第4話なんだこの茶番
序章3 なんだこの茶番
じいちゃんが倒れた。
何も不思議なことはないただのぎっくり腰だ。お隣さんの家の建て替えを手伝っていた際、丸太を、数10本持ち上げた反動で腰をやったらしい。
「なぁ、いいだろ? 1回だけだって、ほんのちょっと、ちょっとだけだから。な?」
「だ、ダメだって……」
「そんな、ケチくせーこと言うなって」
「だーめ、ねぇ、まさにい! おじいちゃんがまだ諦めないんだけどー!」
しかし、そんな莉愛の叫びに反応したのは俺ではなく雷刃だった。
「マサなんかじゃなくて、らいにいがなんとかしてあげるゾー?」
雷刃からすれば他意のない善意なのだが、悲しいかな莉愛にだけは甘々な雷刃の珍しい親切も、普段の言動から莉愛にとっては俺への嫌味にしか聞こえないらしい。
別に雷刃とは仲良いんだけど、なにぶん雷刃がシスコン極まっているせいで、莉愛の前では俺を下げようとしてくるんだよ。
まぁ、そのせいで莉愛が勘違いして、俺と雷刃の仲が険悪なんじゃないかって思うのも無理ないよな……しかも、嫌味を言ってくるとき、なんか意味ありげにチラチラみてくるから気持ち悪いんだよ。
莉愛からすれば、家族が険悪っぽいのは嫌だよな。
まあ、単純にシスコン極まってる雷刃が気持ち悪いのもあるんだろうけどさ。
「もう! なんで、いつもまさにいのことそんな風に言うの!」
そんなことを考えながら、畳んでいた洗濯を抱えて、莉愛たちがいるリビングに辿り着く。
「お前ら、何珍しく喧嘩してんの?」
「……うわぁぁぁん!!」
扉のところから顔を出し、中を覗いてみると、目が合った莉愛が間髪入れずに大声をあげて泣き始める。
「えっ、ちょ待ってなんでそこで泣くの!? 雷刃お前本当に何やらかしたんだよ!」
「待て待て!! 俺何もしてねぇヨ!」
まあ、そのあとは莉愛は泣き叫ぶわ、それをみて雷刃もパニックになるわで、すったもんだの大騒ぎ。
結局じいちゃんの、
「うるせぇ!! ちょっとは怪我人にきぃつかえやぁ!」
という一言で全員我に帰り、その場は収まったのだった。
♦︎♦︎♦︎
「で? 真宗。結局何があってあんな騒ぎになってたんだよ」
重い雰囲気の中、じいちゃんが机に頬杖をつきながら聞いてくる。
そういうのは俺じゃなくて本人たちに聞いてほしいんだけどな。
「いや、俺に聞かれても良くわかんないんだけど――」
そこまで切り出してから、チラッとじいちゃんの方を見ると、いいから続けろといった風に顎をしゃくって合図してくる。どうやら、逃げられないらしい。
「はぁ、本当に俺もわかんねぇよなんか、雷刃と莉愛が言い合ってんの聞いてきて見たらなんか突然莉愛が泣きだして……なあ、マジで何があったんのかそろそろ教えてくれてよ」
そこまで言って、ジト目で2人の方を見ると、莉愛はまだ泣いているため気づかず、雷刃は気まずそうに視線を逸らした。
「ら・い・は・くん?」
「わ、わかったヨ!! だからそんなおっかない顔すんナ!」
♦︎♦︎♦︎
「「ぶぁっはっはっはっは!」」
雷刃から事情を聞いた俺とじいちゃんは、声を揃えて笑う他なかった。
「なんでそこ笑うのよ!! 私、真剣に悩んでたのに!」
莉愛には笑かけど、そんな剣幕でキレられてもも笑いは収まらずしばらくの間ひたすら笑っていた。
「ごめんて、なんか可愛くて……ぶっ、はっははは! 雷刃も言ってたけど別におれと雷刃は仲悪くなんてないぞ? ただ、こいつがドシスコンなだけで……おい、雷刃!!莉愛にちゃんと謝れよ?」
「いでぇっ! ごべんなさい。今回ばかりは完全に俺がわるい。けどナ? 信じてもられないかもしれないけど、俺はマサも莉愛も大好きだから。もう、それはそれは舐め回したいくらいに大好きだから。そこは信じて欲しいんだヨ」
「もー、しょーがないなぁ。ほんとお兄ちゃんなのにいつまで経っても世話が焼けるんだから」
さらっと流された雷刃の変態発言は置いておくとして、何にしても――
「めでたしめでたしってやつだな……ってあのジジイ、どさくさに紛れてどこ行きやがった!?」
かくして、大和家の騒動は幕を閉じたのであった。
閉じた……のか?
……………………………………………………
To be continued
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