Chapter3 【魔術補足】 コア、収束法

「エレナ、今時間ある?」


「どしたの?」


「魔力の収束に関して補足しておこうと思って」


「あー、うん。

 じゃあお願い」




*****





「魔術を発動する前、魔力は術者の体内に存在する。

 そしてそれは、プレエーテルとなって体外に排出される」


「うん」


「術者は、排出されたプレエーテルを、空間中の1点を中心として集める」

 このとき、魔力が集まる、その中心をコア、もしくは核と呼ぶ」


「コア、ね」


「次に、収束時のスタイル、収束法について。

 エレナの現状の魔力の収束法は『前方しょう収束』。

 前に突き出したてのひらの前にコアを作る」


「旅の途中でノムに教えてもらった収束方法だよね」


「これは最も単純な収束のスタイル。

 これ以外にも様々な収束法が存在する。

 例えば・・・

 掌を寝かせてその上に魔力を乗せるように収束する『上方掌収束』。

 指先に魔力を集める『収束』。

 両手を使う『双掌収束』。

 手を交差させる『交差収束』。

 手を胸の辺りに持ってきて祈るようにする『祈祷きとう収束』。

 などなど、いろいろな収束法がある」


「ノムはどの収束法を使ってるの?」


「いろいろな収束法を使い分けている。

 魔術の種類によって適する収束法があるから。

 ただ、今までの例は武具を用いずに収束する場合の話。

 私は基本的には杖を使って魔術を発動するから。

 杖やその他の武具を使う場合は、収束法が違ってくる」


「武具を使う?」


「現状、エレナは槍を武器として使ってるけど、魔法は武器を持っていない方の手の掌に収束させている。

 一方、私は杖に収束させている」


「杖に収束・・・」


「杖の利点の1つは、コアを作る手助けをしてくれること。

 コアを素早く構築できれば、それは魔術発動スピードが速くなるということ。

 初心者のうちは、このコアの元、種火、シードと呼ばれるけど、これを構築することに苦労する。

 シードさせ構築できれば、そこからの魔力収束は比較的スムーズにいく。

 エレナ。

 私の杖の先には、宝石がついてるよね」


「うんうん」


「杖に付加される、こんなような宝石、鉱石も、同様にコアとか核って呼ぶんだけど。

 この杖のコアの中で魔力のコアを作ることで、より効率的にコアを生成することができるの。

 この杖は特に性能がいいから、杖を使うのと使わないのでは、収束スピード、威力、消費魔力が全然違う」


「でもさー。

 杖のコア部分に、重ねて魔力のコアを作るんだよね?

 ということは、例えば火の玉を作る魔法を使うときは、杖の長さ以上の火の玉を作ると手が燃えちゃうよね」

 

「その考えは誤り。

 魔術発動時に難しいのは、コアの種火を作ること。

 だから、その種火だけ杖の核で作るの。

 その後に、杖のコアか魔法のコアを動かして2つを離した後、魔力のコア、エレナの例でいうと火の玉を大きくしていく」


「うーん、なるほど。

 でも、杖のコアの中で火の玉の火種を作るんだから、その火種で杖が燃えて劣化しちゃうんじゃないのかな」


「杖のコア内部で魔力のコアを生成する段階では、まだ攻撃エネルギーの状態でなく『プレエーテル』の状態なの。

 だから大丈夫」


「そっか。

 コアの段階ではまだプレエーテルだから、まだエネルギーを持たないのか」


「厳密にはちょっとちがう。

 エネルギーは持つの。

 攻撃可能ではないエネルギーを持つ。

 プレエーテルの状態では魔力が希薄だから、という意見もあるけど、

 私の考えでは前者が正しい」


「うーん。

 わかったけど、不思議だ」


「不思議と感じるのは私も同じ」


「なんか、だんだん杖が欲しくなってきました」


「次は杖以外の武具を使う場合の話。

 斧や槍などの武器の場合は、『集める』よりも『流す』というイメージのほうが強い」


「魔力を流す・・・。

 ・・・武器にだよね」


「特に品質の高い武器の場合は、体内から武器伝いに流した魔力が、武器の先端、攻撃部位にまるようにできている。

 ただ残念ながら、今エレナが所持している武器は安価なものだから、自分で制御しないといけない」


「武器に魔力を流したことさえないですが」


「なので斧や槍の場合は『流して集める』が基本。

 あーでも。

 やっぱり今は流したらダメ。

 武器が劣化するから。

 最悪、壊れて使えなくなる」


「どうやったら壊れなくなるの?」


「武器なしでの収束、制御、放出の反復練習を繰り返す」


「おー!

 つまり今やってることなんだね」


「そのとおり。

 話はここまでだから、さっそく闘技場に行って練習してきたら?」


「よっし!

 行ってきます!」






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