第44話イナの決意



新章27.イナの決意


「……イナ……だいじょうぶ?」


お風呂から上がり髪をとかしていると、ベッドに腰掛け枕を抱いたルナがなんの脈絡もなく、突然聞いてくる。

本当にこの子の行動は読めないわね。


「何がかしら?あたしは別に落ち込んでなんてないわよ?」


「……落ち込んでるんだ……。」


し、しまった!!流石はあたしの妹。なんて高度な誘導なのかしら。やはり天才ね。


「はぁ。ルナに隠し事はできないわね。」


「……やっぱり…シルヴァのこと?」


「あんな別れ方だったもの。流石に凹むわ。結局、任務では何もできなかったもの……。」


「……イナのくせに…生意気。」


なっ!なんてことを言うのかしら!!人が珍しく落ち込んでいるのに!!


「……イナには私がついてる……今は…真宗もいる。……だから、イナ一人で頑張らなくても大丈夫。」


あたしが驚きのあまり絶句していると、ルナがベットから降りてあたしの頭を優しく抱きしめ、撫でてくれる。

でもね?でも……


「ルナ……枕は離してからにしてほしかったわ。」


枕ごと抱きしめられたせいで首がとんでもない角度に曲がってしまったうえに、撫でてるのはあたしの頭じゃなくて枕の方なのよね……。


でも、やっぱりルナには敵わないわ。そんなこと言われたら落ち込んでられないじゃない!!


お察しの通り、イナは単純なのだ。その単純さ故に、この先真宗が苦労することになるのだが、それはまだ先の話……。

――――――――――――――――――――


「さてと、あいつらに会うのも3日振りってとこか。」


その後、リズと少し話をしていたんだが、またしてもクロスから呼び出しがあり、イナルナも呼んでこいと言われたため、病体に鞭打ってイナたちの部屋へと向かっている。


ったく、自分で行けっての。というか、最近廊下を歩いてばっかりな気がする……。


「おっと、またしても通り過ぎるとこだったぜ。」


……何を躊躇ってんだよ!!って前もこんなことあったな!

前は確か、ドアを開けたらイナルナがベットで絡み合ってたんだっけ?


まあ、流石に今回もおんなじようなことにはならないだろ。

ええい!!


「たのもー!!」


あ、ちゃんとノックはしてからっと。


「ちょ、ちょっとルナ!!ダメだってば!!」


「……大丈夫…痛くしないから…。」


あれ?デジャブ?


「あ、ありがとうございましたー。」


「ごめんなさいじゃないの!?」


この間みたいに走って逃げるのは無理なので、そっとドアを閉めようとしたら、イナに怒鳴られた。


「待ちなさいよ!!絶対何か勘違いしてるでしょう!?」


「いや別に?俺は姉妹でそういうのもありだと思うぞ?」


「勘違いしまくりじゃない!!ルナに髪の毛といてもらってただけよ!?けど、あたし髪の毛触られるの苦手だから……。」


優しい笑顔でイナを擁護したが、どうやら違ったらしい。


「はぁぁぁ。で?何の用よ。」


長いため息の後、イナがジト目で聞いてくる。

あれ?俺なんかした?反応が冷たくないですかね?ルナに至ってはこっちを見向きもせず、ベッドの上で枕を上に投げて遊んでるし。


「なんか怒ってる?」


「そりゃ怒るわよ!!3日も眠り続けたかと思ったら突然ふらっと戻ってきてごめんの一言もないし!!」


あっ。そういえば久しぶりも何も言ってないな。なんか、いつもの感じに安心して忘れてたが、会うのも3日振りだったな。


「そう……だな。悪い。心配かけたな。……ただいま。」


「「おかえり!!」」


イナといつのまにか近寄ってきたルナは満面の笑みでそう言って飛びついてきた。


「ぐへぇっ!」


……いや、飛びついてきたルナにイナが巻き込まれただけだな。


「で?なにか用事があったんじゃないの?」


「そうそう。ギルマスが用事があるから来てくれって。」


「また?あたし、あの人苦手なのよね……。」


イナが何やら文句を言っているが、俺に言われてもな。


「ほら、とにかくいくぞ。」


――――――――――――――――――――


「混沌龍の出現に伴う、魔物の活性化対策?」


「うんうん。綺麗なオウム返しをありがとう。」


イナルナを連れ、クロスの執務室に戻ってきた俺の手には、今口に出した内容と同じことが書いてある一枚の紙がある。


「まっ、対策って言っても今後は単独活動を認めないってだけなんだけどね。これからは、勇者が率いる隊に入ってもらうか、5人以上のグループを作ってもらって活動してもらおうと思ってるんだ。……そして!!」


かなり勿体ぶって、クロスは大きく息を吸い、


「今ここにちょうど5人の隊員がいます!!……さぁ。どうする?」


謎のドヤ顔で大きく手を広げながらそう言った。

……………………………………………………

To be continued

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