17話 不当な裁判の話
「アレン君、君を我が校の優秀な生徒に一方的な暴力を振るったとして退学処分とする」
僕は告げられたことへの理解が追いつかなかった。
「た、退学…… いや、でもふっかけてきたのはガゼル君の方で―」
「そんな訳あるはずがありませんわ 」
ガゼルの母親だろう人が僕の発言を食い気味で否定してくる。
「ウチのガゼルは人に暴力を振るうような野蛮な子ではないですわ」
まじかこの人。
僕はガゼルの母親のあまりの盲目さに言葉を失ってしまう。
「いや、ちょっと待ってください! じゃあレイナさんが腕の骨を折ったのはなんだって言うんです!?」
ナナリやレイナさんへの暴力だけは絶対になかったことにさせてたまるか!
しかし僕の発言を受けたガゼルの母親は白々しい態度をとる。
「さぁ、7組の生徒なんでしょう。 なら魔物やなんやに襲われてそうなったに決まってますわ」
は?
なんだこれ、議論にすらならないじゃないか。
ガゼルの正当性を訴える根拠が曖昧すぎる。
なぜこれで僕が退学にならなきゃならないんだ。
「校長先生、これは明らかにおかしいじゃないですか」
僕はそう訴え校長の方に視線を向ける。
だが校長は依然として意見を変えるつもりは無いらしい。
その顔にはどこか恐れを感じているようにも感じた。
「あなたもしかして知らないのかしら? 」
校長に訴えかける僕を見てガゼルの母親はそう問いかけてきた。
「どういうことですか? 」
僕は何を言っているのか分からず問い返す。
するとガゼルの母親は合点がいったようにニヤリと笑う。
「我がアルーイ家はあの4大貴族ジン家の親類にあたる大貴族ですの。あなたみたいなどこの出かもわからない平民の意見が優先される訳がないのですわ! 」
僕を嘲笑するようにそう言うと高そうな扇子を取り出し、ふぅと一息つく。
「さっ、校長先生。 早く退学の手続きを終わらせてくださいませ」
「ちょっと待って下さい! 名家の親類? だからなんだって言うんですか!? それはガゼルがやったこととは関係がありません! 」
僕は堪えきれずいくらか大きな声を出してしまった。
校長室は一瞬シンッと静まり返ったが、ガゼルとガゼルの母親の笑い声によってその空気は引き裂かれる。
「お前、マジでそんなこと言ってんの? 」
ガゼルはそいいながら立ち上がると校長室の扉に手をかける。
「お前、わかってねぇーみてーだから見せてやるよ」
そういうと校長室から出ていってしまった。
―数分後
校長室に戻ってきたガゼルは1人の気弱そうな男子生徒を連れてきた。
「ガゼル君、これはどういうこと? 」
気弱そうな生徒はまるで状況が分かっていないようだった。
ガゼルはそんな彼の話などガン無視で母親に話しかける。
「母様こいつはレンって名前なんですが、この前俺が体調不良で授業を休んでいるのにも関わらず、授業を受けるように強要してきたんです」
それを聞いたレンは驚く。
「え、いやあれはだってガゼル君がずっと演習を休んでしまっているせいで、ガゼル君の班だけ凄く大変そうだったから。それにガゼル君全然体調なんて悪くなさそ――」
ドスッという鈍い音と共にガゼルの拳がレンの腹部にめり込む。
そしてガゼルはもう1発、今度は頬を殴りつけた。
殴られた勢いで机の角に腕をぶつけたレンはその場にうずくまる。
そのレンに馬乗りになり、何度も殴りつける。
「え? なにしてんだよ? 」
あまりの展開に僕は唖然としてしまった。
「校長先生、体調不良にも関わらず授業に出ることを強要された息子は精神的にとても辛い思いをしたと思いますの。 ならこのような行動は仕方がありませんことですわよね? 」
校長は目を伏せ額から汗を垂らしている。
「………… 仕方がないと…… 思います」
なんだよ、これ。
初めから僕の意見なんて聞く気がなかったのだ。
位の低いものが高いものにいいように扱われる。
こんなクソみたいなことをこの学校は許容しているのだ。
なんで、なんでこんなとこで僕は学ばなくてはいけないんだ。
どうせ退学になるならいっそコイツら今ここで―
その時―
バンッと大きな音をたてて校長室の扉が開かれる。
「じゃまするよん♪ 」
そこに立っていたのはヴァルナダさんだった。
「ウチの子は楽しい学校生活をおくれているのか見に来たよん♪ 」
<あとがき>
昨日投稿できてなくて申し訳ないです。
泣いてます。
できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!
水曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)
投稿時間は20時です!
評価やコメントとして頂けたらとっても嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます