第354話 攻城戦

 一応抵抗を試みるが、敵わないと知ると撤退し始めた振りをして行く。勿論俺がそのように指示を出している。


 城門近くにわざと露呈させた落とし穴を作る。砲撃で露呈した感じで穴を開けていくのだ。

 焦って早く着火してしまった火の壁など、演出には事欠かない。浮足立っている感を演出しているのだ。


 投石機の石は船に届かず、上陸後の小舟を若干破壊する程度だ。狙いが逸れて当たってしまった。流石に何人か死んだかな?まあ、運がなかったって事で。


 陸上では死者を出さないぞと注意を向ける。城壁から小石を投げて足止めをし、多少の怪我人を出すに留める。


 鉄砲を撃ってきたので、予め欠損修復で作った数人の兵士の動かない体に着弾させ、断末魔の叫びをあげてから、城壁の外に投げていく。城壁から殺られた兵士が落ちたように見せるのだ。


 兵が落ちる度に歓声が沸き起こるが、俺は呆れていた。戦い方が下手過ぎるのだ。まるで素人の為、ある意味演出に苦労する。


「大聖堂にて決戦だ!一旦引いて立て直しを図れ!」


 城門に火炎瓶を投げて時間を稼ぐ。ベタなセリフだが本気と感じたようだ。


 敵兵は消火に必死だ。城門から雪崩込みたいのだろうが、火が邪魔だから出来ない。


 驚いた事に攻城戦にて必要とする梯子や破壊槌がなく、艦砲射撃による攻撃オンリーだった。

 城門についてだが、実は奴らは自力で破壊するに至っていない。

 あまりの破壊力の無さに、中から、つまり俺達が破壊したのだ。

 破片の飛び散り方から分かる筈だが、砲撃で破壊したと思い込んでいた。中から外側に向かって破片が飛び散っているのに、門が壊れると勝鬨があがり、俺は、いや、俺達はたまげていた。馬鹿な奴らだなと。


 城門を突破すると、逃げる兵士を追い掛けて行く。勿論ペースを落として誘導しているので逃走ではないが、奴らは見抜けなかったようだ。大聖堂の入り口に最後の兵士が到着すると門を閉め、致命傷にならない位置に矢を当て、一旦先頭を下がらせる。勿論聖堂には誰もいない。正確には一般の兵士がだ。


 やがて何処かの建物を破壊したようで、柱を何本か持ってきた。どうやら破壊槌をこしらえるようだ。奴ら中に、現地調達で攻城兵器を作るだけの機転が働く者がいた。ただ、得てしてそういう奴は身分が低く、全体を見る事が出来ない。そうして奴らは扉を破壊して行く。


 やがて門は破壊され敵が入って来たが、そこには中庭があり、こちら側の者はホールに向かって逃げていく。

 正確には逃げる振りをして誘導をしている。それにわざと扉を開け放っていたが、面白いように敵兵は誘導されて行く。


 やがて敵兵は自分達が破ったと思っている門へなだれ込んで行く。愚かな事に、動く事が可能な者達全員が大聖堂へ来ていた。怪我人が城壁の外に連れられている以外はだ。因みに大聖堂の入り口の先は、奴らにとっての敵国、それも首都であり、更に行政機関を選んでやった。


 そして俺は間髪入れずにゲートを閉じた。兵を送り出してから城壁近くにいる怪我人と、僅かな護衛及び医療班を捕らえた。


 実にあっけなかった。囲まれるとあっさり降伏したのだ。


 そして次に俺は船へと向かう。

 1隻また、1隻に仲間を送り込み、順次制圧しては船を収納に入れるのを繰り返していた。面倒くさかったので途中から敵の兵士に関しては自国に適当に送り返した。


 旗艦には提督がいたが、驚いた事に部下を戦わせているのに、部屋で女とやっている最中だった。


 裸のまま捕らえるが、妻達の目を汚したくないから下着だけ着させた。女は愛人らしい。


 旗艦から降伏した旨の信号を上げさせ、船を拿捕していく。面倒くさかったので密集させ、大型船に移乗させた。その後ゲートで適当な町へ送り返していく。怪我人は治療し、一部の幹部以外はやはり適当に送り返す。


 何も言わずただゲートを指し示し入るように促すだけだ。


 一部の船が逃げたが、俺はわざと数隻を見逃した。勿論一部は捕らえ、船を消していく。消すイコール船を収納に入れるのだが、向こうからしたら恐怖そのものだろう。因みに捕らえた者はゲートでワーグナー等に送り込み、即時身柄を拘束している。気まぐれで自国に送り返していたりする。


 そうしていると夜中になっていたが、1日掛からずに敵は壊滅したのであった。

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