濁った神秘の石(サンサ視点)
あれからしばらく、マリを野放しにしてみたがやはり酷い。恐らくマリの仕業でユアは酒を盛られた馬に乗り落ち怪我を負った。
南の王 ヒュウイがこちらへ来るまで後数日。
今から朝の議で、皆にことの真相を明かす事とする。
「では、殿下……初めから名を偽りセリ様の姉君が妃になっていたということですか?」
「そうだ。たまたまカヤが西から本来のセリを連れて来た為に分かった」
「西の追い出された妃がまことに、セリ様だとすれば。殿下は他国の使い古しの妃を受け入れることになります。そんな事があって良いのでしょうか!」
「…………かまわん」
「しかし、当のセリ様は何処へ?」
「サンサ……殿下、私がセリです。偽りも本物も何も初めから私しかおりません。信じてください。」
柄にもなく悲しげに俯き佇むマリを見た皆はこちらに問いかけるように視線を移す。ここまで来てまだ偽るとは、大した度胸だ。
「首飾りを、見せてみろ」
「え?この黒翡翠ですか」
黒翡翠ではない……マリがつければ黒くくすんだだけである。
「タイガ、首飾りの記録を」
「はい殿下。首飾りの長さは一尺八寸、ガラスと金箔、瑠璃で作られた代々伝わる神秘の石。この国を導く者がつければ青く輝き、この国を汚す者の胸では黒く濁る」
「はっ!馬鹿馬鹿しいっ所詮は言い伝えでしょう?」
マリは急に笑いそう言い飛ばした。
首飾りを外し長さを図る。
「長さが足りぬ……。セリから奪った際、結び目を切り結び直したが為、長さが短くなったのだ」
「そ、それは……くくり直しただけです」
そうしているうちに石の色が変わる。
「私の手の中ではこんな色になる。皆も見たな?セリの胸につけた日、この石が輝いたのを」
「はい。殿下、たしかに見ましたが……光の加減では……?」
「ああ 確かに光ってはおりましたが な?」
はあ。結局皆は神託も、神秘の石も信じぬのか……罰当たりな。
「マリ、セリは何処にいる?あの木箱でどこへ贈ったかお前の口から言え。答えぬなら、タオとカヤに証言してもらおう。」
タオとカヤが王の間へと入る。マリは怒りすべてをタオに向けたような眼差しを送る。そんな中大声を放つのはカヤだ。
「殿下ー!!もーっ待っていられやしましぇんわーっ私、カヤ、今すぐ南
「落ち着いて……カヤ」
「数日で朱の国王 ヒュウイがこちらへ来る」
「は?へ?へウイ?」
「セリを同行して来るかは分からぬが交渉の機会はある」
「で、殿下!交渉だなんてそんな呑気に……」
「ならば、今から戦を仕掛けるのか?」
「いえ……そ そんな大それた話ではございませんが」
そこへ文官のトンガが血相を変えてやって来た。
「失礼致しますっ皆様、皆様!」
「なんだ?」
「はあ、はあ……に 西からミラク殿下がセリ様を呼び戻すと我が国に使いを送ったようです」
「何故急に……追い出したくせになにゆえだ?我が国に居ると知っていたのか」
状況が掴めずに皆各々話を巡らせざわつく。
「セリ様が、神託の真の妃だと名指しされたセリ様であり、神秘の石を輝かしたと噂が伝わり。西はセリ様が去った後疫病が流行り、絹の値が下がり、民から暴動が起き。全ては守護神のセリ様を追い出したからだと、ミラク殿下を責める声が後を立たず、新たに妃となった者は塞ぎ込んでしまったそうです」
この国から情報をまわしている者がおるのか、人の口は軽い。ましてや東西南北はさほど離れてはおらん。
「はあ、なんだそれは……。己の懐しか考えぬ王だな。」
「殿下!西にはなんと返事いたしますか?」
「ん まずはセリを取り戻し、話はその後だ。」
「しかし、民の賛同を得るため強行手段に出るやも知れませんぞ」
「いざという時はマリ、西の妃になれば良い」
「まっ!サンサ!」
「嫌か?お前となら気の合う王かと思うが……。虚偽の罪に対して手心を加えるならば丁度よい罰だ」
「そんなあ……」
マリはその場に力なく座り込む。
「タイガ、皆にセリとマリの生い立ちを説明せよ。直に二人の父が参るであろう。使いを出した。」
「はっ殿下 承知いたしました」
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