第355話 尋問

 俺は勘違いをしていた。

 的船団の提督の役目は船をワーグナーの沖合に連れて行き、上陸船を送り出すまでだった。今は兵員達の戻り待ちだったのだ。


 船に残っており、戦いが終わるまで出番がなくてやる事がなかった。

 おまけに戦いの指揮権や交渉権は他の者が担う。船を降りるのは、港に戻ってからだ。


 別段あの時に女とやっていたのは無責任ではなかった。ただ、女を連れていた事が問題にならなければだが。要は彼は戦いが終わり、兵員達が戻るまで休息になっていた。


 尋問時に向こうから言ってきたのだ。


「自分はただただ兵員を輸送してきただけだ。戦闘は契約にない。目的地に着くまでと、目的地を離れ、枳穀するまでの指揮権しかないのだ」


 ため息をつくしかなかった。戦いの目的すら聞いていないと。総大将から帰りの船に乗る者を引き渡されたら母港に戻るだけだと。単なる輸送屋だ。タクシーにされているだけだった。


 嘘を言っていないのは分かっている。そう俺は思い込みからやらかしたのだ。総大将はゲートで送り返しちゃったんだよね。メールをする場合、

(^_^;)

と入力したい、そんな感じだった。


 それはさておき、他の者を尋問するも大した事は分からなかった。末端の兵士しかいなかったからだ。


 仕方が無いので捕らえた奴の中から数人を、本物の町へと連れて行ったり、ダンジョンに連れて行ったりしていた。ここがどういう場所というか、世界なのかを理解して貰うためだ。


 沖合に1隻の中型船を出し、見晴らしの良い場所から特大のファイヤーボールを投げ、船が燃え盛る燃る様を見せていた。


 メッセンジャーとしてこちらの事を伝えて貰わないと困るから、ちゃんと見聞きして、上官や行政府に報告をして貰う為に予めメッセンジャーになって貰う者達に見せたのだ。


 若い兵士が怯えながら自分達は帰る事が出来るのか?と聞いてきたので、わざと弱く見せ誰も殺さないようにしていたと説明し、上陸させる前に全滅できる力がある事を理解させ、メッセンジャーとして土産も持たせて無事に送り返すと伝えた。


 震えていたが、こちらに殺意がない事が理解され、こちらからは一方的に見せたい事を見せ、何を伝えて欲しいかは言わなかった。報告内容は自分で考えなさいとした。

 見聞きした事を好きに報告すれば良いとも。無論報告しないのも自由だと伝えると驚いたが、強要した内容では意味がないのだ。

 ただ、複数の者を別の場所に送るから、報告内容に嘘偽りがあると、自分の首を締める事にならないか?そうならなければ良いがと伝えておいた。


 ただ、特別な土産は然るべき立場の者に渡るようにお願いした。死にたくなければ中を見るなと。蝋などで封印をするから、中を見たかどうか分かると思うぞと伝えた。


 1週間位逗留させ、夜中に好きに諜報活動をさせた。

 無論監視をと言うより、護衛を付けて。金も渡し、歓楽街への行き来も許した。強姦さえしなければ、娼婦を抱きに行っても良いと伝えたが、兵士達は現地の女性と性交をするのを禁じられていると言っていた。正確には、恐ろしい性病があると聞かされているそうだ。


 そしていよいよメッセンジャーを送り出す時が来た。各地にメッセンジャーを送り出し、行政府で大統領が出席している会議中の議事場にゲートを出し、メインのメッセンジャーを送り出す。


 勿論目達の手を縛り、こちらはゲートからはドラゴニュートや精鋭部隊、妻達の何人かもだ。手には以前鹵獲したレーザー銃もある。敢て文明の違いを含め、思い知らせる事により今後の話をするにあたり、強気の交渉とする為だった。

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