第35話絶望の龍



新章18.絶望の龍


「っしゃあ!これで…最後!!

んだよ。これで仕舞いかよ。はっ!マジのマジで楽勝すぎんだろ。」


真宗たちが、ルナを追って祠を見つけたと同時刻。シルヴァたちはもう既に任務の目標を達成していた。


「なーんか。順調すぎるな。」


リズが言った通り本当に楽勝すぎる。この任務内容なら、付き添いは真宗のお目付役である自分だけでよかったはずだ。にも関わらず、クロスはセリカまで任務に送り込んだ。


疑う訳ではない。逆に、クロスが自分だけでは実力不足だと判断した何があるはずだ。この依頼は、何かきな臭いとクロスも言っていたが、冗談と流せない程に嫌な予感がする。


おそらくだが、この村に仕掛けがある訳ではない。村人たちもおそらく白だ。そもそも、まだ何も起こっていない。だが、全員の胸に嫌な予感が影を刺していた。それは、ここにはいない真宗たちも同じはずで…


「シルヴァくん。何か考え事?」


「ん?いや、なんでもない。多分気のせいだ。」


「そっ…か。」


今はただ、真宗たちが未だ戻ってきていないのが気がかりだ。


「無事に戻ってきてくれよ……?」


しかしながら、こうしてシルヴァがこぼしたときには既に始まっていたのだ。


長くて短い。……闘いが。


――――――――――――――――――――


飯を探して勝手に森に入って行ってしまったルナを追いかけてきた、俺とイナだったが、ルナが怪しげな祠に入っていくのを見つけ、咄嗟に走り出したのだった。


前半何言ってんだって感じだけど、事実だ。


「ちょ、ちょっと真宗!降ろしなさいよ!!」


ちなみに、走り出したのは俺だけで、既にバテているイナはおんぶだ。そこはお姫様抱っこだろって?

普段ならイナが抱っこされて慌てるのを見て楽しんでもいいんだが、今は一応非常時だ。おんぶして走った方が早い。


「なんだよ。ここ。」


祠のなかは、洞窟のようになっていて、外からは想像できないほど広く、そこかしこにお札のようなものが貼られていた。小さな水溜まりが天井にある結晶の光を反射して、淡く黄色に光っている。


そして1番奥には、半透明の壁のようなものがあり、その奥はぼやけてよく見えない。妨害魔法でもかけてあるのか?

そして、その壁の手前に……


「「ルナ!!」」


ルナが佇んでいた。


「……真宗。イナ。」


声をかけると、ルナは振り返り小さく手を振り出した。なんでこんな呑気なんだ…。

早く降ろせとイナが背中で暴れるので、とりあえず降ろしてからルナの元へ駆け寄る。


「ルナ!どこか怪我してない!?なさ…そうね。よかったわ。

…まったく!勝手にどこかに行ったらダメじゃない!心配したでしょう?」


「……ごめんなさい。……お腹…空いてたから。」


うん。理由になってねえな。いつものことだけど。

そして、ひとしきり言葉をあと2人は抱き合っている。

何にしても、感動の再会ってやつだな。別にそんな長い時間離れてたわけじゃないけど…。


まあ、イナも、突然ルナが居なくなって心配だったんだろう。俺でも心配だったし。

とにかく、ルナが無事でよかった。

けどな?けど…


「イナ。お前それ絶対踏んじゃダメなやつだろ。」


「や、やっぱり?どうしよう真宗。」


イナが、足元にあった赤色のドクロマークがついたいかにもヤバそうなボタンを思いっきり踏んでいた。


「とにかく逃げるぞ!!」


俺は、イナを右の脇、ルナを左の脇に抱えて一目散に走り出した!幸い、2人とも小さいため別段重くもなんともない。

それはいい、でも何で、


「なんでお前らは、そう、いつもいつも問題ばっかり起こすんだよぉぉぉぉぉお!!!」


最初にしてた嫌な予感の正体はこれか!!いま、絶対なんかとんでもないものの封印解き放っただろ!

ええい!泣き言はあとだ!今はとにかくシルヴァたちと合流しないと!


さっきはルナを探しながらきたから時間が掛かったが、一直線に走るなら5分も掛からない。こんだけ時間が経過してるんだ。あのメンツならもう任務が終わっててもおかしくない。


「見えてきた!!」


唐突に視界が晴れ、瞳孔が開きっぱなしだったため目がチカチカするが、今はそんなこと気にしている場合じゃない。

遠くの方にシルヴァたちが見えた。


「はぁ、はぁ。し、シルヴァ!」


「ん?おお!真宗じゃねえか!お前ら無事だったのか!」


シルヴァが無事を喜んでくれているが、それどころじゃない。


「シルヴァ!イナが、なんかやばいヤツの封印を解いちまった!多分今は撒いたと思うけど…とにかく警戒して…」


「待て待て、早口すぎて何を言ってるかわからない。とにかく落ち着け。な?いいから、詳しく説明を……」


シルヴァが途中まで言いかけたところで、言うのをやめたのは、地響きが起こったからだ。そして顕になる。尋常じゃない気配。


これまで、割といろんなヤツの相手をしてきたが、そんなの比じゃない。下手をすれば、ヴェスト以上。つまり古竜と同レベルで強い。


「な、なんだよ。あれ。」


それこそが、混沌龍トヘトヘが再びこの世に解き放たれた瞬間である。


……………………………………………………

To be continued

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