第24話:地上戦
双子の剣士がいた広場を抜けてからも襲撃はあったものの、双子以上の強敵はおらず、むしろ寄せ集めのゴロツキ程度しかいなかったことも幸いし、ウィードはようやく出口に到着した。
階段を上がり、あとは天井の蓋を押し開けるだけなのだが、ここで外がおかしなことになっていると気づいた。
「……外でも、戦闘が起こってないか?」
蓋越しにしか聞こえてこないのではっきりとは言えないが、大勢の足音や金属同士がぶつかり合う甲高い音が聞こえてきている。
僅かな思案の後、結局はここを出ていくしか道はないのだと、ウィードは意を決して勢いよく蓋を押し開けた。
最初の男性が口にしていた通り、出口はどこか建物の中に続いていたが、外に出たからこそ今度ははっきりとわかった。
「……もしかして、ここでも戦闘が起きていたから、出口付近の敵が少なくなっていたのか?」
双子の剣士が地下道を守る砦だったとしたならば、もしかするとこちらに主力の大半が注がれている可能性も少なくはないだろう。
慎重な足取りで窓際まで移動して外を覗き見る。
すると、そこではコープスの部下だろう荒くれ者たちと――団服に身を包んだ騎士たちが剣を交えていた。
「まさか、騎士団が一足先に到着していたのか?」
そんなことを考えていると、敵の一人が騎士の一撃によって吹き飛ばされ、廃屋の窓を突き破ってきた。
慌てて身を引いて被害はなかったものの、これで隠れているわけにはいかなくなった。
「乱戦だな、これは」
「――ウィード!」
剣を抜いて騎士たちに加勢しようとしたその時、聞き慣れた声で名前を呼ばれたのでそちらへ振り返る。
「……ロキ? どうしてお前がここにいるんだ?」
「説明はあとだ! 侯爵令嬢が港に連れていかれた! お前は先に追い掛けてくれ!」
「なんだと! そんな、どうして!」
「私たちが到着した時には、すでに連れていかれていたのだ!」
ロキが早口にそう伝えると、続いて別の声が響いてきた。
「あなたは――シン先輩!」
シンはアルカンダ騎士学園を卒業後、騎士団に入団していた。
彼ほどの実力と実績があれば、入団と同時に近衛騎士団に入ることも可能だっただろう。
しかし、シンは自ら配属先を王都警備隊に選んでいた。
「コープスはウィード君たちが追い掛けて来たこと、そして警備隊が動き出したことに気づいたのだろう! だからこそ、部下を足止めに使って自分だけは港へ先に向かったのだ!」
「ここは俺たちが受け持ってやるから、お前はさっさと港へ向かえ!」
「ちょっと待ってくれ! この中ならシン先輩の方が適任でしょう! 俺がここに残ります、だからシン先輩が――」
「私よりもウィード君の方が強い! それが答えだ!」
ウィードの言葉を遮るようにして言い放ったシンは、この場を離れて敵の群れに突っ込んでいった。
「……俺が先輩より強いとか、買いかぶり過ぎだろう」
「そうか? お前は学年対抗戦でシン・オーセンに勝っている。ならば、お前の方が強いのは当然だろう」
残されたウィードはどうするべきか思案したものの、ロキは当然だとはっきり口にした。
「そう単純なことでもないからな?」
「とにかくだ! お前は港へ向かえ! ……それに、侯爵令嬢は、お前のことを待っているんじゃないのか?」
最後のそう言い残すと、ロキもこの場を離れて敵を倒しに向かった。
「……エリーが、俺を待っているか」
ギュッと剣を握りしめたウィードは、顔を上げると港がある方へ視線を向けた。
「……先に行くぞ! 必ず追い掛けてこい!」
「当然だ! 俺たちが負けるはずがないからな!」
「負けるなよ、ウィード君!」
駆け出そうとした俺の行く手を阻もうと、数人の男たち立ち塞がる。
しかし、そこへ疾風の如く駆けつけたロキの双剣が翻り、一瞬にして男たちを血祭りにあげてしまった。
「行け! ウィード!」
「助かる、ロキ!」
港の方へ駆けていくウィードを見送ったロキは、再び双剣を構えて乱戦の中にいる敵を見定めていく。
その隣に並び立ったのは、シンだった。
「……なんの用ですか?」
「ロキ君だったな。どうだ、卒業後は王都警備隊に入らないか?」
「俺は実家の領地で騎士をするつもりなので、お断りさせていただきます」
「そうか、残念だよ。だが、今日の夜はまだまだ長くなりそうだ。もう少し、勧誘させてもらおうかな」
「……迷惑ですから、止めてくださいね!」
そう言い残したロキは、ここでも疾風の如く駆け出して乱戦の中でも敵だけを器用に切り伏せていく。
「本当に、素晴らしい逸材揃いだな」
そして、シンもロキとは逆側へと駆け出して敵を切り捨てていく。
ロキとシン、そして王都警備隊の騎士たちによって、コープスの部下たちは一網打尽にされていくのだった。
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