第302話 尋問

 俺は捕らえた魔道士をワーグナーの城内に連れて行き、そこで尋問を始めた。

 今いる国の隣国の宮廷魔術師だった。国王は既に魔王軍に討たれ、この女魔術師は捕まった。捕まった時に隷属の首輪を装着させられ、更に家族を人質に取られているという。

 

 その後に命ぜられたのがこの国の国王の首を取って来る事だ。そうすれば娘を返してやると言われていて、従わざるを得なかったと。従わないと無作為に選んだ住人を使い、公開レイプをすると言われ、渋々従った。

 娘は未婚で純情な性質なので、もし実行され場合その場で舌を噛み切るか、何らかの手段で自殺するであろうと判断したのだと。

 自分で言うのは何だが、己の若い頃に瓜二つで、大変美しいのだそうだ。そんな娘が犯されるのをどんな事をしてでも避けたかったと。人質を取られている為に自殺が出来なかった。


 幸いまだあの町は被害がない。城壁と城門が物理的にダメージを喰らったが、兵士達は決して打って出てこようとはしなかったから防壁からの小競り合いの段階だった。あくまで国王の首を取れとだけ言われていて、魔物の指揮権を渡されたが、他の町は手出しせず、ひたすら王城を目指していたという。


 娘が捕らえられているのは魔王城の隣の塔の上階だそうで、とてもではないが手が出ないという。


 何でもずっと子宝に恵まれず、20代半ばでようやく授かった1人娘だった。己の命を差し出すのでどうか救って欲しいという。俺の動きをよく見ていたようで、俺なら可能だと判断したらしい。

 確かにそれなりに…昔は美しかったと思われる綺麗な歳のとり方をしている。泣きながら俺の足にしがみ付いていて、可哀想でついつい救助を約束してしまった。


「いやー、そのね、娘がさぞ美しくぽちいと思ったのは内緒です!」


 とまたもや誰に言っているのか、言い訳という本音が出ている主人公である。けっして聖人君子ではない。


 善良な性人と言った方が良い御仁である。英雄色を好むを地で行っているのだ。


 魔王はそんな感じだが、捕らえた者には決して手を出させないという。但し、当たり前だが脅した相手が有用と思う間はである。失敗が伝わると公開レイプの後、ゴブリンの群れに放り込むそうだ。


 セレーシャから聞かされており、別段驚かなかった。


 この魔道士は奴隷にしているとはいえ、今は俺が預かっている。というのはあの町の関係者には、攻めてきた魔王軍の尖兵は全滅させた事とし、指揮権を持った者は既に消し炭にしたと説明した。ワーグナーにて預かっていると言っても監禁ではなく軟禁に近い。軟禁と言っても居室を与え、行動制限を掛けた位だ。自由に動く事が可能なのは皇帝宮の敷地内のみとし、建物の外に出る場合誰かの付き添いを必要だとしていた。


 そこでセレーシャの話をすると驚いていた。見知っていたのだ。その為セレーシャに身柄を委ねた。


 そして城を離れた後、あの国の国王と対面する事としたのである。

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