第85話 ダンジョン3日目-2

 17階層に進んだのだが、やはり変な色の壁である。これはどこまで続くのやら。そしてこの階層の壁は黄色だ。はっきり言って目が痛いぞ!


 獣型の魔物が5-10匹位の群れ単位で散発的に出てくる。

 そんな中、またもや異常が発生した。トラップだ!

 床を踏んだらカチッと音がしたが、壁から突如矢が飛んで来た。だが、幸い反応する事が出来て剣で切り払ったから何ともなかった。


 ついにトラップの登場だ。

 その為、俺が先頭を行く事になった。

 トラップに対処出来るスキル持ちが俺しかいないからだ。


 都度解除していったが、発見したトラップは床が抜けるのとか、音が鳴り魔物を呼び寄せるのとかだった。

 お陰でこれまでの倍の時間が掛かってしまう。

 ナンシーにエリクサーを預けた。石化も回復出来るので、もしも俺がやられた時用にと。


 先に進んでいると、不意にセリカが何かを触った。


 カチッと音がした。トラップのスイッチと思われるのを触ったな。


 トラップだと思ったが、壁が開き、開いた途端にセリカが駆け込んで行った。慌てて俺は追い掛けたが、俺が入った直後に壁が閉まった。

 おまけにセリカは怪しさ満載の宝箱をあっと言う間に開けてしまった。

 中には変化の指輪が入っていたが、セリカはそれをなんの疑いもなく填めた。

 するとセリカは優しいおっとりとした20代中頃の金髪美女に変わっていた。


 そして別の壁が開き、50体以上の魔物が出てきた。


 「やばいやばい!セリカを守れるかな?」


 呟きつつ、慌てて部屋の隅にセリカをお姫様抱っこで連れていき、とにもかくにもアイスアローを撃ち込みまくった。

 そうすると生き残ったのはオーガナイトとミノタウロスだ。

 俺とセリカの間に強目にアイスウォールを出して遮蔽し、ミノタウロスの後ろに転移して首を刎ねると剣豪を取得した。

 その隙にオーガナイトに背後から斬り付けられ、俺は吹き飛んだ。

 一瞬意識が飛ぶ。オーガナイトが突っ込んできて数合斬り合うが意識が朦朧としており、追い込まれていった。そしてついに俺の左腕が切り落とされた。


 だが、オーガナイトが勢い余ってふらついた隙に背後に転移し、何とか首を刎ねた。


「精神回復を取得しました」


 とアナウンスが有ったが、痛みで覚えていなかった。待ち焦がれたスキルを取得した事を知るのはまだ先の事だ。


「ガアアアア」


 俺は痛みから叫んだ。

 すると壁が開き、皆が入って来た。

 フレデリカが絶叫しつつ俺の左腕を拾ってから持って来た。皆も各々口を押さえたり、悲鳴を上げたりしている。

 セリカは何故か俺の腕の事には気が付かない。


「やっぱり志郎って強いよね!流石は私の王子様。素敵だよ」


 のほほんとしている。皆が俺に駆け寄ってくるが、クレアだけはセリカに付いていてくれた。最初のお願いを律儀に守ってくれているのだ。


 俺は皆に怒鳴った。


「腕を切断面に当ててくれ。俺の体を暴れても大丈夫なように押さえ付けてくれ。叫んでもや、止めるな。やめろと言っても止めるな。何とかくっつけるから。さあ頼む!やってくれ!」


 そう言うと、みんなで体をホールドし、腕を切断面に当ててきた。


「がああっがああぐわああくそがああ痛ええええ」


 思わず絶叫した。


「ヒール」


 ふと正気に戻り、何とかヒールを唱えた。程なくして痛みが引き、腕に感覚が戻ってきた。


「もう大丈夫だ!ありがとう」


 そう言うと、解放して貰った。


「もう大丈夫だから決してセリカを責めないでやって欲しい。また、怨まないであげて欲しい。病気なんだ。どうか頼むよ」


 念話で伝えると、皆頷いており、シェリーがブラックスワンの面々に説明してくれた。

 誰かが俺の血まみれの格好を見て、クリーンを掛けてくれた。勿論くっつけた腕もだ。


 少し血を流し過ぎたようだ。

 珍しくフレデリカが泣きながら抱き付いてきた。


「心配掛けたね。もう大丈夫だから」


 頭を撫でてやると落ち着いたようだ。誰かが俺の左手を握ったり、擦ってくれた。


「左手の感覚は大丈夫だよ。ありがとう。それよりここを出よう」


 部屋の外に出ると、フロアボスの所に急いで向かった。


 また、皆にセリカの持っているアイテムが見た目を変える物と伝え、見た目を気にしないようにと説明をした。


 フロアボスとして、黒いユニコーンのような魔物が出たが、ここは高さが大してなく、まともに跳べない為、一方的に倒した。脚を切り落とし、トドメは俺が行った。

 スキルは飛翔だ。一回につ1分間飛翔が可能。クールタイムは2分だ。

 微妙だが空を跳べるのは大きい。


 18階に行き、昼食タイムにした。

 壁が青色になったが、やはり原色で目が痛い。


 階段の所は基本的に魔物が涌かない。なのでその先の通路を警戒さえすれば比較的安全なのだ。


 一応俺の気配察知で何とかなる。

 ここでもセリカにお手伝いをお願いし、昼食タイムを過ごした。

 セリカは皆に感謝され、ご機嫌だった。頭を撫でると俺にすり寄ってきて、まるで猫のような感じがしてきた。昨日よりは格段にましになっていた。


 1時間ちょっと休み、俺も回復したので先を進む事にした。

 セリカは相変わらず俺にべったりだが、段々落ち着いて来ているように見えた。

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