第23話ギルドマスター

新章6.ギルドマスター


「ようこそ!!」


「は?」


突然そんなこと言われたら間の抜けた声が出ても無理はないと思う。だって、ただの変なやつだと思ってたのにギルドのトップでしたー。とか、誰得だよ。


そもそも、なんで俺の周りはこんなに変な奴しかいない… いや、この話はやめておこう。自分で言ってて虚しくなるし、何より語り始めると長くなる。


まあ、さっき試験官の人が敬語使ってるの見ている限り、嘘を言っている感じじゃない。


「あはは。驚いて固まってるねぇ。」


「そりゃ、突然そんな爆弾発言かまされたら固まるだろ。ほら、イナルナなんて、さっきからピクリとも動かなくなっちまったじゃんか。おーい。せめて瞬きくらいしろよ?目乾くぞー?」


「「はっ。」」


あ、動き出した。


「ま、今はお疲れだろうから後で改めて詳しい話はさせてもらうよ。」


「そうしてもらえるとありがたい。走りまくって疲れたぁ。」


そう言い残して、クロスは笑いながら去っていった。


クロスが去ったことで、試験官は先程までのアナウンスの人に戻ったらしく、今はその人が仕切っている。


「では、合格者の方々は一次試験が始まる前に説明をさせていただいた会場の方へ明日の朝、集合してください。8の刻には、認証式を始められるよう、ご協力お願いいたします。」


その連絡を聞いた俺たちはとりあえず、ギルドの酒場で待っているシルヴァの元へ、合格の報告に行くことにした。


そういえば、いつのまにかリズが居なくなってたな。まあ、あいつおっかないし会わないなら会わないでそれでいいけど。


――――――――――――――――――――


「よぉ。お疲れさん。前々から思ってたけど、お前本当とんでもないな。あんなの普通思いつかねえって。まあ、思いついても実行しようなんて思わないけどな。ははっ。」


ギルドの酒場に着くと、開口1番。シルヴァがまるで見ていたかのようにそう言ってきた。


「なんでお前が知ってんだよ。会場まで見にきてたのか?」


「まさか。俺だってべつに暇じゃない。わざわざあんな遠いとこまで行かねえよ。実際、見てたのだってラスト数分だしな。」


今のところ、暇人のイメージしかないんですけど。と、ツッコミたくなったが、こんなこと言ったら絶対怒られるし、今は喧嘩する元気もないから黙っておこう。


それよりも今気になるのは…


「来てないんだったらどうやって見てたんだ?」


「最近設置されたこのモニターってので現場の様子が見えるんだよ。」


は?そんなわけ…と言おうとした俺の目に映り込んできたのは、さっきまで俺達が激闘を繰り広げていた草原だった。


「魔工学って言う最近できたばっかの技術らしい。うちのギルマスこういうのは好きだからな。本人曰く、最先端のものは自分で直接見てから良し悪しを判断しないと絶対後悔する!だそうだ。」


「クロスそんなこと言うんだ。」


「はぁ?お前ギルマスとどこで知り合ったんだ?!いや、試験終わった直後しかねえよな。あんのバカが!あれほど表に出るなって言っておいたのに…」


何気なくクロスの名前をだすと、シルヴァが険しそうな顔で何やらぶつぶつ言い出した。もしかして俺本当にヤバいやつに目をつけられたんじゃ…?


「はぁ。それはもういい。周りに人がいる時にギルマスのことは呼び捨てにすんな。あれで結構慕われてるからな。事務の奴ら以外には…。とにかく。誰から恨み買うかわかんないから、クロスって名前は出すな。わかったか?」


「わ、わかった。」


若干押され気味に頷くと。シルヴァは満足そうに笑っていた。


「よしっ。もう今日は疲れただろ。イナルナなんて、さっきから一言も喋ってねえ…おい、危ないから立ったまま寝るな!」


「ふぁあ。俺ももう眠い。」


そんなことを思いながら窓の外を見てみると、いつのまにか空は綺麗な朱色に染まっていて、もう夜がすぐそこまできていることを告げている。


どうりで眠いわけだ。朝ご飯食べたっきり何も食べてないけど、今は食欲よりも眠気の方が勝ってるから全然お腹は空いてない。


「じゃ、こいつら部屋まで送ってくか。」


シルヴァがルナを担ぎながらそう言ってくる。なんか昨日も見た光景だな。とか思いながら。イナを部屋まで送り届けた後、俺もベッドに横になった。


「ふぅ、なんとか受かれたな。しっかし、雷刃ももうギルドにいるはずなんだけど、そういや1回も会わなかったな。まあ、そのうち会えるか。」


やばい。本格的に眠い。せめて軽食だけでもとか思ってたんだが、いざこうしてベッドに横になると、もうそんな気力も湧いてこない。


明日は…朝ご飯…は…腹がはち切れるくらい…食ってやる…


そんなこんなで眠りについた俺には、雷刃があんなことになっているなんて、知るよしもなかった。


……………………………………………………

To be continued

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