第11話 カナ◆クーデター
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【ヤバ美の発狂から何日か経って、気がづけば本番まで後3日にまで迫っていた。】
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放課後、カナと俺の二人はいつも通り図書室にて学園祭準備をサボっている。ホンダは塾があるらしく今日はすぐに帰ってしまった。
オレ「……カナは準備行かないでいいの?」
カナ「え?なんで?……もしかして私邪魔?」
オレ「いや、そうじゃなくて、ヤバ美キレちったじゃん?だから女子は行かないとハブられちゃいそうじゃん」
カナ「なんだそんな事か、大丈夫だよ! セキグチは私の部活は何か覚えてる?」
オレ「えーと確か、テニス部だよね カナはクラスでもテニス部らしい人達と仲良くしてるし」
カナ「そうそう!よく覚えてたね。あとセキグチの言う通り、確かに私は2組の中だったらテニス部グループに所属してるね。」
部活動の関係というのは強力なもので、クラスでも部活単位で人間関係が固まりやすくなる。この部活仲間で固まるという傾向は特に女子の間で強い。
2組も例外ではなく部活勢力が強い、カナはその中のテニス部女子グループに所属しているようだ。
カナ「実はね……ここだけの話、私達テニス部女子はね、ヤバ美達との全面戦争に突入したんだよ」
オレ「……全面戦争……言い方ダサッ!」
カナ「……そんなこといわないでよ……コレ以外適切な例えがなかったんだから」
オレ「ごめんごめんwww 全w面w戦w争とか言うの、説明してもらっていいっすか?」
カナ「笑うな!」
やっぱりさあ、俺は女子の中にも中2病の精神ってあるんじゃないかなぁと思うんだよな……特に女子の『対立』というワードの使用率は異常に高い。 『対立』カッコいいもんねwww
オレ「気を取り直して、説明どうぞ!」
カナは少し不貞腐れていたが、説明をしてくれるみたいだ。
カナ「クラスの女子はヤバ美のワガママに困ってるって前言ったでしょ?」
オレ「うん。」
カナ「だけどさ、ヤバ美はクラスの女王様で、言うことに逆らったらハブにされちゃうんだ、だから今まではみんな言う事聞くしかなかったの。」
カナはさらに続けた。
カナ「今までみんな我慢して来たんだけどね……あのヤバ美ブチギレ事件でついに我慢の限界が来ちゃって……私達テニス部はヤバ美に従わないで、準備に参加しない事にしたの」
オレ「……なるほどね」
カナ「ヤバ美がキレちゃった後、テニス部グループの皆で集まって話したんだけど、その時に色々決めたんだ。まあ私は元からセクグチ達と一緒にサボってたから今まで通りだけど。」
オレ「……大丈夫なの?仲間が何人かはいるって言ったって相手はあのヤバ美だぜ、逆らったりしたらテニス部女子ごとハブられたり嫌がらせされたりするんじゃない?」
そう言った俺にカナは不適な笑みを浮かべる
カナ「大丈夫だよ、テニス部の派閥は2組の女子グループの中じゃヤバ美達の次に強いし。そんな簡単にはやられないよ。」
オレ「そうなんですか……初耳だ……」
女子の内部事情ってたまに聞いてビックリするよね、仲良さそうだなと思ってた人達が実は絶縁していたり、意外な人の評判が低かったりして……
カナ「だから準備に行かなくても大丈夫なんだよ」
つまり、準備に参加しなかった事でヤバ美からの怒りを買っても、カナのバックにはヤバ美達と対立する強力なテニス部勢力がいるから大丈夫だと言う事か。
カナ「あと、実はね、学園祭準備に参加しないっていうのは、ヤバ美への【反乱】の前哨戦みたいなもんなんだよ」
オレ「前哨戦?【反乱】? まさか劇の準備が終わった後もオマエらはヤバ美達に何かするつもりなのか?」
カナ「……いい?ここから言う事はホントに内緒だよ?」
(カナは笑顔。)
カナ「私達、今までヤバ美達からこき使われて来たじゃん?だからヤバ美にこれ以上好き勝手させないためにさ、ヤバ美達をクラスの中心から引き摺り下ろそうとしてるの❤︎」
オレ「」
明らかな悪意が言葉に乗っている。
俺はしばし絶句する。オブラートにつつまれてない悪意は耳に入れるのには少しキツい。
カナ「心配しなくてもいいよみんなに迷惑はかけないから。」
カナはそう言うとコチラに微笑んできた。そんな笑みを浮かべられても……。困惑だ。
引き摺り下ろすとか……ドロドロしてんなぁ……
カナは続ける。
カナ「私はセキグチの事は信頼してるから言うけどね、このヤバ美への反乱は多分成功するよ、吹奏楽部の子達もヤバ美のワガママには嫌気が差しててさ、反乱に参加してくれそうなんだ❤︎」
(カナは笑顔。)
オレ「そ、そうなんだ……」
日常で大して気をつかったりしない男子達にとって、女子の世界は時にディープ過ぎる。
カナの言う【反乱】はヤバ美に対する【クーデター】みたいなもんか……
別にヤバ美にクーデターを仕掛けるのは一向に構わないのだが、すこし気になった事がある。
ヤガミ(ハルカ)はどうなるのだろうか?
確かアイツはヤバ美の側近の一人だった。
あいつも【クーデター】の攻撃対象になるのか?
それがいつあるのか、俺は知らない。
目の前に居るカナが、話を聞いた後だと、少し遠い存在のように感じる。
『その時ヤガミはどうなるのか?』と、残念ながら俺は質問できなかった。
図書室に夕陽が差し込んでいる。
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