再出発
魔術師、エルフの里へ
「無いですね」
「なるほどそれは困ります」
「困りますと言われましても、レイジさん実績がないので依頼条件的に受注可能な依頼がないんですよ」
「実績はあるはずでは?」
「パーティーでの実績と個人での実績は違いますので、パーティー内で何もしてなかったレイジさんの個人実績はほぼない状態といいますか……。その上パーティーでの実績と、ダンジョンに出ていたという記録はあるので初心者用依頼も受けられなくて」
「なるほど困りましたね。じゃあお金を貸してもらえないでしょうか」
叩き出されてしまった。なんてことだ、このままじゃ夕飯がまた食えない。こんな事になるならさっきのせんべいを非常食として残しておくべきだった。
とにかく家に帰るとしよう。あんな風に言ってはいたが実際に弟子が餓死寸前となれば、師匠も何かしらの飯を出してくれるだろう。
とはいえいくらなんでも家を出てから一時間程度で帰ったら何もしてこなかったと勘違いされるだろう。適当にカジノの休憩室でタバコを吸って漫画でも読みながら時間をつぶそう。
――1時間後――
「ただいま」
「依頼は?」
「無理」
「だろうな」
わかってたならあんな無理な条件をつけないでくれたらよかったのに。
「まあそんなことだろうと思ってな。ちょうど私に個人的に頼みごとに来た
「はあ」
そう言えば師匠に用があるとか言ってた子がいたな。あの子だろうか。
「とにかく入れ」
「はいはい」
「初めまして! 私ハーフエルフのミカヅキと言います!」
「それさっき聞いた」
「あ、おせんべいの人!」
やっぱりあの子だった。師匠を訪ねてとか言ってたけど何かしらの頼み事だったのか。まあ、ここに来るのなんか弟子入りか頼みごとの二択だしな。弟子はどうやら一切取ってないみたいだが。
「お前で懲りたんだよ」
「賢明な判断ですね」
「そう思うならもっとまじめに生きろ」
「ところで頼み事っていうのは?」
「師匠の言葉を雑に聞き流すな。まあいい、とにかく知り合いなら話が早い。ミカヅキと言ったな。これが今回君の依頼を受ける私の弟子のレイジだ」
何か勝手に話が決まっているらしい。どうやらこの子の頼み事を師匠の代わりに解決しないといけないらしい。非常にめんどくさい。
「レイジさんというのですね。先ほどはありがとうございました!」
「お気になさらず」
「まあ今回はエルフの里でどうやら問題が起きてるようでな。正体不明の流行病のせいで大半のものがまともに床から動く事も出来ない状態らしい」
「つまりエルフの里に赴いて、それは病ではなく正常であると説いてこいと」
「お前と一緒にするな。文字通り身体が動かないんだ。全身に力が入らないと言う方が正しい。まあ、詳細は向かいながら彼女に聞け」
俺が行くのは確定らしい。俺は別に医者でもなければ治癒魔法が得意な訳でもないのだが。
「よろしくお願いします!」
師匠に頼みに来たのに俺でいいのか。なんで乗り気なんだこの子は。
「まあ、上手くやって帰ってきた時には一週間程度は飯の面倒を見てやる。行ってこい」
「行ってる間の飯が無いんですがそれは」
「エルフの里にいる間の食事や寝場所については私が用意させていただきます!」
なるほど、宿付き飯付きの依頼か。初期の目的はとりあえず達成と思おう。
「じゃあよろしく」
「はい! よろしくお願いします!」
ん? いやそう言えばエルフの里ってここから南西20km程度とか言ってたような。
「ねぇ、ところでそのエルフの里までの移動手段って言うのは?」
「徒歩です!」
「キャンセルさせていただきます」
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