第43話真逆なようで似たもの同士な2人
新章26.真逆なようで似た者同士な2人
真宗がリズの元へと向かい、先ほどまでとは打って変わって静かになった部屋で、クロスとセリカは話していた。
「ところでさ。セリカ。」
「何?」
「
クロスが頬杖をつきながら含みのある言い方で問いかけると、セリカは顎に手を当てて「うーん。」と、大きく首を捻る。
「まだいいかな。いっぱいいっぱいな真宗くんに、これ以上心配かけたくないもん。」
「そうかい。でも、いずれは話さないとでしょ?」
「……そう…だね。」
そう言って窓の外を見るセリカの顔は、どこか寂しげだった。
――――――――――――――――――――
「よお、やっときたのかよ。」
ベッドに横たわって全身に包帯を巻き、叫びすぎたのか枯れきった声でリズが出迎えてくる。
「お前大丈夫か?」
「へっ。そう見えるならマジのマジで病院に行ったほうがいいぜ。」
意外と大丈夫そうじゃねえか。って言いたいけど、100パーキレられるので黙っておく。
「じゃ、さっさと本題に入るか。なんで俺がお前を嫌ってるか…だったよな?」
「だったかな?」
必死だったせいで当時のことをよく思い出せない俺たちは、2人揃って頭を悩ませる。
「まっ、そういうことにしとくか。」
「そうだな。」
どこまでも適当だが、お互い段々とどうでもよくなってきているのだ。だって俺、今じゃこいつのこと嫌いじゃないもん。
リズも多分似たようなもんなんだろうなってのは棘の抜けた喋り方からわかる。
「親父と俺は、西公にあるバレンヌって都市で暮らしてたんだ。一応魔王だった親父が、都市の警備団の団長をやって生計を立ててた。けど、ある日東共へ行って帰ってきた時こう言ったんだ。」
『リズ……すまねぇ。逢魔のやつにやられちまった。俺はもう引退する。……後は頼む。』
ん?
「ってな。鬼丸とは俺も会ったことがあるし、そんな奴には見えなかった。だから、親父が東共に行く直前に代替わりした今代の逢魔……お前を疑ったんだ。」
んん?
「待て待て待て待て!!ぜんっぜん心当たりないんだけど!?俺、先代の爆炎王なんて会ったこともないし!!」
いや、そういえばさっきギルマスから封筒渡されたよな?
あれの差し出し人がじいちゃんだったよな?
「あ?なんだそれ?」
俺がポケットから取り出した封筒を見て、リズが不思議そうに首を傾げる。まあ、今の話の流れでなんで突然封筒出すんだ?って顔してるよな。
「じいちゃん…鬼丸からの手紙だ。この中に話が食い違ってるヒントがあるんじゃないかと思って。」
ただ、一つ気になることがある。それは…
『死ぬほどムカつくだろうけど、くれぐれも手紙破ったりしないよーにね?』
というクロスのセリフだ。
中身見たのかよ。とか、いつじいちゃんから手紙受け取ったんだよ。とか、言いたいことはたくさんあるが、今は置いておこう。
『拝啓、アホ孫…もといアホ真宗。アホは風邪ひかねーらしいから、元気かどうかはきかねーわ。
お前のことだから入隊試験に落ちかけてギルマスに助けられてたり2回くらい死にかけてたりしてな。』
もうこの時点で破り捨てたい……。ってか、なんで図星なんだよ。悲しすぎるだろ俺のここまでの旅路。
『で、本題だが、お前爆炎王の息子と知り合っただろ?恨まれてるかも知れねーから気をつけとけって言うの忘れててな。思い出したんで手紙を書くことにした。めんどくさーけど。
いやよ、この間爆炎王の野郎と賭け麻雀してな。盛り上がってどっちかが破産するまでやった結果、お互い全財産使い果たしてな。俺はお前と雷刃を全力としてギルマスに売ったおかげでなんとかなった。
んで、あいつも同じ方法で切り抜けたらしいが、ギルマスに売り払う言い訳として、俺の名前を使ったらしいから、一応気をつけとけよ。もう遅いかもだけどなw
爽やかなナイスガイじいちゃんより』
色々とやばいカミングアウトもあるし、ツッコミどころしかないが、とにかく今は一言。
「すぅぅぅ。何が外の世界を知って欲しいだ!!!あんの!クソジジイがぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「つまりあれか。俺らは揃いも揃って親の借金のために売り飛ばされたわけか。」
表情の抜け落ちた顔でリズが力無くつぶやく。
「そう……だな。ほんっとにろくでもねえ親たちだよ!!!」
「「ぷっ。あはははははは!!」」
こうなりゃもう笑うしかない。そのまま2人して数分間笑い尽くしたあとで、涙を拭きながら向き直る。
「そういや、名乗ってもなかったな。大和真宗だ。これからは七光り野郎なんて呼ばないでくれよ?」
「ああ、わかったよ。よろしくな………真宗。」
……………………………………………………
To be continued
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