2070年12月12日

「大丈夫?何か悩んでる事とかない?」


 ディスプレイのむこうのノアに語り掛ける。ぼくは次世代シムを立ち上げていた。


「別に」


 ノアはスマホをいじったまま、こちらを見ようともしない。


 沈黙を破ったのはディプレイの向こうでドアが開く音だった。


「よお、ノア!」


「ライト!遅い!」


 ノアはさっとソファーから立ち上がる。


 ライトと呼ばれた男は、一見して軽薄そうだった。まず目に飛び込んでくるのは、エメラルド色に染められた髪。そしてハート型のサングラス、リング状のイアリング、十字付きのネックレスから、「チャラ男」の四文字が受肉したような男だと判断できた。


「ちょっと行ってくるわ」


「ちょ、っちょと」


 しかしぼくが何もできないまま、ノアとチャラ男ライトはドアの向こうに消えた。


 なんとも気分が悪かった。ぼくの娘は、どうやら男をとっかえひっかえしている。しかも、その男たちが、ゲテモノぞろいときた。

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