第6話 第三資料室…と?
組合にある資料室は大まかに分けて5つある。
この都市の周辺情報の基本や文字計算の基本知識は第一資料室。依頼に必要な魔物や薬草の情報、他の都市への道のりなら情報は第二資料室。主に巻物になっており、籠に刺して保管されている。
組合内の
第四と五は冒険者の情報や依頼主の調査内容などの職員用で冒険者は立ち入り禁止。目の前の第三は大きい本や高価な希少本も含まれることから、冒険者は入室に許可が必要だ。
扉も分厚くべっこう色でドアノブは綺麗に磨かれている。飾り彫りがされていてなんとなくお高そうな雰囲気が漂っている。
第三資料室は誰でも入れるようにすると盗難や破損の可能性が高く、理解するのに基礎知識が必要な為、第一と第二の資料を読み解く能力を示し、職員の信頼がなければ入室は許されない。
ずっと気にはなっていたが成人していないと入れないのだと思っていた。もしかしたら、年不相応にしっかりしている印象を職員へ与えられたのかもしれない。
最近になって城門の外での依頼もできるようになったが、受けるたびに酷く心配されるし、
自分程の歳の子どもは訳ありや冒険者の子ども、余所者、孤児でもない限り、多くは親や知り合いの元で小間使いをし15歳の成人を機に就職する。生まれたときに大々的にお披露目し、10歳頃からあちこちでアピールするのだ。
中には物語を信じ、一攫千金を夢見て冒険者になる者もいるが、普通は最後の最後の最終手段。自分みたいなのは大例外で普通は組合も成人してないとほとんど受け入れない。
もちろん自分は訳ありで、冒険者になった奴なわけで…素直に信頼を得られたことが嬉しい。
流石に4歳から組合で仕事をしている人間なんていないだろうからな…。少しは年齢詐称したけど。組合長の足に丸一日へばりついて頼み込んで、6歳だから
まだまだ目標は遠いけど、これはきっと達成の為の一歩だ!
「…!」
唾をゴクリと飲み下し、思わず手をズボンで拭う。よれた服の
なんてことない顔をして伸ばした手を引っ込める。
仕切り直し。利き手をズボンで拭って、べっこう色の扉を開く。
少し開けた戸から顔を出すとそこには巻物じゃない本が沢山詰まった棚が並んでる。
「ほわぁ…すごぉ。」
右を見て、ひだr「ようこs」閉める。
後ずさったのか、気付いたら壁際にいた。
なんかいた
なんか全体的に黒い、ニンゲン
ほわぁっていうの聞かれた
なん、な…なん…なんかいた!!
……
よし、開けるぞ…!
でも…ちょっと怖いから扉少しずつ開けよ。
そっと開けて隙間から覗…い…て。
目と
目が
合う
「っっ?!ほぎゃっ!」
ブハッ
「 ウヒほぎゃ、ほぎゃーって言った。ウヒヒヒ 」
「おやぁ、驚かせてしまい申し訳ありません。ングッ」
「 あー、面白すぎて腹が
「この顔、どうやらチャドによっぽど驚いたのでしょうね。ン゛フ 」
「 ブッ酷ぇ顔して固まってる。ヒヒヒ 」
お ちょ く ら れ た
再び後ずさってしまったのか、少し離れたところにある開けられた扉の前には黒い外套を羽織ってしゃがみ込んでる目の大きなもじゃもじゃ頭の男"チャド"と、茶色いベストを着た丸メガネのふわふわとした頭の男がいる。
片や自分を指差して笑い、片や口に手を当てて耐えようとしているが、耳まで真っ赤にして結局笑っていた。
プニプニプニ
ちょ、
いつの間に目の前に来たんだこの真っ黒!
「 お?正気に戻ったか、坊主。 」
「……
「 ァン?聞こえないなぁ〜。 」
ニヤニヤして頬を突く男が耳を寄せる。
ぬぬぬ、つっつくな、有料なんだってば!
「スゥッ…鉄貨!!!!」
思いっきり大きな声で料金を知らせる。
ムカつくので料金は思いつきででっちあげた奴だけどきっちり請求します。
「ん、ほっぺたツンツン一鉄貨。」
「 金とんのかよガキ。あーまだ耳がキンキンしてるっしょや。 」
「一鉄貨!!ん!」
「 あ゛ー…うるせぇー。 」
「ふふ、一鉄貨くらいいいではないですか、散々笑ったバチが当たったんですよ。」
「 わーったよ、ったく…アド、金。 」
「はいはい。」
儲け!
謎の正体がわかったのでさっさと入ろう。
通り過ぎようとしたら目の前に
元々少ない資料室の滞在時間が減っていく…いい年した大人がニコニコして子どもの勉強を邪魔して楽しいのか。真意を探るためにじっと見つめる。
「チャドがすいませんでした。
僕はアルフレッドでこっちはチャド。僕はこの第三資料室の管理を任されてる司書でチャドも同じです。グレイソンさんから伝達が来てましたよ。案内します。」
「伝達ってここに来るまでに寄り道はしなかったんだけど。随分早いね。」
「ふふ、僕、地獄耳なので静かな資料室の中からなら大抵の会話は聞こえるんです。」
「 アドは資料室の話をしてる奴の会話全部聞いてんの。グレイソンさんは全部聞いてんの知ってっから…まぁ実質の伝達だな。 」
「ちなみに今日ここに来るまでに歌ってた『フフフン、ハハハン、しっりょうしつぅ〜』くらいの鼻歌の大きさくらいなら資料室内で歌って大丈夫ですよ。」
「えっ…」
「 ブハッ、そんなん歌ってたのか!ヒーー! 」
最高だなとゲラゲラ笑いながら頭をポムポム
慌てて手をはたき落として
「さ、この笑い袋は置いといて、資料室の使い方の説明をしましょうね。」
「 ゼ…ハァ…笑い死ぬ…ブフツ 」
「……案内いらない。」
「え、でも…」
「破かない、汚さない、うるさくしない。書き写す時は鉛筆で、インク禁止、
「あ、はい。その通り。」
「じゃ、お二人と違って忙しいので。これで。」
伊達に雑用依頼で出入りしてないのだ、インテリ系なのだよ、ふふん。
ポカンとした
*****
「 機嫌直せよーボウズ〜。 」ツンツン
「申し訳ありませんでした。あまりにも可愛い鼻歌でつい。」ツンツン
本を読んでる子どもの邪魔をする禄でもない大人が二人。横に座っている。
「邪魔、あとほっぺたツンツン鉄貨一枚。」
「 請求はしっかりすんのね…。 」
「むしろ鉄貨一枚払ってまでつつきたいの?」
「 おう、止まらん。 」
「えぇ、止まりません。」
聞かなきゃよかった。
まぁ、儲けたからいいか。
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