第303話 クラリスの捜索

 この後の事について皆でどうするか協議し、クラリスという宮廷魔導師の娘を俺が単独で救出する事となった。

 誰も反対しないし、セレーシャにはお願いすらされた。俺が皆に苦しい言い訳をせずに済んだのは、魔王のあまりの非人道的な所業を、セレーシャが俺に必死に訴えており、俺が1人で行かざるを得なくなったからだ。まさに願ったりかなったりで、うはうはな感じなのだ。


 しかめっ面で渋々行くと約束したが、心の中ではガッツポーズだ。また1人綺麗所ゲット?と。


 俺の飛行なら一時間半で辿り着く筈だった。念の為に滅びた城にセレナと戦闘を得意とする者の一部が待機だ。


 とりあえずクラリスが捕らえられている国の王都までの地図を確認し、町の名前、道中の分岐路、その辺りをメモし直した。そうして途中途中の町の近くに降り立っては、セレナに転移 ポイントを設定させつつ向かって行く。 何があるか分からないので万が一の為の保険だ。しかし、どこの町も門を閉ざし、完全に籠城している状態であった。

 おそらくセレーシャが魔王軍を率いていた近隣から噂が伝わり、更に先の魔導師が隊を率いて通過のみではあったが、臨戦態勢を取っているようであった。


 念の為町の中には入らず、町のすぐ近くに降り立つようにしていた。


 そうして街道沿いを進み、宿場町を通り過ぎて行く。大体一時間半を掛けて10程の宿場町を過ぎた頃に、ようやく城が見えてきた。


 俺の気配察知からはどうやら魔王はこの城にはいないらしい。まずここの周辺にて一度セレナにゲートポイントを設定させ、 王城街の中でも同じくゲートポイントを設定していく。


 町の規模はワーグナーよりも大きかった。 我が大陸の最大都市であるワーグナーの王城街を遥かに超える規模の町がそこにはあったが、 出入りしている者の姿もなく、上空から見る限り町の中は人の気配がほとんどしない。正確には外に出ている者の数である。建物の中にはかなりの人数がいる事は分かるが、この町の中は魔物が闊歩していた。


 そして早々に城を発見したというよりも、当然の如く城が目立つところにあるので一目見て分かる。

 そして目的の塔のある場所が分かったので、先ずは塔の最上階から探索をする事にした。


 外壁には当然のごとく空気を入れ替える為の小窓がある。

 小窓といっても煉瓦造りか、レンガ調の装飾をされた塔なのかも分からないが、 辛うじて頭一つ入るかどうか位の切り込みがある、そういうのが点々としている。


 そして、漸く誰かの姿を捉える事が出来たが、ここは誰かを投獄したり、監禁する、そういった事の為だけに作られた塔であるようであった。


 そうやって中を覗いて行くが、中々クラリスは見つからない。無人であったり、他の者だった。


 ようやく目的の部屋に辿り着いたが、そこから見た情景に俺は絶句した。


 その 小さな部屋の中で一人の女性が首を吊っていたからであった。

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