第14話
「お、お兄様……?」
優しいお兄様が声を荒らげるなんて滅多にない。
お姉様達もぽかんとして静かになった。
お兄様はお義姉様に支えられながら公爵様の前に立った。
「アディロフ公爵、お初にお目にかかります。アリスの兄です。大変お見苦しいところをお見せしました」
お兄様はエイダン様に謝罪すると、私を見て微笑んだ。
「アリス……元気そうでよかった」
「お兄様……」
私が家を出たころより窶れてしまっているお兄様の顔を見て、私は涙ぐんだ。
「アディロフ公爵、我が家のことでご足労いただき申し訳ない」
「いやなに、アリスの兄上にご挨拶が出来て良かった」
お兄様とエイダン様は挨拶を交わし合った。
「情けない話ですが、父と妹達のことをお頼みしたい」
「お、お兄様?」
お兄様がエイダン様に頭を下げた。お姉様達はおろおろしている。
「任せておけ。大事な婚約者の頼みだ。新たなソレート伯爵には協力を惜しまない」
「こ、公爵様! アリスは教育もなっていない娘ですわ! 公爵夫人になんかなれません!」
「そうです! 私の方がアリスよりお役に立てます!」
まだ諦めていなかったのか、長女と三女が口を挟む。
ギャンギャンと私のことを貶めて自分を持ち上げる姉達の言い分に、エイダン様はふっと口角を上げて笑った。
「役に立てる、だと? では、お前達はアリスのように、俺と共に黒い森に住まう恐るべき魔獣と戦えると言うのか?」
「えっ……?」
「ま、魔獣!?」
長女と三女の顔がひきつる。
ちなみに、公爵家を囲む黒い森では小鳥とうさぎをよく見る。この間は鹿も見かけた。
「我が公爵家の者は呪われし運命を背負って生まれてくる。その家に嫁ぎ、闇と戦う覚悟があるのか!」
エイダン様が声を張ると、長女と三女は顔を青くして震え出した。
「俺の伴侶となる者は、雷雨の中に飛び出す勇気を持たなければならない! それに、どんな環境でも自分らしく生き生きとしているアリスはとても可愛い! 俺はアリス以外と結婚するなんて御免だ!」
とんでもないことを言い出したエイダン様に、私は頬を赤らめた。
私の肩を抱いてドヤ顔をするエイダン様を見て、お姉様達は呆然としていた。
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