第6話喧嘩の行方
序章5 喧嘩の行方
突然だがここで、“魔法”と“魔術”の違いについて説明しておこう。なんでいきなりこんなことを言い出したのかというと、それは、俺が生まれつき魔法が使えないことに起因している。
この世界では“魔法”は『魔法原型』と呼ばれる魔力の塊のようなものを作り出し、そこに『術式』を付与することで魔法を使うことができるのだが、俺はその『魔法原型』を作るという感覚が欠如している。
なーんかわからないんだよな、あの感覚。そして、もう1つの魔術の方だけど、こっちは俺でも使える。
“魔術”は“魔法”と違って物に魔力を込めるだけだからな。
ただ、生半可なものに魔力を込めても負荷に耐えきれずに、粉々にぶっ壊れる。
だから、魔術使い、通称『魔術師』って呼ばれてる連中は、杖を持ってるザ・魔法使い! ……みたいなのを想像しがちだが、実際は魔術を得意とする剣士のことを指すんだ。って、じいちゃんが言ってた。
……って、やばいやばいやばい!! そんな呑気なこと考えてる余裕なかったんだった!
何がやばいってじいちゃんの強さが尋常じゃないことだ。
こんなに生命の危機を感じたのは、小さい頃雷刃に体洗ってもらったとき、笑顔でたわし使って全身くまなく、ガシガシされた時以来だよ!
っととと、ずれにずれまくったけど、話しを戻そうか。
というか、じいちゃんとの喧嘩中にこんなことを考えられる余裕っぷりを褒めてほし……って、あっぶな!!
ふー、じいちゃんの回し蹴りが当たるとこだった。なんならちょっと掠った気がするけど、たぶん気のせいだろう。
いかん、また話がずれた。喧嘩の詳細を順を追って話してくと、最初に仕掛けたのはじいちゃんの方だった。
じいちゃんの縦切りを俺は華麗(?)にバック転でかわしたが、息つく間もなくじいちゃんの猛攻は続いた。
じいちゃんは、『逢魔流剣操術』とかいう厨二病じみた名前の独自流派を使っていて、俺も1部受け継いでいる。けど、練度的に通用しないと思った方がいい。
で、ここからがやっと本題だが、じいちゃんに魔力の使い方を学んで数ヶ月、俺もオリジナルの魔術を1つ考案した。
と言っても、まだ実戦で使ったことはないんだが、今はそんなこと言ってる余裕はない。
じいちゃんの猛攻を必死に避けたり、流したりしつつさっきからずっと使う隙をうかがってるんだが、そんな隙どこにあるってんだよ……はぁ、しょうがない。
試しに砂でも投げて見るか。やれることないし。
「へっ! そんな子供騙しがつーじると思ったか、ばーか! つか、さっきから防戦一方じゃねーか。さっきまでの威勢は、どーしたってんだよ」
「思ってねーよ!! 試してみただけだっての! それに、まだ本気出してないだけだし!」
はったりである。打開策なんてあったら、既に使ってるっての。はっきり言ってもう泣きたい。くそ、ハンデありならいけると思ったのに。
っと、チャンス!! じいちゃんがよろめいた、おそらく骨折の後遺症だろうが、勝つためにはこの隙を逃すわけにはいかない!
だいぶ非道なことしてる気がするけど大丈夫だ。じいちゃん相手ならこれくらいのハンデがあってもボロ負けするっての。
「『風牙』!!」
技名を叫ぶ必要なんてないんだが、テンションが上がって思わず叫んでしまった。風牙は、相手を挟み込むように剣で左に右一回ずつ斬撃を入れる技だ。
なお、かっこよさ重視のため威力はそんなに高くない。というか、なんの術式も込めてない雑魔術。
当然そんなダメ元魔術、じいちゃんに効くはずもない。
そして、そこからの展開はもう、言葉で言い尽くせないほど一方的だった。ぼこぼこよ、ぼこぼこ。身内に対する仕打ちとは思えんくらいぼっこぼこ。
縦ぶりでフェイントかけてからのバック宙踵落としも、間合いを詰められて逆に腹パン食らうし。
それを想定して回し蹴りにしても、横に回られてこっちが回し蹴り食らうし。
こんな調子で行けばまぁ当然、3分も経てばこんな風に、あーら不思議。ボロ雑巾の出来上がり。
「あ、明らかにやりすぎだろ……つか、じいちゃんこんな強かったか?」
「そりゃ、今まではめちゃくちゃ手加減してやってたってこった。感謝感激
「しれっと、献立リクエストすんな。てか、意味わかんねえ単語作ってんじゃ――」
ここで俺は力尽きた。
♦︎♦︎♦︎
はーい、全身に果てしない痛みを感じながら目が覚めました。
「まさにい!!」
と、目覚めた直後だってのに莉愛が飛びかかってくる。
「まったく、いてぇよ莉愛……ちょ、マジで痛い。いだだだだ!!」
が、そのあとに待っていたのはハグではなく羽交締めだった。
「まさにいのばか!! 勝てないってわかってるのに! またおじいちゃんと喧嘩して傷だらけになって!」
「おかんか! っていででで! 悪かった! 反省してる!! だからそれ以上は危険が危ない!!」
無事に許してもらえたのか、ようやく羽交い締めから解放された。
ふー、焦った。焦りすぎて、危険が危ないとか意味わかんないこと言っちゃったよ。
「へっ!思い知ったかよ。おめーが俺に勝とうなんざ500年と6ヶ月はえーんだよ」
「なんだよその6ヶ月語呂が気色悪い。あと、今日の夕飯は麻婆豆腐だっての」
「おっ! 麻婆豆腐カ! いーナー」
「ってか、もう疲れたから作りたくねぇんだけど」
そんなこんなで、○月✖️日めでたく里から追い出されることになりました。
……………………………………………………
とぅーびーこんてにゅー
おまけ
真宗くんの切れ痔は、雷刃にタワシでごしごしされたせいです。
そのせいで若干タワシがトラウマだったりする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます