第133話 ギルドマスターとアレイ殿

 驚いた事にギルドマスターを見るなり、タオが抱きついた!というよりもお互いに抱き合っていた。女性のギルドマスターだった。


 愛人か?と思ったら妹だった。抱き付いたのでは無く単なる挨拶のハグだ。

 メイドからこっそり教えられたのだが、父親の事は嘘だとか。本当は妹にみっともない姿を見られたくなかったかららしい。20台後半だろうか?バリバリのキャリアウーマンと言うか、ボディコンチックな服を着ており、その大きな双丘が今にもこぼれ落ちそうだった。美人さんである。色気が強く迫られたらころっと逝きそうだ。スカートが極端に短い事が気になった。


 生き残った奴隷にした盗賊(既に解放してロープで縛っている)について聞くと、犯罪奴隷として引き取るという。

 それと死んだというか、倒した奴等のカードを渡した。今日は預けるだけで、査定に時間が掛かりそうだったのでお金は明日受け取る事となった。また、俺のカードを見せたら大層驚いていた。

 そう、俺がS級だからだ。


 セチアの冒険者登録と、初心者講習の申込みを受け付けで済ませようとしたが、ギルドマスターが1人の受付嬢を強引に呼んで手続きをした。おどおどした14か15歳位になる見習いか新人かと思われた。


 ギルドを後にしてタオ達の屋敷に向かう。

 貴族街、その中でも一等地に有る一際大きな屋敷がタオ達の住まいだ。


 屋敷に着くと先ずは応接室に通され、タオに待つように言われた。

 10分位するとタオが父親と思われるご老体を連れてきた。年齢は60歳位だろうか、細身で白髪が混じった爺様だ。だが、年寄りというよりも強健な壮年と言う感じで活力に溢れている。

 応接室に入るやいなや気さくに挨拶をしてきた。


「これはこれはようこそ勇者殿。此度は愚息をお救い頂いたとかでお礼の申しようが有りませぬ。おっとこれは失礼した。私は当家の主、アレイ・アールグレイと申す。以後お見知りおきを」


 右手を差し出してくるので握手に応じ、こちらも挨拶を返す。


「これはご丁寧に。S級冒険者をしておりますランスロットと申します。以後お見知りおきを。それよりどうして私が勇者だとお分かりになったのでしょうか?」


「はははは!やはり勇者殿でしたか。なに、アイテムボックス持ちと、その年でS級となると勇者殿の可能性が高いと思いましてな」


「あいやー!カマを掛けられてしまいましたか。一本取られてしまったようですね」


「気を付けられよ。私のような人畜無害なジジィばかりだとは限りませぬからな」


「忠告痛み入ります。それよりも座りませんか?」


「おおそうじゃった!これは失礼したの。まあお掛け下され。何でも剣技を覚えたいとか?」


「はい。実は私はまだこの世界に召喚されてから2ヶ月も経っておりません。今まではギフトやスキルに依存して戦っておりまして、剣技が圧倒的に足りなくそれを痛感しています。タオ殿の申すには何でも高名な指南役の方をお抱えだそうで。ぜひ剣の使い方を覚えたく思っております」


「そういう事であれば手配致しましょう。息子の命の恩人の頼みですからな。暫くの間当家の客人としてお迎え致しますので好きなだけご滞在下され」


「これは有難い申し出ですね。宜しくお願いします。お言葉に甘えて1ヶ月位お願いしたいです。実は私はボレロ王国を目指しております」


「良いのか?目的地を伝えてしまって」


「アレイ殿にお世話になるのです。隠していても仕方がありませんし、別段知られてもどうこうはないと思います。実は記憶を失くしておりまして、日記に書いてあった内容ですと、ボレロ王国に妻達、つまり私のハーレム達がいる筈なのです。しかし今慌てて向かえば、力不足により、道半ばにして力尽きてしまう恐れが大きいのです。その為、今はまだ向かうに向かえず己を鍛える必要が有ります。バルバロッサ王国で戦闘があり、どうやら私だけ強制的にこの国に飛ばされたようなのです」


「うむ。そうじゃな。それが宜しかろう。所でお連れの方には既に刻印を刻まれたのですかな?」


「彼女とはまだ知り合って間もなくというか、先日村の窮地を救ったのですが、助けられた事に対して村からの対価として献上された奴隷なのです。今は解放奴隷なのですが、まだ致してはおりませんが、いずれ心から愛すればと考えております」


「お主、ひょっとして勇者の刻印の事を知らぬのではないか?知っておれば連れの女性の為に既に刻んでおると思うのだが?出来れば我が娘達にも刻んで欲しい位じゃて。出来たら今晩にでも彼女に刻んでやりなさい。もう20歳を超えておるのであろう?彼女は既にお主を受け入れておるのであろう?そうであれば早い方が良い」


「えっ?」


 思わず情けなく呟いた。意味が分からなかった。日記に書かれている内容からも念話が可能になるのと、居場所が分かる、刻印持ち同士でも念話が可能と理解していた。セチアは真っ赤になり俯いているが頷いていた。


「念話が可能になるのと、居場所が分かる恩恵を勇者の魔力を取り入れる事により可能と理解しておりましたが?」


「これは驚いた。知らぬのか。まあ何かの縁じゃ!儂が教えてやろうかのう。ほほほほ」


 俺の知らない刻印について、爺様より講釈をして貰う事になったのであった。

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