第1話

ドン!ドン!

隣の部屋から大きな音が聞こえた。

「ねぇ、萌、やばくない?隣」

お姉ちゃんがそう話した。

「うん」

いつもどおりの感じで返事をする。

「ねぇさ、見に行かない?」

「うん」

そして二人で隣の部屋を見に行くことにした。




ピーンポーン

アパートの廊下にインターホンの音がなった。

「ああ?なんだよ?!」

男の人の声が聞こえた。

「うわ、やばかったかな… ねぇ、萌、かえる?」

私は少しの間黙った。

「いや、いこう 平等って…」

「え?」

「いや、平等とか十人十色とか前学校で習ったから」



「あの!」

私はその人の部屋に入った。

傷がたくさんついた女の人と汗をかいた男の人がいる。

「なにしてたんですか?」

「ああ?、お前は関係ないだろ!」

「いや、なくないです。隣の人なんで」

「お遊びだよ!お、あ、そ、び!」

「そうですか」

するとその時、女の人の口が開いた。

男の人がうるさくて何も聞こえなかった。




私はなぜか昔から口の動きでなんと言っているかわかる。

クラスの中でどれだけ小さな声で話す子の言っていることもわかった。




「やだ… もうやだ…」

女の人はそう言っていた。



「あの、女の人の名前はなんですか?」

角谷愛陽華かどやあやかだ!はやくお前は帰れ!」

「愛陽華さん、二人で遊びませんか?」

「えっ?… ねぇ、お願い、太陽くん。…」

「…じゃあ行ってこいよ!絶対30分以内に帰れ!」

「うん、ありがとう」











「あの、愛陽華さん、」

私は少し離れた公園へいき愛陽華さんと話し始めた。

「は、はい」

「私の名前は赤坂萌です。前までうつ病でした。そこであなたに聞きたいことがあります。あなた、切ってますか?」

私はうつ病のとき、自傷行為をしていた。部屋に響くカッターの音と溢れる血液。それがとても耳に残り、美しかった。そしてなかなかやめられなかった。


「えっ?…」

「この傷、あの方に殴られた傷ですよね」

「はい…」

「この傷は自分で作りましたよね」

「……」

「言わなくていいですけど、相談って大事なんですよ 嘘じゃないですよ 同じ人と話すのって楽ですよ」

私は自傷行為をしていたときにネットの人にたくさん救われた。周りの人なんて世界で見ると少数で同じ意見の人なんて少ない。

左利きだってそうだ。近くにいるのは2,3人ぐらい。でも、世界で見ると7億8750万人もいる。同じ人なんて探せばいくらでもいる。


「……ありがとうございます。」

すると愛陽華さんは数分待ってから話しだした。

「あの人、神田太陽かんだたいようっていうんだけど大学であって、仲良くなって、付き合ったの。そしたら暴力振るわれてさ、私が悪いからって思って、傷の中にあるならバレないかなって思ったんだけどね」

「そうでしたか、大変でしたね。自傷行為をしている人は全員そこに至るまでの辛い辛い、地獄の道があったのでしょうね」

「はい。私もそう思います。ありがとうございます。私、帰らないと太陽くんに怒られちゃうんで」

「そうですか、精神病にかからないようにしてくださいね。なると辛いので」

「ありがとうございます。」

愛陽華さんは微笑みを見せた。







「ないんだろうな、普段は… 微笑むなんて、」

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