第23話:双子の襲撃者
ルキオスが後方からの敵を足止めしている間、ウィードたちは全速力で奥の通路を駆け抜けていた。
散発的な戦闘はあったものの、先ほどと比べて敵の数は明らかに少ない。
出口に近づくにつれて数が多くなると思っていた分、ウィードたちは違和感を拭えなかった。
しかし――その理由が唐突に武器を持って襲い掛かってきた。
――ガキンキンッ!
鳴り響く金属音。
先頭のウィードの首を心臓目掛けて同時に剣が突き出されたものの、それをウィードは鋭い太刀筋で弾き返したのだ。
大きく距離を取った二人の男を見たウィードたちは、目を疑った。
何故ならこの二人は――
「ねえねえ、兄さん。こいつらやっぱり、驚いているね」
「そうだな、弟よ。俺たちが瓜二つだから、驚いているみたいだな」
襲い掛かってきた二人の男は、髪型から着ている洋服まで、全く瓜二つな双子の剣士だったのだ。
「おかっぱ糸目剣士がなんの用だ? 邪魔だから通してくれ」
「ねえねえ、兄さん。こいつ、バカなのかな?」
「そうだな、弟よ。こいつはバカでザコだから、さっさと殺してしまおうか」
笑みを崩さずにそう口にした双子の剣士は、姿勢を低くしたまま一直線に突っ込んで来ると、曲刀を鋭く振り抜いた。
「ふんっ!」
「させません!」
ウィードを狙った振り抜かれた曲刀だったが、それをラスタの剣とゲイルの槍が打ち払う。
再び距離を取った双子の剣士は、笑みを崩して真顔となり、コテンと首を左右に倒した。
「……ねえねえ、兄さん。こいつら、邪魔だね?」
「……そうだな、弟よ。まずは邪魔者から殺すとしようか」
「邪魔者はお前たちだろう」
「仕方がありません。ウィード殿、ここは任せて先に進んでください」
ウィードの左右から前に出てきた二人がそう口にすると、双子の剣士はクスクスと笑いだした。
「ねえねえ、兄さん! こいつら、何を言っているのかなぁ?」
「そうだな、弟よ! 俺たちに殺されるというのに、何を言っているんだろうなぁ?」
「……わかった。お前たちなら、こいつらを倒してすぐに追い掛けて来られそうだな」
しかし、ウィードの言葉を聞いた双子の剣士は、表情を真顔に戻して曲刀を構えた。
「ねえねえ、兄さん。やっぱりバカから殺さない?」
「そうだな、弟よ。俺たちをバカにしたバカから殺さないといけないな」
「バカ、バカと、うるさい奴らだな」
「さっさと来なさい。時間が勿体ないですからね」
「「「「……ふっ!」」」」
そして、ラスタとゲイル、双子の剣士が同時に動いた。
ラスタが兄と切り結び、ゲイルが弟を牽制する。
双子の剣士はお互いの動きを熟知しているのだろう、時折場所を入れ替わって二人を惑わそうとしているのだが、ラスタもゲイルも冷静に動きを見極めて対処している。
打ち合い、切り結び、体術をも駆使した攻防の最中、ウィードは僅かな隙をついて奥の通路へと駆け出した。
「行かせないよ、バカ野郎!」
「行かせるかよ、バカ野郎!」
「お前たちは!」
「黙っていなさい!」
背後から曲刀を振り抜こうと駆け出した双子の剣士だったが、そこへ一歩早く踏み込んだラスタとゲイルが割り込み、双子を大きく後退させた。
「……どうしようか、兄さん」
「……仕方がないな、弟よ」
「……そうだね、兄さん」
「……こいつらから殺そうか、弟よ」
表情は変わらず真顔だが、その声音はトーンを一つ落として怒気を含んでいる。
一方でラスタとゲイルは冷静に迎え撃つ構えを見せた。
「僕たちとやり合おうなんて、こいつらもバカだね、兄さん」
「俺たちの連携攻撃ですぐに殺してやろう、弟よ」
双子だからこその阿吽の呼吸を持って、双子の剣士は数多くの実力者を殺してきた。
二人が殺せなかった相手となると、付き従っているコープスに他ならない。
結局のところ、双子の剣士は一人くらい逃がしたとしても問題はないだろうと考えていた。
「連携か。それなら、俺たちも自信があるぞ?」
「ふふ。懐かしいですね、ラスタ」
「双子の僕たちに勝てるとでも思っているのかな、兄さん?」
「もしそうだとしたら、こいつらはさっきの奴よりバカだな、弟よ」
「俺たちがバカかどうか試してみるがいいさ」
「えぇ、その通りです。どちらがバカなのかは、結果が示してくれるでしょう」
幼い頃から共に育ち、鍛錬を繰り返してきたラスタとゲイル。
二人は切磋琢磨しながらもお互いを知り、戦い方を理解して、それぞれがどのように動くのかを視界に捉えずともわかるようになっていた。
それこそ兄弟のように、双子のように、お互いがお互いのことを知り尽くしている。
「「殺してあげるよ!」」
「やれるものなら――」
「――やってみなさい!」
ラスタとゲイル、そして双子の剣士の戦いが始まった。
――その後、ラスタとゲイルは双子の剣士を上回る連携を見せて勝利を収めるも、無傷とはいかずウィードを追い掛けることは叶わなかった。
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