西の使い(サンサ視点)
「殿下、西から使いがきました」
「早いな……」
皆が見守る中、使いの男が書状を読み上げた。
「よって、我が国王ミラク殿下はセリ様を妃として、復縁すると仰せです。」
部屋の隅で心配そうにマリがこちらを見ている。私がならばあいつを連れていけと言うのを恐ているのだろう。
「断る」
「……は いや、あの、殿下はあちらに居られるセリ様ではないお方を妃として迎えられました。セリ様は元々西の妃です」
なんだ……この男はあっさりマリはセリではないと分かるのか。
「だが、離縁し追い出した」
「はい。それを復縁すると……ミラク殿下は自らの行いを悔やみ改めると……」
「断る」
「…………」
「我が妃は、セリである。あそこに居るのは妃の姉、我が妃ではない。関係ない」
「あ はあ……しかし」
「どうしてもセリが欲しければ、こちらは剣を抜く」
「…………」
「殿下?サンサ殿下、あ ああ」
皆 言葉を失ったようだ。タイガだけは笑いをこらえてこちらを見ていた。
使いの者が無駄足を運び項垂れ帰ったあと、マリとその父に処分を言い渡す。玉座からタイガを呼ぶ。
「タイガ」
「はっ殿下」
「サンサ殿下は、此度の虚偽の罪について、マリ、その父に国外追放を言い渡したいところだが、妃の父であり、姉である。母についても同じ。マリには城からは出てもらうが、家族で静かに暮らせと言われました。いつか、セリ様に会ってはいかがとも言われました。」
二人は跪き、ただ下を向いている。私には家族が居ない。戦で失った。生きているなら、会えば良い。それだけだ。
マリの義理母はここに現れなかったのは、一番の首謀者であるが故。今回は目を瞑ろう。父とマリは腐っても血を分けた家族だ。
◇
「殿下、本当にあれで良いのですか?」
「ああ」
「殿下は家族に弱いですね。あ、ミラク殿下がセリ様を奪いに来たならば、宣言通り戦を?」
「さあ、そんなに国政が不安定であちらに力が残っておるか?」
「しかし驚きました。殿下の頑なな拒否に、剣を抜く宣言は。セリ様に見せたかったです。カヤも喜んでおりました」
「ああ」
「次は南からお客様が来るでしょう。」
「そうだな。これでは全く国家統一には程遠い」
「全くです。昔は一国であったのに。……殿下のお父上が最後の
かつてこの国は父を王とし、黄の国と呼ばれた。東西南北全てを統治し真ん中に城を置いた。
しかし、内乱が置き、謀反により王家は惨殺され生き残りは私だけであった。子供であった私を蔵へ隠し父は最期を迎えた。
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