第220話 ダンジョン一人旅

 俺達は意気揚々とダンジョンに入り、テンポよく進む。ここは洞窟型ダンジョンだ。


 俺が先頭で10分位進んでいたが、先程まではやれ頭をぶつけただの、躓いただのとぼやきが聞こえていたが、急に周りが静かになりあれっ?と思い質問をした。


「なあレニス、ここのダンジョンには入った事は有るのだったっけ?」


 返事がない。後ろを振り向くと誰もいない。

 俺は?と思い立ち止まって少し待つも誰も来ない。何やってんの?と思いつつも少し戻る。


 しかし何故か15分?位進んでいて、行き止まりに階段があった。


 俺は焦った。行き止まりまで来た!と言うか階段まで戻ったが誰もいない。しかも一本道だ。もう1度と思い引き返すが1分も進まないうちに行き止まりだ。ダンジョンが変形?しているようだ。


 仕方がないので階段の所に行くが皆の気配を感じない。つまり念話も使えないという事だが、勿論念の為試した。


 俺はいい。収納があるから。セレナが向こうに居る筈だから、2週間位は食料にも困らないだろう。彼女の収納にもかなり入っている。


 俺はこの状況について考えると、急いで攻略をする必要性を感じた。コアを回収すれば魔物以外の生き物は地上に出される。


 強い決意を持って下に降りていくが、既に時間をかなりロスしている。


 2階層に降りると魔物が大量に居たがファイヤーボールで焼きまくり、周辺を綺麗にしていく。


 少し進むとまたもや大量の魔物で、獣型ばかりだ。

 4度繰り返しようやく3階層への階段が見えた。


 俺は迷わずに即時に降りていく。


 4階層は特に何もなく分岐もない。ひたすら直線を進むと180度の曲がり角に来た。反対方向に進ませる感じで出没する魔物はミノタウロスばかりだ。


 もう2往復し、5階層へ降りる。


 5階層はボス部屋のみだった。

 何が出たのかはよく分からなかったが、熱湯を注ぐコンボ技であっさり倒す。

 ドロップは仰々しいマントだった。インビジブルマントだ。名前の通り存在を消せられる。つまり姿を消せるのだ。発動時に魔力を消費するが、俺の魔力では全く問題のないマントだ。これの凄いのは気配も消せる事だ。


 早速装備し、少し疲れたので食事を出し30分程休憩をして先に進む。


 ずっと一本道だ。時折ミノタウロスが出るが俺には気が付かない。近付き転移で首に剣を叩き込む。それの繰り返しだ。


 この後もやはり1本道でありサクサク進み、夕方過ぎに10階層に辿り着く。やはりボス部屋だった。


 今日はここまでとし、コンボで倒し切るが、ここのボスも呆気ない。早速ドロップを確認すると何故かアダマンタイト製のビキニアーマーが出た。レニス用のだろうか?ちょいセクシー過ぎるかな。


 俺はシェルターを出して入り口をロックした。食事をして風呂に入り、眠りにつくのだが、久し振りの1人での夜だった。寂しいのと皆が心配で涙を流しつつ、体を休める為に眠る。


 今日の朝の目覚めはいつもと違う。そう、1人なのだ


「ナンシー?おーいナンシー?シャリーや~い?」


 寝ぼけて名前を順次呼んでいたが、意識が覚醒して今の状況を思い出した。俺は一人ぼっちなのだと。


 段々と俺は泣けてきた。寂しいのもあるが、皆が無事か心配だからだ。


 少しして落ち着くと、1人の寂しい朝食を食べる。テーブルにはいつも誰かが一緒にいて、和気藹々と食べていた。1人での食事って単身赴任中は普段の事だったが、この世界に来てからは南の魔の森に放逐された直後のみだと思い出した。寂しくて何でこんな目に遭わなきゃいけないんだとついつい唸っていた。しかし、今日は珍しくおっさんだった頃の記憶がはっきりとしていた。


 俺はとっとと終わらせようと気合を入れてダンジョンに繰り出す。


 11階層は石畳で壁もタイルチックな感じだ。

 早足で掛けていく。分岐の度に強く魔力を込めたサラマンダーを送り出して道を綺麗にし、魔石を収納に入れながら進む。面倒くさいので魔石を放置するか?と思ったが、その方が後々面倒になると言われているので、手間だが回収をしていく。


 20階層まで同じような作りで、魔物も何がいたかよく分からない。サラマンダー先生が活躍しているので、俺は魔石やドロップアイテムを拾うだけの簡単なお仕事しかしていない。


近頃は段々とサラマンダーに複雑な命令を出せるようになって来ているのだ。


 何故か下着ばかりがドロップする。しかも女性用のセクシーなのばかりで絶句するのだ。何故か無駄に特殊な力が付与されていたり、防御力がやたらと高い。


 20階層のボスもよく分からない。熱湯を注ぎ待つ事3分!とは言わないが、コンボ技でさくっと倒せられている。だから何が出たか分からないのだ。


 軽目の昼食を腹に押し込め21階層へ。

 何も無い空間だ。先に出口が見えるがたたひたすら広い空間だ。俺は飛んで一気に出口へ行く。そう言えば息をするのと同じ感覚で飛べるのだが、オリヴィアには無理だったが、ハイエンジェルのエンペラーは種族特有の種族固有スキルで魔力を糧に飛べるのだと言っていた。


 だから10km位先にあった階段へも1分程で行けた。1人だとどうとでもなるのだ。眼下には大量の魔物がいたが無視だ。5963。


 そういった感じで距離が段々増えているが、29階層は100kmも有り驚いた。おかしいなと。ダンジョンがなぜこんなに広い!?と。


 30階層のボス部屋もいつもの見慣れた部屋で、コンボであっさり行ける。ドロップは女性用の衣で、淑女の嗜みというよく分からないが下着の上に着用するインナーで、鎧の下に着ると良さそうだと思った。防御力と熱耐性が高い。


 31階層は洞窟だ。まるで迷宮のような複雑な作りで、早々に道に迷ったが、サラマンダー数体に階段を探せと送り出し、最短ルートで突き進む。

 39階層まで同じ感じだが、最短ルートが分かればどうという事は無い。40階層でボスを倒し、やはり淑女の嗜みを数着ドロップしていた。


 ふと時間を確認するともう夜中に差し掛かる時間で、かなり無理をしていた。流石にきついので今日は休む事としたのだが、1人だとつい無理をしてしまうなと感じている。


 俺は弱気になっていて、ついつい寂しいと呻き、涙を流しながら疲れもあり早々に寝ていった。

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