第134話 刻印の事実

 夕方少し前の時間になっていたが、晩飯の時間迄まだ少しあるからと、先にお風呂をとなった。ただ、何故か男3人でむさい風呂タイムになってしまった。


 豪華な浴室で、風呂場自体は20畳位で、湯船は2ヶ所ある。小さいのは普通の形の湯船だ。小さいと言っても1坪位ある。大きいのは、ハートの形で6坪位だ。


 男3人で背中を洗い合い、友情というか、知己を深める。所謂裸の付き合いというやつだ。

 体を洗っていると、裸のメイド達が体を洗う為に来て唖然として一瞬固まったが、若くて綺麗なメイドに体が反応してしまいアレイ殿がぼやいた。


「デカイな。我が息子よ、我らの負けのようだ。無念だ」


「ええ父上、悔しいですが、我らの負けですな。悔しいです!」


 意味不明な会話をしているが、俺を立たせ、2人も間を開けて立っていた。


 メイド達は各人に2人ずつ来ており、失礼しますと1言言うと体を洗い出した。

 前もこするのでやばかった。

 だが2人を見ると、反応しておらず平然と洗われており、お湯を掛けてもらい湯船に浸かった。当たり前の事として、平然としているので驚いてしまった。


「客人よ、貴族の風呂は初めてかな?」


「えっ、はい、初めてで驚きました。洗われるのは当たり前なのですか?」


「そうだ当たり前じゃないか。客人が居るから今日は控え目だがな。がははは」


 豪快に笑ったが、控え目ではないとどうなるのかは聞けなかった。


 風呂を出るともう諦めるしかないのだが、体を隅々まで拭かれ、溜息しか出なかった。

 刺激の強い風呂だったな。


 風呂を出たが、晩飯には少し早いので、リビングで晩酌の相手をしながら刻印の儀式について講釈をして貰った。


 先ずは刻印を刻む事のメリットについてだ。

 刻印主の居場所が分かるようになる。

 刻印主は刻印を刻んだ相手の位置が分かる。距離に応じて離れれば離れる程正確な場所が判り難くくなる。

 奴隷契約者と刻印の者では精度が全く違う。

 念話が可能となる。

 同じ刻印主の場合、刻印を刻まれた者同士はソウルメイトとなり、ソウルメイト同士で念話が可能となる。


 そして勇者による刻印が別格でメリットが破格だ。

 ここからが勇者の場合のプラスポイントとなる。

 伝説となっている勇者の記録にあるという。


 勇者により生娘が刻印を刻まれた場合、相手は体の年齢が固定される。これは刻印主である勇者が死ぬまで継続される。歳を少なくとも外観年齢は刻印を刻まれた時のまま。但し、自らの意思で他の男を受け入れた場合は刻印が解除される。それ以外は死ぬまで自らの意思では解除できず、犯されたり脅されたり強要された場合は解除の対象とはならない。心が浮気したかどうかで決まる。勇者が愛想を尽かした場合この恩恵が無くなってしまう。つまり恩恵を受け続けたいのであれば、刻印主の勇者に愛され続ける必要が有るのだ。


 勇者が新たな刻印を刻む度に寿命が1年延びる。

 但し生娘の場合の効果。

 生娘ではない場合は、年齢は固定されず、老化のペースが本来の半分になる。刻印主の寿命が伸びるのは半年だ。

 生娘で刻印を刻まれた者の場合解除された場合は老化のペースが半分になる。


 ちなみに勇者ではない刻印の刻み方は、単に致すだけだ。


 勇者による刻印の場合は心身共に一度1つになる必要が有る。行為の開始に遡り4時間の間、体の一部を接触し続けなければならない。離れていられるのは累計1分と厳しい。

 接触していると勇者から刻印者に魔力が送られ馴染む時間が4時間だ。


 勇者の刻印の場合は勇者の魔力を取り入れて、体に同化する事により恩恵を受けられる。


 お互い好いている必要がある。一方的に性欲の捌け口にするのは駄目なのだ。つまり心が通っていないと魔力が流れず、受け入れられない。また行為を始めて終わった後からが大変なのだ。


 トイレも一緒だからだ。しかも刻印を刻むチャレンジは一度のみ。

 なので志朗は手を紐で結んでから寝ていた。心がお互いを受け入れられていないと刻印は刻まれないので敷居が高い。つまり心を繋げる必要が有るからだ。心を通わせる事の大事さをしつこく言われた。


 何故か志郎は惚れやすい為からか、責任感からか一度肌を重ねた相手の事を心の底から愛してしまう。本来初対面で、しかも購入奴隷に対して勇者の刻印を刻められる事が有り得ない事だった。

 ステータスにランスロット印と有るのは勇者による刻印が刻まれた証拠で、お互い心から好いている証拠でもある。


 既に20人程と刻印を刻んだというと絶句されたのと、羨ましがられた。


 ちなみに膜再生は志朗の中では生娘扱いだ。勇者が相手をそうだと思う必要があり、生娘じゃなくても騙せられたら生娘扱いになる。


 勇者側のメリットは寿命が延びる(老化するまでの時間が1年延びる)のと、刻印を刻んだ相手からの愛情を受けられる事で、ハーレムを構築する以外は殆ど無い。


 寿命が延びた影響は恐ろしい物で、何かしらの理由で刻印を刻んだ相手との刻印が解除されると、恩恵を受けた分の寿命が伸びた事がキャンセルされる。その為守り続ける必要が有る。


 また人数に上限があり、何故か不明だが本妻と正妻には上限が判る。条件をクリアすると上限が増えるらしいが、条件については以前の勇者は判らなかったらしい。


 それと真の勇者1人にのみ、寿命が延びる恩恵が与えられる。年齢の固定は召喚者であれば可能だ。死ぬまで若いままでいられる。召還時の判定で最強の者が対象で、今は志郎で有る。本来違ったのだが、エラーがそうさせたのだ。

 彷徨える異世界人の称号を持っており、これが条件だと伝承にあったから志郎が対象だと判ったのだ。

 但し、肉体の強度が劇的に増すなどは無い。


 斬られれば怪我もする。


 因みにセチアは俺の隣で俺の腕を終始軽く掴み、大人しく聞いていた。妙にしおらしく愛おしくなってきた。


 そうこうしていると夕食の準備が整ったとの事で、食堂に移動して食べ始めた。さすがに大公家の食事である。見た事の無い凝った料理に絶句してしまった。


 ただ、俺は場違いな感じで食器をガチャガチャとさせてしまい五月蠅かったが、セチアは俺とは違い上品にと食べていたのであった。

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