第221話 ダンジョン一人旅三日目


 またもや一人侘びしく朝食を食べる寂しい朝だ。

 おもわず皿を投げ、クソーと叫んでいるが勿論何も起こらない。


 一刻も早く脱出したい。皆がもし単独で放り出されていたり、何グループかに別れていた場合、セレナと一緒ではななかった者はそろそろ空腹で動けなくなる。水は生活魔法でなんとかなるだろうが、それでも心配だ。だから無理をしなければならない。一人だから慎重に行きたいが、そうもいってはいられない。


 今日は41階層からだ。


 俺は少し焦っていた。なので早朝まだ6時というのに、あくびを噛み殺しながらダンジョンに繰り出したのだ。実際は注意力散漫な状態だ。


 この階層からはまたもや洞窟型で、複雑極まりない迷宮になっているようだ。階段を降りて直ぐにファイヤーボールを投げつけて周りの安全確保を行い、またもや大量の魔力を込めて顕現させたサラマンダーを数体含め、100体程を送り出す。魔物の殲滅と階段の発見及び報告を指示した。


 本来この階層を抜けるのには、丸一日掛かっても不思議ではないような迷宮っぷりだが、サラマンダーを100体程出しているから早々に最短ルートが見付かるだろうと思っている。事実20分程で戻ってきた。そうやって案内の個体達と一緒に飛んで行き、10分位で次の階に向かうのだ。


 そうして順調に進み、49階層を終わり50階層へ降りていく。


 50階層はやはりボス部屋だが、疲れと腹が減って集中力が落ちてきたので軽く昼を食べる等、小休止を挟んでからボス部屋に挑む。


 そして俺はボス部屋の扉を開け中に入る。


 一瞬意識が飛んだような気がするが、ここはこの町に来た時の何時もの宿屋の部屋で、ベッドではレニスが俺を待っている。まあ何時もの事だが、レニスはセクシーな下着で出迎えて俺を誘惑する。


「今日もお疲れ様。ねえ坊や、今からどうするの?食事?お風呂?それとも・あ・た・し!?」


「そうだな体も汚れているし、先にお風呂かな?レニスを愛するのは綺麗な体じゃないとね!」


「そう残念ね。待ってるわ!」


 そう言って下着を脱ぎ去り誘惑する目を向けてくるが、むしゃぶりつきそうだから風呂に逃げ込む。汗で汚れた体で彼女を汚したくはない。


 レニスを娶ってからもうそろそろ3年か。もうぼちぼち子供を考えても良いかな。それとなく彼女は子供が欲しそうな素振りを見せる。4年前は悲惨だったな?頭がズキッとする。


 バルバロッサでの戦いでいきなり魔王と遭遇し、俺とレニスしか生き残れなかった。毎日の日課で亡くなった妻達の墓参りをしている。今週は分骨した墓ではなく、本体を葬ったバルバロッサの墓に来ている。今日は墓の周りの草むしりをしていたが、炎天下だったので大量の汗をかいたんだよな。


 相変わらずレニスの体は素晴らしい。優しく、強く、気の利く良い女だ。そんな彼女に俺の心は依存しており、今もぞっこんだ!???またもや頭が痛い。


 彼女が愛おしい。今日も激しく愛して、今日からいよいよ子作りだ。彼女も俺の決断に喜んでくれるかな????うっ!


 ふとセレナやナンシーと3日前は一緒にいたよな?とあり得ない事を思い出している。彼女達に会いたい。でもそれは叶わぬ夢だ。俺が彼女達を直接埋葬したのだから。また…もや…頭が…痛み、心が警笛を鳴らす。


「騙されるな!自我を取り戻せ」


 何の事だ?


 ちょっとのぼせ気味なので風呂を上がった所で、俺はバスローブを纏っている。


 レニスを見ると裸にバスタオルを巻いているだけで、俺を手招きしている。もう俺の滾りは押さえられない。レニスの肩に触れるとバスタオルを剥ぎ取り、その見事な双丘にむしゃぶりつく。


 レジスット成功!レジスット成功!と何度も聞こえる。俺は致し始めようと、さあいよいよという段で急にハッとなった。そしてライトソードを一振りしてレニスの、いやレニスの姿をした何かの首を切断した。


 そうするとレニスの姿をした何かが煙になって消え、周りの景色も変わっていた。


 そこは何時ものボス部屋だった。


 俺は背中に鋭い痛みを感じ、ヒールを掛ける。背中を刺されていたのだ。危なかった。


 そして急に思い出した。ここはダンジョンの50階層だと、先程のレニスとの情事は幻覚だと理解した。


 恐ろしかった。まるで何年も連れ添っていたかのような経験がある感覚があった。


 どうも幻覚で姦淫をさせ、その最中に殺す感じだ。大して強くはないのだが今までで一番恐ろしいと感じたのだ。


 ドロップは紳士の衣。

 もろ俺用の服だ。ネーミングセンスを疑うが、それは作者に言えば良いのか?と訳の分からぬ独り言を言う志郎だった。


 そして俺は涙した。最終階層の時に出る扉が出たからだ。


 俺は扉に向かい走り出したが、素っ裸でホーリーエンジェルアーマーがそのへんに散乱している。恥ずかしい格好だ。逸る気持ちを押さえ、ちゃんと服を着てから扉を潜るのであった。


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