第5話不毛な孫子喧嘩
序章4 不毛な孫子喧嘩
じいちゃんが骨折ってから数週間が経ち、あのジジイまー、それは元気になった。いや、本来なら喜ぶべきとこなんだけど、いかんせんろくでもないことしかしないから手放しで喜べねぇんだよな……
あの後、島の人たち総出でじいちゃんを探し、見つけたのは夕方だった。見つけたというか、腹が減ったじいちゃんが勝手に帰ってきただけなんだけど。
その後、じいちゃんとの修行は再開され、まあかろうじて一人前と呼べるレベルにはなった。
「おめーらも、もうひとりでも生きてけるだろーからこの島から出てけ」
そんなことを思った矢先にこのセリフである。本当にどこまで自己中なんだろうな? 我が祖父ながら、頭は大丈夫なんだろうか。
「おっけー。んじゃ盆、正月は顔出すからナ」
軽い。こっちもこっちで、我が兄ながら恐ろしく軽い。何? この家バカしかいないの?
「いやいやいや、急すぎろだろ!! 大体なんで今このタイミングなんだよ!! そもそも行く宛もないし、大陸のことなんて俺らほとんど知らないんだぞ!?」
思わず声を上げて食ってかかると、じいちゃんはあからさまに顔をしかめて、ため息をつく。
おい、実の孫に向けていい表情じゃねぇだろそれ。
「うるせ。いーか? 俺が言うことは絶対だ。聞かねーやつは追放するしかねーな。つーわけで、どちらにせよ出てくっつー選択肢以外はねーんだよ」
「いや、めちゃくちゃすぎだろ! そもそもどんな理屈だよ! 頭沸いてんのか!」
一応反論してみたものの、案の定このざまだ。
昔っから、人の話なんて聞きもしない。
「それに、よく言うだろ? 善は急げって。つまりあれだ、えっとー、まあなんか急がなきゃいけねーんだよ」
「意味知らないならカッコつけてことわざなんて使うなよ!!」
いかん、話にならない。こうなったらもう諦めるほかない。……と、普通ならなるのだろうが、俺はそんな素直に負けを認めるような男じゃない。
「……わかったよ」
「あ? やけにあっさり引き下がるじゃねーか」
「けど、だ。うちの家訓だと、家族ふたりの意見が対立した時はどうする決まりだったっけ? なぁ、じいちゃん」
「あ? そんなもん喧嘩以外に何が……っと、そう言うことかよ真宗。おまえのことヘタレだヘタレだって言ってきたが、認識を改めねーといけねーみてーだな」
「なぁ、さっきからこれどう言う状況ダ?俺さっきから置いてけぼりだし、莉愛が帰ってきたら怒られても知らないゾ?」
とかなんとか雷刃が言ってる気がするが、まあ気のせいだろ。それよりいい感じに話の流れをもっていけてるな。
ふっふっふ、この数ヶ月で俺もかなり強くなったはず、いくらじいちゃんが強くても、瞬殺されることはないだろう。
「じゃ、ルール決めるとするか。そーだな、親しき仲にも礼儀ありって奴だ。ちったあ、てめーに有利な条件にしてやろーじゃねーか」
「そのことわざ意味が違う気がするけど。……って、マジ!? じいちゃんが喧嘩で手を抜く宣言するなんて……頭でも打った?」
「前言撤回。やっぱボコボコにしてやる」
ちなみにこのじーさん。マジで喧嘩において手を抜いたことがない、5歳の時に育ての親から1本背負いされたのはもはや児童虐待。トラウマなんてもんじゃない。
そんな、俺とじいちゃんのやりとりを横目に、もう飽きたのか雷刃は何やらどこからともなく取り出してきたお菓子を、バリバリと心地よい音を立てて食べている。
「いや、ボコボコは勘弁……って、おい雷刃! それ俺が昨日買ってきたお菓子じゃねーか!!」
「いいだロ? お菓子くらいまた買って来れば。ケチくさいこと言うなっテ」
「それなかなか売ってないんだぞ? しかも莉愛に買ってきたやつだし」
「そうだったカ? ……おい、待ってくれ。それ本当カ?」
もちろん噓だ。けど、雷刃には相当なダメージだろ。へっ、ざまあ見やがれ。
「おい、真宗。ルールだけどよ、おめーが降参するか、気絶するかすれば俺の勝ち。俺に一発でも当てられれば、おめーの勝ちってことでいーか?」
おっと、そんな好条件でいいのか?
「いいのかよ。そんな条件で、俺もこの数ヶ月でかなり腕が上がったんだぜ?」
そんな調子で挑発してやると、じいちゃんはへっ。と鼻で笑い、
「大丈夫だ、今のお前程度の攻撃、かすりもしねーよ」
と言って不敵に笑った。
勝負(親孫喧嘩)開始!!
……………………………………………………
To be continued
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます