本物の妃?・・・『さようなら』
議会では疑う
余命はどうなったかしら。今夜また知らぬと言われようとも聞いてみよう。
「うん 聞こう。サンサ様はまだ大丈夫ですよね?うーん……何がだと言われそう。では……余命はいかが?いや、そんなに私の死を望むかと言われそう……」
「独り言が大きいこと」
誰かが背後からそう呟いた。
私に似た顔の……まるで遊郭にいそうな華やかな姿……大きく開いた胸元は妖艶で体つきは私の板のような物とはまるで違う。
まさか……。
彼女は私の部屋に銭をばら撒いた。
「これでいいかしら?私の代わりを務めたお駄賃よ」
「あ、あなたは……」
「あら、もっと必要?」
「あなたの名は……マリですか?」
彼女は目を見開いて驚きに怒りを込めたように床に散りばめた銭を踏みつけ私に詰め寄る。ふわっと独特で甘ったるくきつい香の匂いがする。
「その名……なぜ知っている?次に口にすれば命はないと思いなさい 拾いな!金がいるんでしょっ」
彼女は、私の首飾りにハサミを入れ切り取った。
「あ……」
「タオ!早くしなさい!」
怯えたタオさんが、二人の男と部屋へと入ってくる。大きな木箱が運び込まれた。
「タオさん?な なんですかこれは?!」
「セリ様……お許しください。外へ出れば自由の身です故」
「あの!カヤさんは?せめてカヤさんに……」
箱に半ば強引に入れられる。隙間から辛うじて外が少し見えるものの私は子供の頃から暗闇と密室に弱い。冷や汗がどんどん浮き出て声を発しようにも出なくなる。
あの人は、私の姉、マリだ……。
「早くだして!サンサとタイガが戻るまでに!!」
マリが叫ぶ声がする。私の入った木箱は担がれた。
本物?いえ……セリを名乗るマリが戻ったために私は用無しとなったのだ。
さようなら……サンサ様、ご無事で。
「何だその荷物は?」
サンサ様の声がした……。私はじっと箱の隙間から誰かの衣だけを見る。苦しい……今すぐ蓋に頭突きして飛び出したいくらいだ。
「南の国への贈り物だと、セリ様がタオさんに頼んだのです」
南?!まさかね。ただの言い訳で嘘よね。
「南なら、今度王がこちらを訪れるのに何も急いで贈り物などせんでよい……まあ良いか」
サンサ様はそのまま去る。
と、またサンサ様が戻ってきたようで
「中身はなんだ?」
「え?ああ……キトンやルルランの生地やらです」
「随分重そうだな……」
「あ……いえ 軽いですよ」
大丈夫……外へ出れば出してもらえる。
カヤさんは何処かに待機しているのだろうか。外へ出たらカヤさんを探さなければ。
ああ……気持ち悪い。
ん?ずずずと擦るように次は荷台にでも乗ったのか早い速度で進みだす。
しばらく走ってもなかなか止まらない……私は木箱をドンドンと叩く。誰もいない。蓋を押しても閉められたのか、ものを乗せられたかで微動だにしない。
日が暮れたようで木箱の上から布が被される。ちっとも温かくない……。どうしようこんなに進んだらきっと何処かも分からない。
不安の中気持ち悪さも手伝い知らぬ間に眠りに落ちたのだった。
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