第21話俺を信じろ

新章4.俺を信じろ


ドラゴン。それは最強の生物としての呼び声も高い存在。

レッサー(下位)のドラゴンであろうとも例外ではなく、そこらの有象無象とは次元が違う。


そんな存在を舐めてかかっていれば。


「無理無理無理無理!!話が違うだろぉぉぉ!!レッサーだって、レッサーだって言ってたじゃん!!」


こうなるのも当然である。そして、チラッと後ろを振り返ると、


「デカすぎるだろぉぉぉお!!どうやって倒せばいいんだよあんなデカいやつ!!」


別に俺も最初から諦めていたわけではない。ただ、試験が始まり開口一番飛び出して、あの硬いウロコに剣を弾かれて心が折れたのだ。


「ルナ見なさい。あいつになってドラゴンに流されてるわ!」


「……無様。」


「お前ら見てないで助けろよ!」


「「やだ。」」


ちくしょう好き勝手いいやがって。特にイナは後で絶対泣かす。あいつがサイドテールの髪解いてるときにゴム紐を白滝に変えといてやる。


恐る恐る後ろを振り返るとターゲットを変えたのか、ドラゴンたちはいなくなっていた。


「ふぅ、巻いたか…」


「巻いてどうすんのよ。あれを倒さなきゃいけないんでしょう?」


「お前、誰のせいでこんな苦労してるかわかってんのか?」


「自業自得でしょう?」


「お前、いい加減にしないとそろそろ本気でキレるぞ?」


実際、俺1人なら龍嵐刃舞1発でハイ終了なんだが、流石にあの2人を残したままにするのは不安しかない。


俺たちが合格する方法はイナとルナを先に合格させてから俺が最後に、悠然と合格することだけだ。


「現在、8名の方が合格されました!」


その時、唐突にアナウンスが響いた。嘘だろ!?合格者は全員で15人。つまり、合格者は後7人。約半分の枠がもう埋まっちまったってことか!


「2人ともやばいぞ!時間がもうない!」


「そんなことわかってるわよ!でも、どうすれば…。」


「とりあえずドラゴンがいそうなとこ向かうぞ!」


「……了解。」


とはいえ、そう簡単には見つからな…っていた!よしチャンス!あいつ呑気に寝てやがるぞ。


気づかれないように忍足で近づいていた時、上から何かが降ってきた。


「うわぁっ!」


とんでもない速度でドラゴンに直撃したは俺も巻き込んでドラゴンを吹き飛ばした後むくりと立ち上がった。


「よお。誰かと思ったら七光り野郎じゃねえか。また会えて嬉しいぜ?」


聴き覚えのある、できればあまり聴きたくなかった声がまったく嬉しくなさそうに話しかけてくる。


「なんだ、お前かよ。てか、俺の獲物横取りしやがったな!?」


「わりーわりー、後1匹だったもんではしゃいじまってよ。」


そう言ってリズは嘲笑うようにケラケラと笑った。


「たった今、14人目の合格者が出ました!後1人です、頑張ってください!!」


俺がリズと不毛な手柄争いをしている時、最悪のアナウンスが響いた。


……嘘だろ?もう、3人で合格できないのか?


「ま、真宗?」


不安そうにイナが声を掛けてくる。


「いや。まだだ、まだ諦めるには早…」


どうすれば現状打破できるか考える俺に、イナがとんでもないことを言ってきた。


「後1人の枠はあんたに譲るわ。あたしたちは諦めるわよ。もともと、あんたの足を引っ張ってたのは分かってたもの。」


「あ、諦めるって、お前分かってんのか?お前らの歳じゃまともに稼げるとこなんてギルド以外ない。俺1人じゃ、3人分の生活費なんてとてもじゃないが稼げない。だから俺は必死に…。」


「そんなこと分かってるわよ。でもどうしようもないじゃない!あんたが、あたし達のためにどうにかしようとしてくれてたのは分かってるわよ。


けど、後1人しか合格できないのよ。あたしたちは大丈夫。いざとなったら体を売るなりして、なんとかするわ。

ほら、さっさとしないとあんたも合格できなくなっちゃうわよ。」


そう言ってイナは無理矢理に微笑んだ。クソっ!こんなとこで終わりかよ。ここで、試験に落ちれば間違いなく2人は奴隷の道を歩むことになる。


そうじゃなきゃ俺もここまで必死になったりしない。何か、何かないか何か!俺たち3人でこの試験に合格する方法は!


「ある。」


「え?真宗なんていったの?」


「あるぞ!俺たち3人でこの試験に合格する方法!」


「そんなのどうやって…」


俺は嬉々としてたった今思いついた画期的な方法を2人に伝える。


「いいか?ゴニョゴニョゴニョ。」


「はあ?!ば、バカじゃないの!?そんな方法!」


「……危険。…一歩間違えば……。」


俺の作戦に2人が口を揃えて否定してくる。まあ、そうだよな。俺も正直これを実践するのは怖い。


「じゃあ、お前ら他になんか思いつくか?」


「そ、それは…。」


「じゃあやるしかねえよ。ほら、さっさとしないと誰も合格できなくなるだろ?」


まだ不満そうなイナに、さっき言っていたことをそっくりそのまま返してやる。


「大丈夫だ。俺を信じろ。」


そう。ここからは


「こっからは、俺のターンだ!」


……………………………………………………

To be continued

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