第22話起死回生の一手
新章5.起死回生の一手
「うわぁぁぁぁ!!無理無理無理無理!!!」
日差しが痛いくらいによく晴れた青空の下、俺はというとドラゴンに追いかけられながら涙目で走り回っていた。あれ?デジャヴ?まあいいや。
本当最近こんなふうに泣き叫んでばっかりな気がする…。
とはいえ今回はなんの策もなく逃げ回っているわけではなく、これも試験合格のための策の一環だ。
イナとルナには合図するまで待機するように伝えてあるんだが…ああ、ゴミを見るような目をしてこっち見てるわ。
「ルナルナ。あの男、俺のターンだ。とかカッコつけておいてあのざまよ。」
「……失望。」
「お前ら言い過ぎだろ!!」
あいつら…。誰のために必死になってると思ってやがる…。
ちゃんと作戦わかってんだろうな?
あと少し、あと少し。もうちょっとイナ達の近くまで…。
ここ!
「イナ!ルナ!今だ!
「どうなっても知らないわ…よっ!」
「……真宗。…任せた。」
任されました!
殺意マシマシでぶっ放されたロケランは、幸か不幸か一直線に俺に向かって飛んでくる。正直、ここまで追い込まれてなきゃこんな作戦思いつかないし、思いついたとしても実行に移そうなんて思わない。
自分で言うのもなんだが、俺は危ないこととかするのはあんまり得意じゃない。というか、危険とかそういうのに人よりも敏感な方だと思う。
けど、ここで仲間を見捨てるのはロケランをモロに喰らってぶっ飛ばされるよりもよっぽど怖いのだ。
楽しかったんだよ。ここまで。ヴェストと別れて、王都であいつらと出会ってから。この時間を失うことの方が、怖い。
だから…
「うぉぉぉぉぉお!くたばれぇぇえ!!」
逢魔流剣操術:流
ここまで幾度となくお世話になってきた。攻撃を受け流すという、単純ながら使い勝手のいい技。
こいつを少し応用して、相手の攻撃の力を利用して任意の方向に攻撃を誘導させる。口で言うと簡単そうに聞こえるが、これが相当難しい。
一瞬でも手元から狂えば吹き飛ぶのは俺だ。なんかイナのロケラン威力はすげえ高いから、食らえば多分骨も残らない。
ロケランの軌道の逆方向からドラゴン達がいる左方向に剣先を向けて流す…
「よし!うまくいった!」
俺の愛刀で受け流されたロケランは、いい感じに向きを変えドラゴン達の方へ一直線に飛んでいった。ドラゴン達の方はと言うと俺を追いかけるのに夢中なのか、ロケランを気にも止めずこちらに向かってくる。
いくらウロコが硬いドラゴンとはいえ、ゴブリンを跡形もなく吹き飛ばしたあのロケランを受けて無事ではいられないだろう。
さて、そろそろ気になっているだろう。一体どうやって3人で合格するのかと。その答えがこれだ。
「とどめを刺したやつに1ポイント。だったよな?なら、3人の連携攻撃で3体倒したら
そう、これが俺の狙いだ。残りが3体しかいないなら3人で3体倒せばいい。あとは、このズルまがいが認められるかどうかだけど…
その時、これまでのアナウンスの人とは違う笑い声が、響き渡った。
「あははっ!面白いねぇあの子。」
「こ、困ります!試験はこちらに任せるとおっしゃっていたじゃないですか!」
アナウンスのお姉さんの声も聞こえてくるが、どうやら揉めているらしい。
「いいじゃんかべつにすこーし介入するくらい。」
「はぁ。わかりました。じゃあもう好きにしてください。ここから先はお任せします。」
「あはは。おつかれ様。」
お姉さんがえらい深刻なため息をついて去っていったけど大丈夫なのか?
「やあ、君が大和真宗くんだね?」
そう声をかけてきたのは、先程までアナウンスの人と揉めていた男だ。背は俺より少し低めで155センチくらい。容姿はかなり整っていて、イケメンというよりも美少年。
といった感じで、少しクセのある銀髪を風になびかせている姿はただ立っているだけでも、絵になるほどだった。
受付の人やらさっきのアナウンスの人やらが着ていた制服っぽいのは着ていないが、さっきのやりとりを見る限りギルドの関係者であることは明らかだろう。
「後ろがイナくんとルナくんだよね?シルヴァくんから話は聞いてるよ。僕はクロス。よろしくね。」
「よ、よろしく。」
「……人。…怖い。」
イナルナは人に慣れてないせいか挙動不審になってるけど、クロスと名乗ったこの男は意外にも常識人らしい。
「その感じだと自己紹介はいらないっぽいな。よろしくクロス。」
そう言って手を差し出すとクロスも握り返してくる。
「で?結局俺らは合格なのか?」
ずっと気になっていたことを聞くとクロスは思い出したように話し出した。
「そうだったそうだった。君らの合皮を伝えるためにわざわざここまで来たんだった。結果はもちろん合格だよ!君らみたいな面白い子は大歓迎さ!」
そう言ってクロスは笑い、最後にこう告げた。
「ようこそ!
……………………………………………………
To be continued
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