18話 原初の貴族の話
「やぁやぁ校長。 随分と汗をかいているようだが大丈夫? 」
ヴァルナダさんは校長室に漂っていた緊張感などまるで気にも留めておらず、椅子にドサッと座り足を組む。
僕はこんな状況でありながら美人が足を組む姿に少しドキッとしてしまう。
「あなた失礼ですわよ! この私の前でそのような態―」
「あ? たかが1貴族がわえの行動を否定するってのか」
ヴァルナダさんが出す一瞬の殺気でガゼルの母親は口をつぐんでしまう。
「さて、話はだいたいわかっている。 お前達がウチの子に何をしたのかね」
ヴァルナダさんの口調を変えることなく淡々と語るその様子は逆に恐怖を感じさせる。
校長先生はガタガタと震え始め声すら出せていない。
「校長何をしているのです!? Sランクとはいえたかが冒険者です。 貴族の決定に口を出す権利は無いですわ! 」
ガゼルの母親はさっきのヴァルナダさんの殺気を受けてもまだ抵抗している。
「くっハハハハハ!! 」
そんな様子を見てヴァルナダさんは豪快に笑い出す。
「何が、何がおかしいんですの!」
ガゼルの母親は扇子をピシャンと閉じるとその先をヴァルナダさんに向ける。
ヴァルナダさんは笑いすぎて目に浮かんだ涙を指で拭う。
「いやぁ、無知もここまで極まると可哀想を通り越して笑けてくるねぇ」
そう言うとヴァルナダさんは左耳の耳たぶを人差し指と親指で軽つまむ。すると今まで見えなかったイヤリングが姿を現す。
「見えるかい、わえの呪いの証だよ」
それを見た瞬間ガゼルの母親は腰を抜かしたように力なく床に座り込んでしまう。
「母上! どうしたのですか!? 」
ガゼルはすぐに母親の元に駆けつける。
「そ、それは〝原初の貴族〟………? 」
原初の貴族? なんだそれ?
僕はわけも分からずその状況をただ傍観しているだけだった。
「そう、これは魔法というものをこの世に生み出したヤンゴ一族の血を引く証。 お前は身分が上の奴の言うことを下のやつが聞くことは当然って考えなんだろ? じゃあわえの言うことを聞いて貰えるよな? 」
ヴァルナダさんから発せられるその低い声にはどこか悲しみが含まれているように感じた。
話し合いというかこちらからの一方的な要求を聞き入れるという形で、今回の1件は幕を閉じた。
僕の退学はもちろん取り消され、ヴァルナダさんは代わりにガゼルを退学させようとしたが、僕がチャンスをあげて欲しいとお願いし、二度とこんなことはしないこと、ナナリとレイナさんに謝罪するということという2つの約束のもと許すことにした。
校長室をでるとそこにはレイナさんとナナリ、そしてルリルの姿があった。
「その様子だと、無事に戻ってきたみてぇだな! 」
ナナリはニッコリと笑顔を浮かべ、その横にいたレイナさんはホッと胸を撫で下ろしていた。
「アレンさん、お姉様は何か無茶してなかった? 」
ルリルだけは心配そうにそこを尋ねてきた。
「ハハッ、大丈夫だよ。 すごく助けられた」
色んな事実を知ってしまったけど。
「おぉー、アーちゃんはこんな可愛い子たちと学園生活をら送っているのかい? 華やいでるねぇ〜♪ 」
さっきまでの怖さが嘘かのようにヴァルナダさんはニヤニヤと僕に笑いかける。
「アーちゃん…… 」
レイナさんがそう呟き僕はハッとする。
「……プッ」
ナナリは吹き出し笑い出す。
「ちょっとヴァルナダさん! 友達の前でその呼び方はやめてくださいよ! 」
僕は顔の温度が急上昇しているのを感じる。
「なんでー? いいじゃん、最初からアーちゃん♡ って呼んでんだから」
レイナさんすらも堪えきれずに笑いだしてしまった。
「そんなことよりも…… ナナリちゃんとレイナちゃんだっけか? ウチの子と仲良くしてくれてありがとうね 」
ヴァルナダさんは2人の肩を抱き寄せて笑顔でそう語りかけた。
「は、はい、いやこちらこそ」
「あ、あぁ、いやべつに…… 」
2人とも絶世の美人に抱き寄せられて赤面している。
抱き寄せた後ヴァルナダさんは僕に聞こえない声で何かを2人に耳打ちしていた。
それを聞いたレイナさんはさらに赤面し、ナナリはよく分かっていないようだった。
一体何を言われたのだろう。
「さて、じゃあちょっとわえはアーちゃんと話があるから」
そう言うとヴァルナダさんは僕とルリルに後を着いてくるように指示して去って行った。
「あ、じゃあちょっと行ってくるから、また後で! 」
僕はそう言ってナナリとレイナさんと別れた。
パチンッ!
ヴァルナダさんの後を追って校舎裏についた僕に待っていのは、彼女からのビンタだった。
相手の体型や言動を見ただけで能力を見抜く力を持った主人公。ただ魔力0スキル0なのでパーティー追放される。何故かSランク冒険者に拾われたのでそこで頑張る。 プリントを後ろに回して!! @sannnnyyy
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