第15話
結局、お姉様達は修道院へ行くのを嫌がってお父様の隠居先へついて行った。
その後すぐに、長女は旅芸人と恋仲になって逃げてしまったそうだ。三女は村のおかみさん達と喧嘩になって問題を起こし、嫌がっていた修道院へ入れられてしまった。
次女は恋人に捨てられて路頭に迷い、ソレート伯爵家に戻ってきた。が、恋人と一緒にいる時に詐欺のような行為に手を染めていたらしく、捕まえられてしまった。
もうソレート伯爵家からは籍を抜かれて貴族ではなくなってしまったが、姉達も時間はかかっても自分を見つめ直して、幸せになれるように頑張ってもらいたい。
お兄様は元気になって、お義姉様と共に伯爵家を立て直すために働いている。
そして、私は——
「アリス! 俺はついに世界の秘密に気づいてしまった! 秘密を握る俺を狙って影の陣営が動き始めたんだ!」
「まあ大変」
「お前にこの世界の秘密を記した書を預ける! 俺が戻ってくるまで守れ!」
「はい。ありがとうございます」
私に秘密の書を託すと、エイダン様は去っていった。執務室に戻ったのだろう。
世界の秘密が記された書とは、アディロフ公爵家の年毎の収穫高が記された記録だ。将来、エイダン様の領地経営をお手伝いするために、勉強中の私に貸してくださったのだ。
「ふふふ」
エイダン様といると毎日飽きない。
来年には結婚式を挙げて、私はエイダン様の妻になる。
レオナ様が張り切って選んだドレスは純白だ。私としては、眼帯付きの黒いドレスでも構わなかったのだが、意外にもエイダン様は白いドレスを希望した。
「アリスには白も似合うし、眼帯をつけたら可愛い瞳が見えないだろう?」
普段は患ってる言動ばかりなのに、不意にそういう台詞を混ぜ込んでくるから油断できない。
「さーて、世界の秘密を紐解きますか」
私はエイダン様にふさわしい公爵夫人になれるように、影の陣営に狙われる危険な記録を読み込むことにした。
そんな私の姿を見て、庭の木にとまった闇の魔導士の使い魔が「カアー」と鳴いた。
終
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