第34話波乱の幕開け

新章17.波乱の幕開け


馬車に揺られ、たどり着いた先はなんの変哲もない平和な村だった。人口は大体60人ほどで、子供の割合がやや多い。村の1番奥には大きな滝があり、滝壺で子供たちがはしゃいでいるのが小さく見える。


なんか、鬼ヶ島を思い出すなぁ。もちろん、鬼ヶ島のがもうちょっと大きいけど、どことなく近しい雰囲気がある。


「とりあえず村長に詳しい話聞きに行くぞ。」


「おい待て、ルナどこ行くんだよ!」


「……お腹…すいた。」


「そっちは森だぞ!?」


こいつ…馬車の中で寝てたから寝ぼけてやがる…。


「ルナ!待ちなさい!」


ふらふらと森の中へ入って行ってしまったルナを追わないわけにもいかず、助けを求めるようにシルヴァの方を見る。


「はぁ。わかった。そっちはお前らに任せる。こっちはこっちで、任務を進めとくから心配すんな。お前らがいてもあんま変わんないだろうしな。」


すると、トラブルが起こるのは想定内だったのか意外にもすんなりと追いかけるのを了承してくれた。最後の一言は余計だけど…。


「悪い、後は任せる!」


幸い、まだ寝ぼけて動きは遅いためそれほど遠くには行ってないだろう。


「イナ、行くぞ!」


「わかったわ!」


そうして、シルヴァたちとは一旦別れ、ルナを追いかけて森の中へと入ることになったのだった。ったく、なんで毎度毎度こう面倒ごとばかり起こすんだよ!!


――――――――――――――――――――


「あいつどこ行った?」


「さ、さあ。本当に見つからないわね。」


ルナを探し始めてはや30分。一体どこまで行ってしまったのか、一向に見つかる気配がない。


「なんかこう、双子パワーみたいなのでパパッと見つかりませんかね。イナさん。」


「無茶言わないで頂戴。そんなものあったら…最初の5分でもう使ってるわよ。」


だよなぁ。んな都合のいいもんないよな。


「けど、このまま闇雲に探してても埒が開かないし…。なんかルナが行きそうなとこ心当たりないか?」


いい加減、この草だらけ、木の根っこだらけの森を歩くのもしんどくなってきた。そもそも、このままじゃ俺たちが迷子になりそうだ。


木が生い茂っているせいで薄暗く、同じ景色が延々と続くため、今どこを歩いているのかもわからない。それに…静かすぎる。生き物の気配がしない。まるで、動物たちが何かを恐れて避けているような感じだ。


「そうね。あの子、朝ごはんを食べていないのよ。起きたのがギリギリ過ぎてね。あたしは早く起きてもう朝食は済ませたんだけど……。」


「けど?」


「あの子の寝顔があまりにも可愛くて…眺めてたら起こすのを忘れていたわ。」


「あほか!!」


イナはへへへとにやけているが、この状況を見るに大戦犯極まりない。こいつ、シスコンまで拗らせてやがったのか。しかも、自分と同じ顔の妹に。


「でも、そうね。あの子のことだから川辺に向かったんじゃないかしら。」


「曖昧だな。けど、今はお前の直感に頼るしかない。しゃーない。ダメ元で行ってみるか。」


結局、こうなるのか。まあ、当てにはしてなかったけど、一応な?


そして、イナの指示通りに川辺。水の気配がする方に向かって歩き始めて、数分経つ。


「おっ!見えてきた!」


「ぜぇ、ぜぇ。ちょ、ちょっと待ちなさいよ…。」


イナが、バテバテになりながらやっとの思いで追いついてくる。


「ん?あっ!!あれルナじゃないか!?」


川の下流の近く。祠のようになっている場所に、イナと思わしき少女がおぼつかない足取りで入っていく。

やばい。やな予感しかしない。そして、このタイプの俺の感は外れたことがない。


「イナ、急いで追いかけるぞ!今なら間に合うかもしれない!」


あんの馬鹿野郎!!


……………………………………………………

To be continued

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る