつが俺に見せていた「家」は偽物だったんだ。家の外装も、少ししかなかった家具も、全部幻。
まるで夢が終わるみたいに、それはあっさりと俺の目の前から消えた。きっかけは、多分俺が真実を知ったこと。あいつが俺の父さんじゃないって知ったことだと思う。
なあ、みんな。俺の住んでた家ってどんな風に見えてたんだ?
『きみ、空き地でダンボールの中で暮らしてたんだよ。
誰かがくれたダンボール。その中にタオルを敷いて、くるまって。小さなすてられた猫みたいだった。
雨には濡れなかったけど、あそこには家があったんだね』
なあ、みんな。俺って、あそこにいた時どんな風に見えてたんだ?
『あそこには先生しか入れなかったんだ。ボクたちじゃ入れなかった。
本当は、いつだって君をあそこに帰したくなかった。ガリガリに痩せて、いつだってケガだらけで。
同じ教室にいる友だちなのに、なんでこんなに違っちゃうんだろうって思ってた。なんで何も出来ないんだろうって、いつも悩んでた』
みんなには、あいつのことどう見えてたんだ?
『君の「父さん」はボクらには見えなかったよ。いつもね、君が助産師さんって呼んでた人が遠くから見てたんだ。先に進めなくて苦しい顔してね。
先生があそこには鬼がいるって言ってたよ。本当に住んでたんだね、鬼が』
始めからあの場所には何もなかったんだ。
俺の父さんも。家も。思い出も。
泣きながら立ち尽くす俺の目に、ポストへ突っ込まれた手紙が映った。
「友人Aからの手紙」だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます