第86話 ダンジョン3日目-3

 セリカは情緒不安定だった。


「ごめんね志郎さん。私こうやって時々正気に戻るの。なんかね、もやもやした雲の中を掻き分けて進んでいる感覚で、何を言ったのかとかを後から思いだすの。さっきも昨夜も私ってあり得ない位に恥ずかしい事を言っているけど、本心じゃないですからね。あと、私にエッチな事をせずにいてくれて有難うね。意識がない時にエッチな事をしてと要望していたんだよね?本当に有難うございます。やっぱり初めてはちゃんと愛する人とロマンチックな所で迎えたいの。あの幻影のように」


 今は本当の彼女が出て来ているようだ。


「うん。分かっているよ。もしも俺が君を抱くとしたら、君が正気に戻り、お互い愛していると確信した時にしかしないから安心してね。正気じゃない時の事は気にしないから。多分薬を盛られていて、その影響だと思うから。俺はセリカの事が好きだから、ちゃんと元に戻ったらさ、ちゃんと一人の女性として向き合いたいんだ。出来れば俺の彼女になって欲しいんだ」


 そう言うと泣いて頷いた。

 俺はハンカチでそっと涙を拭いた。


「そうそう、その指輪は時折魔力を込めないと元の姿に戻るからね。魔力を込めた当人の姿しか変えられないからね。今は20代中頃の金髪で、おっとりとした可愛い系の美人さんの見た目だからね」


 指輪について説明し、先を進み出した。


 出てくるのは獣型の魔物が殆どで、熊も出て来た。オオカミ型がうざく、やたらと数が多い。強くは無いのだが、その数にげんなりする。

 一度に20匹位が散発的に襲ってくるのだ。ずっと罠が無かったのだが、フロアボスの手前の直線の途中に天井が落下するデストラップが有ったが、事前に発見出来た為、俺が解除して進んだ。


 フロアボスはケンタウロスだ。いきなり矢を数本同時に放ってきた。


 俺は剣で払い退けたが、リギアとエリシスの腕と脚にそれぞれ刺さってしまった。

 俺は剣で立ち向かい、30合程打ち合い、ついに奴の剣が折れた。右腕を切り落としたが、俺は前脚で蹴られてしまい、20m位床を転げて行った。態勢を整えようと立ち上がり掛けている所を蹄で踏みつけようとするので、俺は必死に躱した。そして躱しきれず、踏みつけられると思った瞬間に何とか転移し、斜め後ろの位置から袈裟懸けに斬り付けた。


 少し浅かったが、動きが止まったので返す刀で横に薙ぎ、上半身を切り落として勝利した。


「流星弓術を取得しました」


 とアナウンスが聞こえ、流星の弓をドロップしていった。唯一の弓使いのナンシーに渡した。ケンタウロスの魔石で強化すると、毒を付与する事が出来た。それと80%威力アップと出た。矢は魔力で作れるので効果は大きい。

 セリカが俺の治療をしてくれた。2人共セリカの手を握って感謝をし、セリカにハグをしてくれていた。


「セリカ有難う。何も言っていないのに自主的に動いてくれたから助かったよ」


 頷いて照れていた。

 そして19階層に降りていく。

 壁が緑色になったが、正直な所、気持ち悪い。


 出てくるのは、オーガだ。

 単独~3体までで散発的に出てくる。1体は皆に倒させて、1体になるまでは俺が転移で首を刎ねていく。


 そしてフロアボスはオーガナイト2体だ。

 1体は剣を2本、もう一体は槍を持っている。

 剣を持っているのには俺が斬り付ける。一方は盾で防ぎ、押し返した。もう一方の剣は刀で弾き飛ばした。

 勢いのまま横薙にして、左腕と胴体を半ばまで斬る。

 そこまで斬るともう動けない。首を刎ねて終わった。


 もう一方はクレアがデスサイズで斬り合い、フレデリカが槍で援護している。

 やがてフレデリカが左脚に槍を突き付け、膝を付いた所にクレアのデスサイズが振られて見事に首を刎ねた。


 ドロップがミスリルの槍だ。早速オーガナイトの魔石で強化すると雷鳴の槍+8になった  

 効果は魔力を込めておけば当たった時に穂先から雷を放つというとんでもない仕様だ。80%の硬さと強さの補正付きだ。

 槍は2m程の長さで、早速フレデリカに渡した。


 いよいよ20階に突入する。

 普通の石の色に戻った。

 100m位先にボス部屋が見えた。

 小休止してボスに挑む事にした。

 中に入るとサッカーの試合が出来そうな大きさの部屋だった。


 ボスはオーガだ

 それもジェネラル。

 強敵で有る。

 トリシアとレフトアイが連携して斬り付けるが、2人共蹴られ、壁にぶつかり悶絶していた。


 次にフレデリカとクレアの中距離コンビが挑む。俺はアイスアローで援護をし、シェリーとナンシーが接近戦を挑む。浅い傷を負わせるのが精一杯で、ナンシーが、次いでシェリーが吹き飛ばされて気絶する。

 俺はもう我慢できず、アイスアローを30発程打ち込み、一発が目を貫いた。槍とデスサイズが当たり出し、片足と片手を切り落とした。

 そして俺がトドメと思うと、残った腕で俺に剣を投げてきた。避けようとして躊躇した。避けたら仲間に当たると気が付き、剣で払おうとしたが失敗し、腹に剣が刺さった。だが、すかさず転移して首を刎ねた。


「欠損修復を強奪しました」


 と出た。素晴らしいスキルだ。

 俺は剣を抜いたが、あまりの痛みで、気絶してしまったのだった。

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