第19話入隊試験

新章2.入隊試験


晴れ渡る青空の下、俺は魔王を名乗るこの男。リズ・インスグレイドと睨み合っていた。


「しょ、初対面でずいぶん攻撃的だな。」


「あ?警戒すんのは当たり前の当たり前だろうが。魔王なんて相手してんだからよぉ。まあ、てめえに関してはそれだけが理由じゃあねえが。」


どう言うことだ?俺別にこいつに恨まれる覚えなんてないんだが…


「ちょっとあたし抜きで話進めないでよ!真宗一体あんた何したの?」


「心当たりがあるならもう謝ってるよ。こいつなんかおっかないし。」


「弱気なことね!……おっかないのは認めるけれど。」


やっぱお前もびびってんじゃねえか。と物申したかったがここでイナに大声を出されると、リズを刺激しかねない。


「ああ、すみません。1つ言い忘れていました。」


このタイミングで救いかのように、さっきまで説明してたおっさんが、また話し始めた。


「先程説明させていただいた内容は、二次選考の内容です。二次選考の内容ですから一次選考の内容は含まれないわけなんですね。


つまり一次選考の内容をこれから説明していくわけなんです。そして一次選考は特に難しいこともなく魔力最大値の測定です、規定に満たない方は残念ですがまた来年お越しください。


これで正真正銘説明は終わりです。ただいまから整理券をお配りしますので、紙に書かれている番号の窓口にお越しください。」 


「なあイナ、魔力最大値ってなんだ?」


「あんたが知らないのにあたしが知るわけないでしょう?当然ルナも。」


そういやこいつ記憶喪失だったな。ちなみにルナは何故か説明会場の隅っこの方で体育座りしながらガタガタ震えてる。大丈夫か?あいつ


「てめえら魔力最大値が何かも知らねえのにギルドに入ろうとしてたのかよ。」


「そうだよ!なんか悪いか!」


「開き直ってんじゃねえ。はぁ。いいか?1回しか説明してやらねえから、耳の穴の穴かっぽじってきけよ?」


半ばヤケクソぎみに言ったんだが、わざわざ説明してくれんのか、見かけによらず結構親切だなこいつ。


「別に難しい話じゃねえよ。魔力最大値ってのはその名前のまんま、魔力の最大量のことだ。魔力の量が全てってわけじゃねえが、まあ多いに越したことはない。2000あれば天才って言われるレベルだ。一般人は1000〜1500くらいだな。」


「となると、俺は3000くらいはあるだろうな!」


「はっ!馬鹿じゃねえの。んなわけねえだろ。」


いちいち角立ててくるなぁこいつ。


「あっ、ありがとうございます。」


いや別にリズに礼を言ったわけではなく、整理券が配られてきただけだ。番号は…3番か。


「それじゃあ、俺はここで。ま、またなー。」


そうして逃げるようにルナのところに向かっている途中、背後から舌打ちが聞こえてきたのは多分気のせいだろう…。


「おいイナ。お前途中で逃げやがって…ルナ大丈夫か?」


「……人…多い。……人間怖い。……皆殺し。」


「物騒だなおい!」


何があったらそうなるんだよ…。ルナが、本当に殺しそうな勢いで人混みを睨みつける中。イナが説明してくれた。


「ルナは人混みが苦手なのよ。ついでに他人に話しかけられるのもね。さっき、隣にいた人に話しかけられてたから。多分そのせいで我慢の限界になっちゃったんじゃないかしら。」


こいつらは本当にどんだけ手間掛けさせるんだか…。けど今はさっさと一次審査の受付に行かないと混じまうからな。ここでじっとしてもらってるわけにもいかない。


「おいルナ。絶賛人見知り中のとこ悪いんだが、早めに受付に行きたい。動けるか?」


そう聞くとルナはコクコクと頷いてくれた。よかった、ちょっとは落ち着いてきたみたいだな。


「そういえば、お前らは整理券何番だったんだ?」


「「3」」


だーと思った。


――――――――――――――――――――


説明会場から出て、シルヴァと合流した俺とルナを背負ったイナは、3番受付に向けて歩いていた。


「微笑ましいねえ。」


イナたちを生暖かい目で見ながらシルヴァがそう呟いた。


「お前、イナたちをほんと気に入ってるよな。もしかして、そっちの趣味なのか?」


冗談めかして言うと、とんでもない答えが返ってきた。


「お前よく俺がロリコンだって分かったな。」


場の空気が凍った。やばい。とんでもない地雷踏み抜いたかもしれない。「どうしてくれるんだ」といわんばかりのイナの視線が痛い。


「おいおい、どうしたんだよ。なんかおかしいことでも言ったか?」


「ひ、否定はしないけど。あんまり公言はしない方がいいぞその癖は。」


このタイミングで救いかのように、ちょうど受付に着いた。


「並んでないわね。じゃあ早速測ってもらおうかしら!」


やる気満々ですねー。リズの説明の途中で逃げたくせに。


「待て待てここは俺が最初だろ。」


「何よ!…分かったわ。先いいわよ。」


「やけに素直じゃねえか。どうした?熱でもあるのか?」


「さっき逃げた事少しだけ悪いと思ってるのよ!はぁ、気を遣って損した気分だわ!さっさとしなさいよ!」


「入隊試験の一次審査の方ですね。ではこちらへどうぞ。」


イナをからかいながら受付の前に行くと、お姉さんが笑顔で水晶の上に手をかざすように促してきた。


おお水晶で魔力測定とかそれっぽいな。そんな適当なことを思いながら水晶に手をかざす。3000は無いにしても2000くらいあるといいなぁ。


すると、俺とイナが口論しているうちに集まってきたのか、他の受験者たちがざわつく声が聞こえてくる。


なんだ?そんなに高いのか?


「そ、測定結果。魔力最大値560万です!!」


は?



……………………………………………………

To be continued

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