第222話 昇天させられる

 俺は急ぎボス部屋に開いた部屋に入るがやはりコアがある。恐らく今回の召喚絡みのダンジョンではこれが最後だろう。


 事前に検討した結果、一番最後の出没だと見ているた。成長中だったのか、これが最大だったのかについては最早分からない。逸る気持ちを押さえ、ボス部屋に現れた宝箱の中身を収納に入れる。なんと2つ目のシェルターだった。やはりこれはセレナに持たそうと決めた。


 ひと呼吸して特に回収忘れが無い事、俺の装備に欠落が無いのを確認し、臨戦態勢でコアを収納に入れると、何時もの如くダンジョンの外に出たが、俺は急激に気持ち悪くなり、嘔吐して意識を失ってしまった。


 気が付くとベッドの上だ。それも懐かしい屋敷の部屋だ。状況が分からないが、ボレロに設置したワーグナーで買った屋敷に居るのだろうと理解した。


 そしてここにはセレナがいる。俺の心臓ははちきれんばかりに鼓動が早い。ふと見える外の景色はあの時の幻覚の通りだ。


 俺はふと思う。ひょっとして今がその時か?いや駄目だ。まだ早い。確かセレナの誕生日って来月だよな?。


 そんな事を思っていると、俺の手を誰かが握ってくれていた。

 そう言えばあの時はシェリーが手を差し伸べて握ってくれていたっけ。


 左手はシェリーだけどもう一方の手はセレナだな。


「おはよう。状況を教えてくれないかい。あと喉が枯れそうだ!」


「ああ良かった!気が付いたのね。今水を用意するね!」


 シェリーに続いてセレナが声を掛けてきたが涙を浮かべていた。


「良かった!志郎ったら急にいなくなっちゃうんだもん!心配したのよ!刻印持ちの子からは志郎が生きていると魂が感じるって言われたの。羨ましかったの。私も欲しいなあって!それと全員無事よ!」


「なあシェリー、悪いけど着替えの用意と風呂の準備をお願い。それと皆に俺が起きたと伝えてくれないかな」


 シェリーが頷いて部屋を出ようとするので腕を掴み、強引に抱き寄せてキスをしてから送り出した。シェリーは驚きつつも嬉しそうに笑顔で部屋を出る。


 俺はセレナに伝えるべき事を伝える事にした。


「なあセレナ、刻印の義は約7ヶ月後に行う予定にしたい。理由は分かるね?うん。そう、そうだよ、ルシテルから聞いているだろうけど、セレナの寿命がそこまでなんだ。俺には見えるんだ。本当は20歳の誕生日にと思っていたんだ。少しでも大人の女性の体になるのを待ってあげたかったが、大学生にギリギリなった時になるね。ギリギリまで待てっもそれこそ俺が死ぬまでは生きられるから、文字通り一緒に死ぬ事になる」


 セレナが泣き出したのでそっと抱きしめ熱いキスを交わす。


 セレナはなんとなく寿命が短いと、魂食いにかなり喰われているのだと理解していて、ルシテルに色々教えて貰っていたという。


 セレナは少ししてから泣き止むと、先のダンジョンの話をしてくれた。


 先頭を行く俺の存在が急に消えて皆驚いたと。そして俺が消えた先が壁になっていて先に進めなく、破壊もできなくて止むをえず引き返した。

 交代でダンジョンの出口を見張り、セレナ自体はテレポートのギフトの関係で皆をあちこちに運ぶので忙しかったと言う。その見張りからはセレナは外れていた。正確には送り迎えをし、交代の者を連れていき、見張りをしていた者を連れ帰る役目を担っていた。


 そして俺がダンジョンから出て直ぐに嘔吐して気絶したので、慌てて屋敷に連れ帰ったというのだ。その時の当番の一人がシェリーで、セレナと一緒にいた者に念話経由でセレナが迎えに行ったと。


 今はもう何ともないので50階層での精神攻撃のダメージだと思うと説明した。

 お腹が減っているので食堂に行くと、ボレロ組とダンジョンアタック組の皆が出迎えてくれて、何事もなかったかのような食事となった。


 食後に俺がこれよりバルバロッサ討伐に向かうと言うと、血相を変えたレニスに平手打ちを喰らった。


「貴方分かっているの?このまま無理をすると体を壊して死ぬわよ!無理し過ぎよ。せめて3日は休みなさい。後で部屋に行ってマッサージをするから、心身共にリフレッシュしなさい!バルバロッサが攻めて来ない限り休むのよ?必要なら、いや必要じゃなくても私の・・・」


 俺はその迫力に気負されて頷く。最後の方は周りの声に掻き消されて聞こえなかったんだよな。レニスは俺の言いつけ通りセクシー過ぎる格好は辞めて、大人しい服装でちゃんとした格好をしていたが、やっぱり清楚な服の似合う絶世の美女だなあと思ってしまう。食後にお風呂に入り、大人しく部屋に行くとレニスが待ち構えていた。


 またもや昇天させられる俺である。背中の筋肉が固くなり過ぎていると言っていた。自分では認識していなかったが、マッサージをして貰うと良く分かったんだよね。知らず知らずの間に無理をしてたんだなと。望むと望まないに関わらず、魔物が這い出てきてスタンピードが発生してるんだからしょうがないと思うのだが、レニスは容赦なくマッサージをしてくれて、その心地良さに不覚にも寝落ちしてしまった。やはり疲れていたんだろうね…

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