第2話 【希望】と【欲望】の錬金術師 マリッサ・レーレレイン


「いえ、彼女がここに来いと言いましたので。」

バルタノがそう言いながらお辞儀をしたその瞬間。


「彼を貴方の素材集めに同行させて!」

少女が言い放った。


「な、なにを....」

バルタノが少し驚き少女の言葉を否定しようとするが、


「....ッ!」

女性は立ち上がり、様々な色の宝石ようなものが組み込まれた独特な拳銃の銃をとって、銃口をこちらに向けた。




「賢者の石の力が込められた拳銃よ!近づいたら撃つ!手を挙げ.....」

女性は強くこちらを警戒して言葉を発したが...少女を見て勢いが急激に落ちた。



「その額の石、本物?」

女性は少女の額にある三つの石について聞く。





「本物よ。」

少女は答えると、

女性は戦意喪失し、銃を捨ててもう一度座ってから足を組んだ。


(額の石....やはり意味があったのか。それにしても先ほどの殺気を萎えさせる程の効果を持つ少女の額の石。これは何なのだろうか?)

バルタノは話についていけない中また新たな疑問を持つ。


「....何が目的?私を買いに来たって事?」

女性が嫌そうな顔で少女の方を見る。


「違う。私は貴方の意志に沿って彼を仲間に入れて欲しいって言ってるの。」



「.....分かったわ。取り合えず、本当に私の意志に沿いたいならこの部屋から出てもらえる?この男と二人きりになりたいから。」


「分かった。」

「......ガチャ」

少女は去り、ドアを閉める。

バルタノと女性の二人きりになってしばらくするとバルタノが、

「すみません。彼女が勝手に貴方に会いに来いと言って、付いてきただけなんです。僕は別に貴方の仲間になりたい訳じゃ....」


バルタノは女性の方を向いて少女の弁論を真剣にするが、

女性はその話を遮って、

「あの子に逆らわない方がいいよ。あの子は異常に強い。」


「.....それって、あの額の宝石が関係しているのですか?」

「そう。そして、あれはただの宝石じゃない。賢者の石よ。しかも三つ。相当な戦闘能力があるわ。」


「三つって、すごいんですか?頭に石を埋め込む事が何を意味しているんですか?」

「賢者の石は額に埋め込む事によって、特有の魔法が使えるようになる。」


「魔法!?魔法の使えるようになる石!?そんなものが実在するんですか!?」

「ええ。ちょっと特殊だけどね。」

魔法の技術は、大昔に廃れていったものであり、バルタノは魔法が使われた逸話すら聞いた事がない。


「だけど、身体に負荷がかかる。常人じゃ、二個額に埋め込むと死ぬ。」

「つまり、三つも額に埋め込んでまともに会話が出来るという事自体が、高い戦闘能力の証明になると。」



「そういう事。さて、私の部隊に入るっていう事なら最低限の説明をしないとね。一応言っておくけど、あたしはマリッサ。よろしくね。」


「僕はバルタノって言います。よろしくお願いします。」

それを聞くとマリッサは椅子から立って、古代文字で書かれた紙の束を持ってきて

バルタノに見せる。


「これは錬金術の始祖”ポルトレールの予言書”の写し。ここには私が作成を目指す物、

七色の最高位賢者石グラルレイド・アルケミスタ”についての詳細が書かれいている。予言書という通り、これは遥か昔に書かれたものよ。そして最近まで全貌が全く分からなかったこの書物が、至る所でパーツが見つかって解読出来るようになったの。そして七色の最高位賢者石グラルレイド・アルケミスタが作成される時期も予言されていて、それも丁度ここ最近の時期なの。」

「つまりその賢者の石が生まれるタイミングに共鳴して書物が出てきたという事ですか?」

「分からない。私はそういう事を信じるタチじゃないけど、この予言に沿って事が進み、行えば私も理論上最高性能の物質”錬金術の最高物アルケミスタ”を作れる!」


マリッサは右手を胸に当て、誇らしげに

「バルタノ!私は作るわ。錬金術の最高物アルケミスタは、私が絶対に作る!そして、名を残すわ。マリッサ・レーレレインの名をね!」


そうマリッサは言った後、椅子に戻って座りなおして

「ま、三日前にそう思いついたばかりなんだけどね。だから、身内や友達ぐらいしか仲間がいなくて募集を出した所に貴方達が来たって事。あとさっきの警戒は、錬金術師を買ったり殺したりする噂がもう広まってて警戒マシマシだったって訳。」


「なるほど、よく分かりました。」


「で、どうすんの?」

マリッサはバルタノの顔を覗き込むように見て微笑んだ。

「どうするとは?」


「あの子の事。別に私の隊に入ってもらっても結構。だけど、無理矢理連れてこられたなら私の仲間に入る道理とか何も無しなのよね?だけど、あの子に逆らうのも危ない。両親を説得して私の隊に入るのか、あの子を説得して元の生活に戻るのか。お前が決めるんだ。一日でどちらか済まして来い。」

「分かりました。では、まず彼女から説得してきます。」

そう言って、バルタノは振り返りドアを開ける。



「ま、頑張りな。........あとこれ。」

マリッサは青く輝く石を当てるように雑に投げ、

バルタノは咄嗟にもう一度振り返って石を顔面近くでキャッチした。

「賢者の石だよ。一個額に嵌めるぐらいなら、身体に支障は無い。お守り代わりでも何でもいいから取り合えず持っていけ。」

「ありがとうございます。では、失礼します。」


「ガチャ」

それを聞いてバルタノはマリッサの研究室を去り、ドアを閉めて階段を降りる。

一階まで降りると少女が待っていた。


「お帰り。どうだった?」

「入って貰って結構。と。」

「良かったね!」


(彼女を説得するには、取り合えず機嫌を取らないと.........どうすればいいのだろうか?....直接聞く事にするか。)


「何か欲しいものとかありますか?それともして欲しい事とか......何かありますか?」


「んー...」

少女は考える動作をするが、直ぐに答えを出した。

「デートをして!」


「デートですか?....分かりました。」

バルタノは、渋々承諾した。

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