第66話 新メンバー加入後の初依頼

 day14


 皆が朝早く依頼に行く準備をしていた。馬車に2頭の馬を繋ぎ、出発準備が出来次第ギルドに来るように伝えている。


 夜ナンシーから連絡が入り、急遽馬車で半日程の位置にある隣町のギルドへ荷物を届けて欲しいという依頼だ。

 

 ナンシーが帰りにギルドへ顔を出したのだが、緊急依頼を誰か受けてくれないかと探しており、馬車を持っている我々に行けないか?と聞いて欲しいと言われたのが事の発端だ。 


 報酬は15万G。護衛を考えると、とても割が合わないが、帰りにギルドへ持って帰る依頼もある筈なので、今回はギルドへの貢献度を目的とし、採算度外視である。往き道で4人のランクをEに、帰ってきたらDランクにしてくれるので受ける決断をした。受けた一番の理由はナンシーが困っているからだ。


 早々に出発すれば十分夕方には戻れるので、新メンバーの初依頼とするが、俺とシェリーも同行する事と決めたので、夜のうちに人数分プラスαで弁当を作って貰う事にしていた。


 まずは先行して俺とグループリーダーのフレデリカがナンシーの所へ行き、依頼受諾の手続きと、依頼書と荷物を貰った。

 勿論荷物は俺の収納に入れたが、ギルドの外へ出たら、丁度4人が乗った馬車が着いた所で、4人はちゃんと装備を身に着けていた。


 隣町へ急ぎ向かう旨を告げた。

 俺の武装は収納に入れており、荷物は少ない。軽装鎧は流石に装着しており、ダガーだけは収納に入れずに身に着けてはいる。


 馬車の客室も御者席も柔らかいクッションをふんだんに使っており、痛みはかなり軽減するようになっている。といっても、自動車のようにオイルダンパー等は無いし、板バネすらない。振動がダイレクトに中に伝わるので、クッション材で軽減するしかないのだ。


 早速シータとフレデリカの2人が御者席に座り進んでいく。途中で休憩を行い、御者も交代で行う。交代の御者はエリシスとクレアだ。4人で決めたようだが、俺も御者をしようというと、全員で却下された。駄目です!とハモられた。


 そして俺はというと、馬車の中で絶賛腐り中だ。そうくずになっていたのだ。


 クレアが俺の胸にしなだれかかり、シェリーが左腕、そしてエリシスを右腕で抱きしめている。

 クレアが俺に抱き付く感じで、2人は俺の横に座っている。

 揺れが刺激を産み、俺はゲスパワー炸裂中で有る。皆から俺といちゃつきたいと求められ、調子に乗ってしまったのである。

 たまにモミモミって手のひらの運動をしている。何をもみもみしているのかって?あれですあれ!ゴニョゴニョ。


 そんな俺だが、偶にだが真面目になってスキル等を確認していったが、隷属契約が2に上がっている。

 追加能力でパーティー登録に縛られず、半径100mにいる隷属メンバーで経験値を人数割りできる。とあるので、8人以上の大御所となってもパワーレベリングに問題はない。

 獲得経験値補正もこのスキルの影響で距離に関係なく、俺の隷属者であれば恩恵を受けられる。つまり、隣町にいる時に別行動のナンシーが魔物を倒した場合、ナンシーが得られる経験値は5倍と言う事だ。便利だ。但し、距離が離れているから、俺と経験値は人数割りはされない。逆に今回は、俺達が戦闘をしてもナンシーに経験値が入る事は無い。


 俺が腐っている以外特にイベントは発生せず、途中で馬を休ませる為の休憩を取り、馬の餌を収納から出したりし、生活魔法で水を与えた。おしっこなどは俺が同行して穴を堀り、そこで用を足してから埋め戻し、クリーンを掛ける感じだ。冒険者としての時は皆恥ずかしがらない。シェリーに散々教えられたようだ。それと初心者講習でも言われる事だ。


 また、変化は途中で御者がシェリーとエリシスに交代した位だ。


 早くも昼前に町に着いた。普通は収納が無いので、馬の餌やら調理器具や食料等で結構重くなり、馬の速度は上がらない。

 馬の世話班、食料の買い出し班、ギルドへの報告班とメンバーは各班2人づつに分かれて行動した。

 俺とフレデリカがギルドへ向かう。


 まだ11時前だった。ギルドの緊急依頼の札を持っているので、受付で並ばずにそのまま応接室に通され、荷物の引渡し、受領書への受け取りサイン等と達成手続きを行った。4人のギルドカードをフレデリカが提出してランクをDにあげて貰った。俺はシェリーのとナンシーのも出してパーティーメンバーの分として貢献を付けて貰った。ギルドカードは本人が直接パーティ員の体に押し込めば2日は消えずに済むのだ。


 提出した手紙に王都のギルドマスターの署名入りで急ぎの依頼の為、メンバーが補給と馬の世話で全員がギルドには来ないので、代表者が当人を含めリストの7名のギルドカードを持って行くので対応するようにと記載が有ったそうだ。その為、問題なく持ち帰り分の依頼も受注できた。


 皆が集合し、昼を店で食べてから行こうかと話したが、クレアが早く出発する事を薦めるので早々に出発した。クレアの予知能力は何となくだったり、間違いようのない憑依者によるお告げが有る場合等様々だが、色々あってその能力には俺も一目を置いている。その為、特に理由が無い場合クレアの言う事を採用している。


 なのでこの後に馬を休ませる時の休憩時間を利用し、弁当を急ぎ食べる事にした。本当は味わいたかったが、クレアの様子からは最低限の休憩に、それも馬を休ませる事にのみする必要を感じた。


 御者席はクレアとフレデリカ。

 クレアが言うには、胸騒ぎがすると言うので俺は警戒をし、3人にも警戒をさせていた。だから俺も武器を出している。

 俺の気配察知は50mとそこそこ有る。

 町から30分、普通の馬車ならば50分位の距離で異変を感じた。

 前方で馬車が襲われているようだ。急ぎそちらに馬車を向かわせるが、襲っている連中もこちらに気付いたようだ。どうやら女2人が御者をしていて、おいしい獲物だと判断したようで、今襲っている馬車を放置してこちらに向かってくるのが見えた。又はもう決着を見たかだ。それと、襲っているのはどう見ても盗賊だ。


 「1人も逃すなよ。出来れば何人かは生け捕りにしたいが、君達の命が優先だから難しければ殺せ!」


 そう伝えてた。

 どうやら1台の馬車に対して20人位で襲っていたようだ。馬車の周りには護衛と思われる者が倒れていた。そしてでっぷりとした商人風の奴が馬車に張り付けにされて事切れていた。人数差からひとたまりもなかったのだろう。


 シェリーを馬車の護衛に残し、5人で向かう。

 俺は武器を使わず腹パンで5人を次々に気絶させる。中央に飛び込んで行った4人が剣で斬り合うが、ステータスの違いからかあっと言う間に制圧して行き、彼女達は8人程殺していた。4人は躊躇なかった。

 

 俺はクレアを伴い馬車の中を確認しにいく。1人の女が馬車の中で縛られていた。

 

 結局、襲われた側は、その縛られている女を除き、全員死んでいたのであった。


 

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