第10話 ヤバ美、発狂


……………………………………………………


【夕日が差し込む放課後の図書室に、オレとホンダとカナがいた。】


……………………………………………………





ホンダ「どれだけ俺らに迷惑かけたかわかってんのか?」


オレ「はい……」


ホンダ「口じゃなく態度で示しな!」


(いちごミルク)スッ


ホンダ「おお!これはいちごミルクじゃないか!」


オレ「この度のお礼でございます……どうぞお納めください……」


ホンダ「フフ……お主もわるよのう……ニヤリ」


オレ「いえいえ……フフ」


フフフフフフフフフフフフフフフフ





カナ「……………男子って頭わるっ!」


 カナが引いている。


ホンダ「おいおい、そんな事言うなよ、せっかくノって来たとこだったのに」


カナ「いや……それ面白いの?」


ホンダ「おもしろそうに見える?」


カナ「見えない」


ホンダ「俺も」


カナ「じゃあなんでやってんのよ」


ホンダ「ノリ?」


カナ「キモい」


 カナも辛辣かよ……ソレお父さんとかに言ってないよね?下手したら死んじゃうよ?


「辛辣だな……あ、後セキグチ、いちごミルクありがとな」


「別にいいよ」


 ちなみにいちごミルクは、LINEグループのあの件で色々フォローしてくれたホンダへのお礼。


 (いちごミルクは学生にとっては金と同じようなもので、これを奢れば掃除も代わってもらえるし、好きな子の恋愛事情でもなんでも吐かせる事ができる。人殴ってもいちごミルクあれば大丈夫サ⭐︎)



カナ「けど、セキグチ大変だったねえ……」


オレ「そうみたいだね」


カナ「リアクション薄い!LINEグループ追放されるなんて私にしたら死刑宣告受けたみたいなもんだよ!?」


 あ、やっぱり深刻な事だったんすか


ホンダ「本当よかったなあ、すぐ復帰できて」


オレ「まあね」


カナ「やっぱり反応うすいね!?」


 けど本当にそんなに大変な事だったんなら早めに解決できてよかった。あの夜の後、ホンダのフォローの甲斐もあってか、2日後くらいにはLINEグループに復帰できた。

(ただ2日間はクラスメイトの視線が気になったけど……)


オレ「いやいや。ありがとね2人とも」


ホンダ「気にすんなよ」


ホンダ……いちごミルク飲みながらソレ言うと説得力3割減だぞ……


カナ「まあ次から気をつけなよー」


カナさん……マジですみません。




…………………





オレ「そういえばさ、学園祭準備は進んでるのかな?」


ホンダ「聞いた話だと進行ヤバいらしいぜ、オレらみたいなサボりしてる奴らがいっぱいいるらしい」


カナ「うん……女子でも行ってない人多いみたい。」


オレ「そうなんだねー、間に合うのかな?まあ間に合わなくても全然いいんだけどさー」


カナ「ひどいなぁ、ってサボってる私達が言えた事じゃないか」


 ハハハ、あなた面白いこと言いますね!


夕日はもうかなり沈んできており、図書館の中の色も紫に変わって来た。



「まあ、なるようになるだろ」




…………………………………………………


【俺達は放課後になると準備をサボり図書館に入り浸る。そんな日が何日か続いた。】


…………………………………………………




 学園祭本番まで近づいた、ある日の事。



 教室の掃除を終えた俺はホンダ、カナと合流するため、いつも通り図書室に行こうと荷物をまとめていた。


 2人は掃除当番ではないため早めに図書室に着いている。俺も早く向かわなければいけない。


そんな時である。教室の前の方から大きな音が立つのが聞こえた。


ガシャン!!


「ねえ!?みんなちゃんとやってよ!?」


 ヤバ美が発狂したのである。←ワロタw


 ずっと演技の練習とか言ってクラスの真ん中でスマホを触っていたヤバ美だが、本番まで残す日も僅かになって気がづいたみたいだ【あ、ヤバいこの進行だと本番に間に合わない】と。


 しかもヤバ美は一応、クラスの学園祭準備リーダー、つまり責任者でもあるので劇が失敗したら全ての責任を取らされる事になる。


 それゆえここ数日で焦りと苛立ちが出て来たのだろう。


「みんな、参加してよ!?準備してよ!?」


 なんだよお前が一番やってなかったじゃん。お前ずっとスマホいじってインスタの確認してたんだろが。


「……グスッ」(涙目)


 あ、泣いたwwwwwwwwwwwwww


「泣かないでヤバ美!」


「泣かないで!」


「つらかったね……」


 女子もフォローお疲れ様……こうやってクラスの中心にいる奴が泣いたとき一番可哀想なのはソレ慰める女子だよな……



「うえっ……グスッ……」


 てかまだ泣いてんのかよ……


「泣かないで」ヨシヨシ


「泣かないで」ヨシヨシ


「泣かないで」ヨシヨシ(量産)


 あーあー地獄絵図だ……

 ヤバ美が泣きながら、今まで準備に参加してこなかったであろう男子達を睨みつけている。(もちろんオレ含む)


 ……だから何?泣いて睨んだら参加するとでも?


 ストライキの精神が小2で覚醒した俺は、残念ながら泣かれても睨みつけられても準備に参加する気は起きなかった。


 それくらいこのクラスが嫌いで、クラスのために働きたくない。クラスの不幸は蜜の味がする。(byこの物語の主人公)


 それに対し……


 サトウ、イシカワ、ヤシマ、ヤマザキ、タグチ、ナカジマ……etc.etc……

 今までサボっていたヤツらがすごすごと準備に参加していく。おい!オマエらは泣かれて睨まれたら参加しちゃうのかよ!

 

 俺は教室の扉に向かう。


 流れに反し1人教室を出て行く俺を、ヤバ美が睨みつけている。こっち見んな照れちゃうだろ(〃ω〃)。ヤバ美さん、嫌ってくれて結構です、俺もお前のこと嫌いだから。




 心中では(うおー!ヤバ美が泣いてるよwww。自分勝手すぎw。サル観察してるみたいで面白い❤︎)なのだが、大笑いするわけにもいかない。




 俺は真顔で教室を出た。

 



 コレは……LINEグループ再度追放か?





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